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2018年3月5日月曜日

頭合わせと尻合わせとは何か ─── 縦乗りを克服しようシリーズその2 (oka01-vfqkulfvbsjjjyqj)

まいばすけっと(イオン系の都市型小型食品スーパー)にいくといつもジャズがBGMとして流れています。このBGMは聞くだけで日本人の演奏と即座に判別がつくとてもわかりやすい縦乗りジャズの特徴をもっています。

私は今朝、まいばすけっとに食パンを買いに行きました。このまいばすけっとのBGMを聞いてたら徐々にこのBGMから「おいっちにーさんし!おいっちにーさんし」という、掛け声が聞こえてくるような気がしてきました。

まるで中肉中背のまるまる肥えた中年男性が、グラスワインを片手にタキシードを着て、ニコニコ笑顔で元気にラジオ体操を踊っている様です。

これは…?


ジャズにあわせて、おいっちにーさんし! おいっちにーさんし! これでは、格好をつけているのか笑いを取ろうとしているのかわかりません。しかし日本人がジャズを演奏するとアマチュアは勿論、プロの一流三流を問わず全員が「おいっちにーさんし」のジレンマに陥ります。何故でしょうか。ジャズのリズムは、どうしても日本語が持っている『縦乗り』のリズムと相容れないところがあるからです。

ジャズのリズムは裏乗りだと言われます。 しかしラジオ体操の「おいっちにーさんし!」の裏乗りとは全く違います ─── では一体何が違うのでしょうか。

日本語の裏乗り「おいっちにぃさんし」

まず日本語の裏乗りのリズム系を譜面を使って見てみましょう。  「おいっちにーさんし!」を譜面に書き表すと、次のようになります。


ジャズは裏拍を強調します ─── ですから1拍目の前に「お」をつけたして裏拍乗りにしてみました。しかし「おいっちにー」はあまりジャズの様な響きとして感じられません。 

日本語の裏乗りと英語の裏乗りはどこが違うのでしょうか。

ジャズの英語のリズムを日本語に訳してみよう

本当は、ジャズのリズムを理解する為には日本語で考えることを一旦辞めて英語で考えるようにする必要があります。しかしそれは色々な事情からとても難しいことです。ではもし敢えて日本語のままジャズを考えたらどうなるでしょうか。

もしジャズのリズムを無理矢理に日本語に訳すとしたら

 『っちにーさんしっおっ!ちにーさんしっおっ!』


になります。一見全く意味不明ですがよく見てますとつまり『おいっちにーさんし』から『いち』を取り除いて1文字ずつずらしたもの…と御気づきの方もいらっしゃるかも知れません。

日本語 いっ
ジャズ  

『いち』を取り除いて1文字ずつずらす… そのことが感覚的に理解できるまで、何度も繰り返し声に出して読んでみて頂けましたら幸いです。

日本語の発音をずらしてしまう ─── これでは日本語として意味がなくなってしまいます。しかしジャズのリズムは日本語のリズムと発音を並べる順序が違うので、敢えて日本語のリズムのまま解釈しようとする時には、意味がわからなくなってしまうこともやむを得ないことかも知れません。 

ここでの要点は次のとおりです。

  • 日本語は「お」で 始まる
  • ジャズは「お」で 終わる

この本では、この日本語の「基準点から始める」というルールで作られるリズムのことを「頭合わせ」と呼ぶことにします。そしてこの「基準点で終わる」というルールで作られるリズムのことを「尻合わせ」と呼ぶことにします。

この「頭合わせ」「尻合わせ」という2つの言葉は、日本語を母国語とする日本人からとても気づきにくい日本語のリズムが根本的に持っている独特の訛りの存在に気付く為に、とても重要なキーワードとなります。

英語の裏乗り「っち、にっと、さんと、しぃとっ」

以上の事を踏まえた上でジャズの裏乗りのリズムを譜面に書き表すと次のようになります。

これは日本語で3連符を読むときの読み方「いちと、にいと、さんと、しぃと」の最初の「い」を最後に移動し、更に省略したものです。(ここでは更に、言いやすくするために「いっちにっとさんとしいと」に変化しています。) 

『いち!』と言うのを我慢する競争

ジャズとは、どこまで『いち!』と言わないでいられるか、我慢する競争です。

日本人は、日本人が話す日本語自体が持っているリズムの性質から、音楽を演奏するとき『いち!』を言わないと徐々に不安になってくる性質を持っています。音楽を演奏するときに「いち」を言わないと、徐々に日本語として意味の無い領域に入ってきてしまいます。演奏中に心の中で「いち!にー!さん!し!」と数えていますが、いち!を言わないと徐々に「にーさんしー!にーさんしー!」に聞こえてきて、数え間違えそうになり、恐ろしくなってきてしまうのです。

日本人は演奏中に心の中で「いっと、にいと、さんと、しいと」と数えていますが、「いち!」をいわないと、徐々に音楽が「とにー、とさん、としーと」「とにー、とさん、としーと」に聞こえてきてしまい、訳がわからなくなって来てしまいます  ─── それはひょっとしたら日本語を母国語とする人のさがかも知れません。

しかしこの聴く人を『訳がわからなくさせて』混乱させ理性を狂わせていくことが、まさにジャズのリズムの魅力の正体です。

 ─── ここでもし貴方が、このジャズのリズムが生み出す混乱の中できちんと天と地の方向を見失わずにリズムの空間の中を正確に飛行し続けることが出来れば、貴方の音楽は見違える様に魅力的になるでしょう。

