これは僕のバンド・スキゾスキップスのリハの模様です。
この演奏でも充分聴けるかも知れませんが … 僕としては、どうしてもやはりリズムのオンビートが強いことが気になってしまいます。本来は、もっと頑張って練習して上手になって良い手本を見せなければいけない場面ですが、逆にこの演奏はオンビートが強くなる理由がとてもはっきりと見ることができるとても良い例なので、敢えて御紹介してみたいと思います。
メトロノームを鳴らしながら演奏しよう
演奏の背後でメトロノームが鳴っているのがわかると思います。この演奏ではメトロノームを2拍裏と4拍裏に合わせて演奏しています。
何故オンビートが強くなるのか
演奏中、この2拍裏と4拍裏が徐々にずれて1拍表3拍表にすりかわってしまうことがあります。これが『オンビート・スリップストリーム』です。実際にこの演奏中も何度か起こっています。『オンビート・スリップストリーム』が起こっていることは、メトロノームを鳴らした状態だととてもわかりやすく見えます。メトロノームを鳴らさないとなかなか意識することは難しいですが、実はメトロノームを鳴らさなくてもこの現象がほぼ常時起こっています。
これは日本人独特な聴き間違えです。『オンビート・スリップストリーム』は日本人以外の人たちの演奏では、しばしば発生しません。日本人にしか発生しない…これが『オンビート・スリップストリーム』のとても重要な性質です。
日本人独特な聞き間違い
日本人の演奏が何故オンビートが強いのかというと、この様にオフビートを演奏していると徐々にずれてオンビートに変わってしまうからです。オフビートを演奏してもオンビートになってしまう… その性質のことを僕は 縦乗り と呼んでいます。
縦乗りを矯正するメソッド『8分裏メトロノーム』
スキゾスキップスでは定例練習として、この 縦乗り を矯正する為にメトロノームを8分裏拍で鳴らして練習しています。実際にオフビート中心で演奏する場合、リード奏者のメロディーを聞いてどちらの拍が裏拍なのかを判別しながら、その裏拍に合わせて演奏する必要があります。これは裏拍に合わせる以上に難しい訓練が必要なことです。裏拍を判別することと裏拍に合わせることを一挙に同時に行うと、難しすぎてほとんど習得することができません。そこで僕はバンド練習中、裏拍でメトロノームが鳴らすことにしました。もしメトロノーム音が裏拍で鳴っていればリード奏者の演奏する拍のどちらが裏拍なのかを判別することは容易です。そこで、裏拍に合わせること自体に慣れるまでの『補助輪』としてこのようにメトロノームを鳴らしてバンド練習を行っています。
『オンビート・スリップストリーム』についてはこの記事で詳しく説明しました。
音楽の魅力はオフビート
僕としてはとても不本意な演奏ですが・・・ もしこのバンドの演奏が魅力的に響いたとしたらそれは オフビートがあるからです。
もちろんオフビートだけが音楽ではありません。オフビートだけでは音楽になりません…。だけどどんな真心もオフビートがなかったら伝わらない。オフビートはまるで心を伝える言語です。
日本人の演奏のオンビートが強くなる理由は、日本社会の構造問題でもあります ─── 日本のジャズミュージシャン社会では、オフビートを中心にする演奏はとても風当たりが強く、オフビートを中心としたリズムは誰と演奏しても迷惑顔をされてしまいがちで、セッションハウスなどではしばしば露骨に怒られてしまうこともあり、立ち入り禁止を申し渡されることも稀ではありません。
そういう中で僕は、日本人のリズム感に対してのいくつかの仮説を立てて、それを実際に検証することで、とかく感情論に振り回されがちなリズムの問題を理論的に明らかにして、実際に演奏して検証することにより、その問題に対する具体的な解決策を考えてみました。
それが縦乗りを克服しようシリーズです。
そしてその理論を不屈の精神をもって実践しているバンド…それがスキゾスキップスです。
迷惑だと言われようが、お前の思い込みだと言われようが、独りよがりだと言われようが、勝手だと言われようが、わがままだと言われようが、空気が読めないと言われようが、人に合わせない社会不適応ミュージシャンと言われようが、そこまでグルーヴは重要でないと言われようが、それはお前の考え方だと言われようが、お前の考え方を押し付けるなと言われようが、自意識過剰だと言われようが、出入り禁止にすると脅迫されようが … スキゾスキップスは飽くまでも理論に基づいてオフビートを追求していきます。
そしてスキゾスキップスが『日本人でもオフビートが演奏できる』という勇気を与えるバンドになることを願って…。
スキゾスキップスについて
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