日本人ジャズマンは『縦乗り口裂け女』だ。 裏乗りの人にまとわりつくして「私グルーヴしてる?」と尋ねる。グルーヴしていると答えると縦乗りにされてしまう。グルーヴしていないと答えると殺してしまう。 ─── これを読んで怒るなら怒れ。どうせ最初から仕事なんか干されてるし、ご自由に。だけど事実を言っておく。
僕は日本で演奏したいけど、どうやっても演奏できない。誰と演奏してもリズムがずれる。何をやってもずれる。そして「お前のリズムはおかしい」と怒られる。そして「お前は自分が見えていない」と非難される。そして「お前は勝手すぎる」と非社会的人間扱いする。だけど僕はどうしても自分のリズムがおかしいと思えなかった。だから自分のリズムがおかしくないことを確認する為に次のような手法を使った。その手法とはとても単純だ。
縦乗り克服すると見えてくること
その手法とは...
メトロノームを鳴らし、その音を自分が演奏する8分音符オフビート全部に合わせた状態で演奏
この練習はとても難しい。メトロノーム全裏鳴らしはまるで修行僧の様な精神的な苦しさを伴うトレーニングで、まるで厳寒の冬に滝に打たれる様な強烈な苦しさがある。
練習を続けるにしたがって苦しかった練習も昔の良い思い出の様な感じになってきて、今では鼻歌まじりに何の苦痛もなくできるようになった ─── 僕はこの状態で300BPM程度まで演奏できるようになるまで練習した。できるようになるまで、自分ひとりで2年位毎日3時間くらい、それでバンドとして1年くらい週2回・1回8時間くらいかかった。
それではっきりと気付くようになったことがある。
それは… 日本人ジャズマンのリズムの強い癖だ。
日本人ジャズマンと海外のジャズマンのリズムの違い
日本人ジャズマンは例外なく全員、ジャズのリズムを聴き間違えている。ではどこを聞き違えているのだろうか。
日本人ジャズマンは表拍を合わせるようにリズムをとっていて、裏拍の位置を変えることでニュアンスをつけている。
今までも何度も言ったし、これからも何度でも言うが、この表拍でリズムを取る癖が日本人の音楽が全くグルーヴ/スイングしない根本的原因だ。
ジャズは裏拍を合わせる様にリズムを取っていて、表拍の位置を変える様にしてニュアンスをつけている。
■■■■ わかるまで何度でも言う ■■■■
- 日本人ジャズマンは表拍を合わせるようにリズムをとっていて、裏拍の位置を変える様にニュアンスを付けている。
- ジャズは裏拍を合わせる様にリズムを取っていて、表拍の位置を変える様にしてニュアンスをつけている。
■■■■ 何度でも何度でもいう! ■■■■
日本人独特な動体に対するリアクション
それで裏拍メトロノームをやって気付いたのは、YouTube・ツイッター・ブログ等々で演奏している人や演奏方法を教えている人は当然のこと「日本人は頭乗りだ!」と日本人のリズムを非難している人達のほぼ全員が頭乗りで演奏していることだった。
僕が裏乗り(バックビート=アフタービート)を手動の自分の演奏ではなくて、飽くまでも抽象的な解釈に基づいた自動演奏で実現しようとしていたのは、そこに狙いがある ─── 自分で演奏すると自分が縦乗りなことが原因で正確にバックビートが再現できなくなることを恐れたからだ。
世界には2種類の手の叩き方がある ───『みんな!さあ手拍子をどうぞ!』というと、みんなでせえので同時に手を叩く文化と、『みんな!さあ手拍子をどうぞ!』というと誰からともなく2派に分かれて交互に手を叩く文化。
日本は前者だ。どうやっても同時に手を叩いてしまう。どうやっても交互に手を叩くことができない。本当に不思議なのだが、何時間練習しても、どうやっても日本人は交互に手を叩くことができない ─── 何故なのかはわからないけども、日本人は交互に手を叩くために恐ろしく根気強い練習が必要になる。
それで僕は今かなり正確にコントロールしながらオフビートで演奏できるのだけど、それで他のミュージシャンと一緒に演奏すると、本当にみるみるずれていく。あわせてもあわせなくてもずれる。
2人で交互に手を叩く… 相手の音を聞いて、自分の音を中間に叩くだけなのだけど、お互いの拍手位置がお互いの拍手位置に依存しているので、位置を調整するときは若干様子を見てから調整する必要がある ─── これが日本人は全くできない。
日本人は向かい側から歩いてくる人とよくぶつかる ─── 右に避けると右に避けてぶつかる。左に避けると左に避けてぶつかる。相手を見て反対側に動くということがどうしてもできない独特な気質がある。このことに気付いている日本人はとても少ない。
