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2020年9月11日金曜日

日本人が得意なスタンダードと苦手なスタンダード ─── 縦乗りを克服しようシリーズその28 (oka01-qwynjfszhhpvszwh)

日本人が得意とするジャズスタンダードと苦手とするジャズ・スタンダードにはある法則がある。


日本人にとって難しい曲と簡単な曲がある

東京のジャズ界で難曲と言われている曲には共通点がある。例えば…

  • ドナリー
  • コンファメーション
  • アクチュアル・プルーフ

僕は気付いたのだが、これらの曲はリズムが最初から『ジャズのリズム』になっている。

そして僕は更に気付いたのだが、逆に東京のジャズ界で日本人ジャズマンが好んで演奏する曲はしばしばリズムが『ジャズのリズム』ではない。

  • ブルー・ボサ
  • ナウ・ザ・タイム
  • ユー・アンド・ザ・ナイト・アンド・ザ・ミュージック

これらの曲はリズムがいわゆる『ジャズのリズム』ではない。メロディーをフェイクによって変更する余地が残っている。 

日本人は最初からメロディーがフェイクされて『ジャズのリズム』になっている曲が苦手だ。

ジャズのリズムとは

いわゆる『ジャズ』のリズムというのは、アフリカ系米国人が米国に持ち込んだリズムだ。それは4分音符の2拍4拍強調(オフビート強調)尻合わせリズムの組み合わさったリズムだ。

もともとの古いジャズの曲はリズムが1拍3拍強調のものが多い。ジャズはもともと、こういう「縦乗り」の曲をアフリカ系のミュージシャンが破壊・・・つまりフェイクによって2拍4拍強調にアレンジしたということが醍醐味の音楽だった。

1930年頃には普通の一般的なダンスミュージックだったジャズが時代を経るにつれて、即興演奏に主体を置いて激しくリズムに変更を加えるミュージシャンが多く現れた。そして1950年ごろには「最初からメロディーがフェイクされているスタンダード」が現れた。

ドナリー等々は、最初からメロディーがフェイクされている。だがブルー・ボサ等々はフェイクされていない。メロディーにフェイクされる余地が残っている。

ドナリーが難しい理由

ドナリーが難しい理由は運指などの技術上の問題ではない。この曲のリズムが日本人が苦手なリズムだからだ。

日本人の頭合わせのリズムによってドナリーのリズムを認識していると、途中で弾き損じたとき、途中から復帰できない。アフリカ系の尻合わせリズムでリズムを認識していれば演奏中に曲の位置を理解できるので、弾き損じても途中から入れるが、日本人の頭合わせリズムで認識していると演奏中の曲の位置が理解できず、暗闇の無視界状態になってしまうため、メロディー途中から入れない。つまり最初から最後まで1音も外せない。だから難しい ─── この曲が難しい理由はメロディーではなく飽くまでもリズムにある。 つまり日本人が認識できないリズムで作られたこの曲は日本人にとってとても演奏が難しい。

ユーアンド〜が簡単に感じられる理由

ユーアンド〜が簡単と認識される理由はドナリーの逆だ。この曲のリズムはオンビートなので、日本のリズム(123休)として解釈し直すことができる。だから簡単に感じる。

僕はこの曲が嫌いだったので、意識して聞いたことはなかったのだが、今聞いたら僕が東京のジャムセッションで耳にしていたリズムと全く違うことに驚いた。

東京のセッション界隈ではユー・アンド・ザ・ナイト・アンド・ザ・ミュージックを演歌風の123ビートにフェイクして演奏する人は大勢いる。僕はこの4拍裏から弱起で入って1拍目を強調するリズムをおいっちにーと呼んでいる。本来この曲は1拍目オンビートのみ強調して演奏すべき曲ではない。 おいっちにーは、ジャズの1拍3拍強調とは全く違うリズムだ。

この曲は一般的に「簡単な曲」と認識されているのだが、僕は正直この曲が猛烈に苦手だった。

その理由は恐らく、この曲は日本リズムとして解釈しやすいので、この曲を東京のセッションで始めると、演歌風ジャズの非常に強いリズム偏向が出てしまい、どうやっても止められなくなってしまうからだ。

ジャズのリズムと日本のリズムの違い

和ビートの1拍3拍強調とジャズの1拍3拍強調は似ているが、その後のリズムの発展の仕方が違う。

ジャズで1拍3拍を強調する場合、それは2拍4拍の強調との入れ替えによってリズム遊びを行う流れのなかのひとつだ。

ところが日本の1拍3拍強調の場合、1拍2拍3拍を強調し4拍目を休むというパターンで安定して一切変化しない。

古くあまり有名な演奏ではないが、この曲は2拍4拍を強調していることがとてもわかりやすい。この時代このリズムはジャズではなく「ジャイヴ」などと呼ばれていた。

結論

和ビートの1拍3拍強調とジャズの1拍3拍強調は似ているが、全く違う性質のリズムだ。海外でも通用する演奏を行うためには、その違いをはっきり意識して演奏し分けることが大切となる。

大変な駆け足の説明となったことをお詫びしたい。次回の加筆訂正のときには具体的な譜例などを交えてより具体的な説明をしたいと思う。

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参照

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著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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