バンドのなかにある各楽器がそれぞれの音符の位置をややずらすことでメロディーのニュアンスを表現することはジャズという音楽の表現的な表現方法です。しかしニュアンスをわかりやすくつけようとして8分音符の表拍位置を遅らせると、しばしばそれに釣られて他のパートのの表拍位置が遅れてしまい、結果としてテンポが遅くなって、眠たい、けだるい、軽快さのない演奏になってしまうことがあります。
これを防ぐ為に表拍の位置を一切移動しないという習慣がついてしまうことがあります ─── 実はこれが、今回私が練習している時に私が無意識のうちにやっていたと気付いたことでした。
リズムが正確なことは大切ですが、かといって表拍の位置が全くかわらない演奏にもかなり強い違和感があるものです。
リード奏者が表拍の位置を変えると、リズムセクション全員がそれに釣られて表拍の位置をくっつけてしまう ─── 何故こういうことが起こるのでしょうか。それは裏拍基準のリズムの取り方(リズム認識)が出来ていないことが原因して起こるということに私は気付きました。
今回はジャズの演奏者が一般的にどのようにリズムを認識し、どのように表拍の位置を決めているかのその手順について、具体的な例を示しながら説明してみたいと思います。
表拍の位置は移動する
表拍の位置が遅くなれば感情がこもった印象や、リラックスしてゆったりした印象を表現することができます。また表拍の位置が早くなるとスピード感や新鮮さを表現することができます。この表拍の位置がジャズの面白さの肝となります。
『表拍の位置を変えてしまったら、テンポが一定で演奏することが難しくなってしまうのではないか…。』そう思われるかたも多いかも知れません。表拍を聞いてリズムを合わせているのに、それが速くなってしまったり遅くなってしまったりしたら、一体どうやって演奏すればいいのでしょうか。
『ジャズミュージシャンのリズム感は理解できない!』 ───
ジャズミュージシャンは魔法使いではありません!
何故ジャズミュージシャンが表拍の位置を変えてもテンポを一定に保つことが出来るのかというと、単にリズムを表拍位置を聞いてあわせずに、裏拍の位置を聞いて音を合わせているからです。
表拍の位置を変えるコツ
各楽器のスイング量がバンドアンサンブル内で異なる場合、音符を合わせる位置は裏拍に固定するのが基本です。バンドアンサンブル内全員の裏拍位置はそろっていますが、表拍の位置はメンバーによって前後します。こうすることによってニュアンスのあるグルーヴが実現します。
スピード感のあるベースの表拍の位置
ジャズ好きが集まって談義をすると◯◯のベースは速い、◯◯のベースは遅い…というベース打点の速さが話題になります。これを具体的に考えると次の様なことがいえるでしょう。
いわゆる早いベースは
⇒ 結果として表拍の打点位置がその他の楽器の表拍の打点位置より前になります。
良く歌うメロディーの表拍位置
いわゆるニュアンスのある音符とは
- 裏拍位置が固定
- スイング量がその他の楽器より小さい
⇒ 表拍位置が他楽器より後になる。
オンビートスリップストリームとは
『表拍の位置が早い/遅い』とは、飽くまでも裏拍固定のスイング量の多さ少なさがその本質にあります。よって『ベースの速さ』を求めるあまり、表拍が裏拍を追い越してしまうと、スイング感はなくなってしまいます。
このことを私は『オンビート(表拍) スリップストリーム現象』と呼んでいます。詳しくは
オンビート・スリップストリームについて ───
縦乗りを克服しようシリーズその39
を参照してください。
裏拍を聞いてリズムを合わせる練習
私は裏拍を聞いてリズムを合わせる練習として『8分音符裏拍メトロノーム練習』を推奨しています。個人練習・バンド練習をするとき常にメトロノームを鳴らし、しかもそのメトロノーム位置を演奏する全ての8分音符裏拍に合わせて演奏します。
これだけを聞くと絶対にできない気がするものです。しかし訓練することによって、ジャズで演奏されるリズムは全てラテン・スイング・バラード等々を含み全て例外なくこの8分音符裏拍メトロノームと共に自然に演奏することができます。
とても難しくこれを考案した私自身も3年以上練習しました。とても厳しい訓練ですが8分音符裏拍メトロノームは縦乗りを克服する究極の練習方法と断言しても良いほどにとても効果的な練習方法です。
一般的なスイング量はどれくらい?
バンドアンサンブルのなかでベースのスイング量が最も多い状態が自然に聞こえるようです。そして(スタイルにもよりますが)ドラムのライドシンバルはそれよりもスイング量が少ない方が自然に聞こえる傾向にあります。そして(スタイルにもよるが)リード楽器のスイング量がバンドアンサンブル中で最も少ないと自然な感じに聞こえるようです。
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更新記録:
『8分音符オンビートの理想的な位置について』から『裏拍基準のリズムの取り方について』にタイトルを変更しました。