そのためにはどうすればいいのでしょうか。

確実にグルーヴする為の3つの方法

聴く人を混乱させ理性を失わせて狂わせていくジャズのリズムの魅力。「私も絶対にグルーヴしたい!」 ─── 問題はどうやったら確実に間違いなくグルーヴする事ができるかです。必死に演奏して一瞬だけグルーヴした感覚を得られた … あの感覚をどうやったら確実に安定して開始して、どうやったら確実に安定して持続できるのでしょうか。

最初から「っとにー、とさん、としーと」と数える

グルーヴしている演奏者は、最初からいきなり「っとにー!とさーん!としーとっ!と数え始めます。ここが日本人と根本的に違う点ではないでしょうか。

最初から「っとにー、とさーん、としーとっ」と数えると、短いフレーズをいきなり弾いても最初からいきなり弾んだ感じになります。

そして、この「ー」の長さが妙に長くなる。「とにーーー!っとさーん!っとしーーーーっと!」になります。そして この「ー」は、いくら長くても、いくら短くても大丈夫になります。 ─── このことについては後の章でより詳しく御話し致します。

頭合わせと尻合わせに気をつける 

日本人ジャズマンは、裏乗りが大切だと考えていても、どうしても「いち!」と言わないと不安になってしまうことから、結果としてフレーズがしつこいほどに1から始まって3で終わる様になってしまいます  ─── それがあの、どことなく垢抜けないリズム「おいっちにー・おいっちにー」のリズムになってしまう根本的な原因です。

この様な縦乗りにならない為には、3音からフレーズを始めて1でフレーズが終わらなければいけません。

日本語リズムは1で始まる
英語のリズムは1で終わる

日本人ジャズマンは、4裏を強調するというと4裏からフレーズを始めようとしてしまうことが多いです。しかこれは間違いです。4裏からフレーズを始める癖がついていると、4裏を強調しようとすればするほど「おいっちにーさんし!」「おいっちにーさんし!」のリズムが強調されるという悪循環に陥ってしまうからです。

4裏から始めるのではなく、4裏で終わるようにしなければいけません。

そのためには、4裏の前からフレーズを始めなければいけないのは、当たり前なことです。しかしこれが日本人にはとても難しいことになっています。何故ならそれが日本語が持っているリズムだからです。日本語が母国語の人は、4裏の前からフレーズを始めると日本語として理解出来ない音に変わってしまうことからそのリズムを演奏することに心理的な抵抗を感じます。

─── 1から始めないと『いちと・にーと・さんと・しー』が、『ちにー・とさん・としー・といー』に聞こえて、日本語として理解できない領域に突入してしまいます。この不快感を解消する為に、思わず「いち!」と大声で言いたくなってくる ─── しかしジャズは、「いち!」 と言ったら負けの勝負です。「いち!」と叫びたい!… これは悪魔の誘惑です。

あなたは遂に悪魔の誘惑に負け「いち!」と叫んでしまいました ─── すると無残にも地獄の「おいっちにー!」「おいっちにー!」の世界に突入してしまいます。 これで貴方もめでたく「おいっちにージャズおじさん」の仲間入りと相成った訳です。

日本語から脱出する

『おいっちにージャズおじさん』にならない為には、日本語から脱出しなければなりません。しかしここで脱出する先の言語は必ずしも、英語である必要はありません。

日本人にとって英語はとてもとっつきがわるい言語です。英語は、日本語にない発音、日本語にない表現、日本語にない概念をたくさん持っています。英語は、日本語を母国語とする日本人にとって直感的につかみにくいものです。

私は最初に学ぶ外国語として英語よりも、タイ語・ラオ語・ベトナム語などの方が適していると考えています。日本と近く母国語話者とも出会いやすいですし教材も揃っているからです。 もちろんスペイン語やイタリア語でも構いませんが、ヨーロッパ言語は日本に住む者にとってほとんど接する機会がない言語なので勉強が難しい面があるのではないでしょうか。

こうして一旦日本語の音声から脱出し日本語以外の音声が聴き取れる様になった後の方が、日本人に馴染みのない英語の概念をずっと勉強しやすくなるからです。

日本語から脱出しなくても日本語から外れていく感覚を恐れずに日本語のリズムを拡張していくことで縦乗りを矯正していくことも充分可能ではないかとも私は思っています。

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更新記録:
タイトルを「日本語の裏乗り」から「縦乗りを克服しようシリーズその2・縦乗りの起源・日本語のリズム」に変更した。(Sun, 18 Mar 2018 21:10:34 +0900)

スマホ対策の為、静的に関連記事を追加した。 (Fri, 02 Nov 2018 16:44:53 +0900)

タイトルを『縦乗りの起源・日本語のリズム』 から『日本語のリズムを限界を探る』に変更した (Tue, 08 Jan 2019 04:02:22 +0900)

縦乗りを克服しようシリーズのタイトル全面見直しを行った。(Tue, 08 Jan 2019 06:20:28 +0900)

おいっちにーさんしの表を追加した。(Tue, 08 Jan 2019 08:43:30 +0900)

ですます対応をしました。大々的に加筆訂正を行いました。(Tue, 10 May 2022 09:33:17 +0900)

大々的に加筆訂正を行った版を公開しました。(Wed, 11 May 2022 21:21:12 +0900)

表題を『日本語のリズムを限界を探るから』から『頭合わせと尻合わせとは何か』に変更しました。(Wed, 11 May 2022 21:25:56 +0900)


著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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