僕はタイの狭い歩道を日常的に猛スピードで突進してくるオートバイを避けながらそう思った。この国にはよけ損ねて正面衝突する人がいない。
交互に手を叩く…向かいから歩いてくる人を避ける…全く同じ「しばらく様子を見てから動きを調整する」が日本人はできない。
日本人のリズム問題の本質
日本人がオフビートでリズムがずれてしまうのはもう客観的な事実と言っていいと思う ─── 何故僕がここに拘るかというと、僕がセッションで演奏すると必ず「お前は勝手だ!」「お前は勘違いしている!」「リズムがずれているのはお前だ!」と必ず論争になって怒られるからだ。
問題の本質はむしろリズムがずれること自体ではなく、リズムがずれた時にずれた理由を相手に責任転嫁してしまい、リズムがずれる問題の原因を正しく認識しないことではないか。
日本人はリズムがずれたとき必ずずれた原因を相手に求める。実験してもいい。誰かと交互に手を叩きをする。自分がずれてないくても相手は必ずずれる。そして「お前がずれたから、ずれたのだ!」と怒られる ─── この時、僕がひそかにメトロノームを聞きながら手を叩いていたとしたらどうだろう。実際にやってみるとわかるが、メトロノームを鳴らしていても必ず責任転嫁する。
僕は相手が動いてもしばらく様子を見て、相手に合わせずに様子を見て自分のタイミングを調整することも出来る。しかし大抵の人は、2つの手拍子音の間を正確に二分するという作業自体が出来ておらずやや錯覚を伴った不正確な位置で2分して感じている為に、調整すると正しい位置を正しい位置として認識することができず、錯覚によって間違った中間位置に合わせようとしてしまうため、手拍子が二次関数的に加速してしまったり、二次関数的に減速して止まってしまったりする。
日本人的責任転嫁について
日本人は独特な責任転嫁の仕方をする。僕は口裂け女はその日本的な責任転嫁の象徴ではないか…。自分に自信がなく自分が人からどう思われているかいつも気にしている。そして常に人に自分がどういう風に見えているかを尋ねるのだけども、そこで自分が思われたい自分と掛け離れた答えが返ってくると激怒して相手を攻撃しはじめる。よもやその人の本当の自分の姿など口が裂けても言えない。
僕は、口裂け女に「私、綺麗?」と聞かれたら鏡を見せる。 自分が美人かどうか、自分で決めろ!と僕は言いたい。
東京のジャムセッションは本当に『口裂け女』ジャズマンの巣窟で、『私グルーヴしてる?』と聞かれて、グルーヴしていると答えれば縦乗りお化けにされてしまうし、『グルーヴしていない』と答えれば、場の雰囲気を乱したとして出禁になるし…
僕だって原理がどうなってるかわからないわけではないので、縦乗りで演奏することもできる。だけどそれはジャズのリズムとして明らかに変だし、聞いていて心地よくないし、それはまるで訛って標準語を他人に無理強いしているのと同じだし、変なリズムで演奏しているところを他人に見られたら恥ずかしい。
とはいえ縦乗りに合わせないで演奏するとリズムがずれた挙げ句に「下手糞だ」「勝手だ」「わがままだ」「人の音を聞いていないだ」言いたい放題に言われてしまう。
たかだかビールを飲んでジャズを弾くというだけで、何故にこんなべらぼうな苦労をしなければいけないのか本当に疑問だけど、この「リズムがずれる」問題のおかげで僕は、世間一般の方々と全く演奏がかみ合わず、迷惑者扱いばかりされていて、全く演奏の機会がない。
だけど僕は、絶対に諦めない。
何故僕がこんなことを書いているか…というと、DAW でジャズのバッキングトラックを入力するワークフローが大分できてきたからだ。─ジャズは8分裏拍で合わせて表拍が移動するのでこれをDAW上で再現することがとても難しいのだけど、これを再現するワークフローが大分完成してきた。
リズム問題さえなければ、こんな馬鹿みたいな遠回りをする必要などなかったけど、僕はどう工夫しても、日本人ジャズマンの演奏するリズムが耐え難く気持ち悪く、どうしても我慢できない。
日本人ジャズマンのリズムがおかしい、ということを譜面に書いて説明しても、メトロノームを鳴らして説明しても、録音して分析した結果を見せて説明しても、図に書いて説明しても、文に書いて説明しても、それも40以上書いて説明しても、どうやっても理解できないというなら、他に何のしようがある?