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2019年10月11日金曜日

奇数音数フレーズ=日本語の四字語呂合わせ洗脳を解け! ─── 縦乗りを克服しようシリーズその11 (oka01-juvohhharxqzeqyu)


 

弾くこと自体は誰でもできる簡単なフレーズだが日本人のアドリブには絶対に出てこないリズム ─── 伝統的なジャズの基礎リズムパターンだけど、日本語がネイティブなジャズマンの大半の人ができていない…という現状がある。弾けないだけでなく、メンバー内の誰かがこのリズムを多用したときに正しく小節数を数えることができなくなってしまい、演奏がずれてしまう。


これは日本人にとっては数えること自体が非常に難しいリズムのひとつだ。

では、どうやったらこの苦手を克服できるのか、そこを考えてみた。

日本語がネイティブだと苦手になるリズムがある

日本語がネイティブだと苦手になるリズムがある ─── 何故、僕がそのことに気付いたかというと、ラオ語を話す人は子供から老人まで全員がこのリズムで踊ったり歌を歌ったりしていたからだ。僕はラオス国境地帯を10年以上放浪しラオ語の方言が話せるようになってから日本に帰ってきたのだが、帰国して以来日本のミュージシャンの多くはプロ/アマチュア問わず『あるリズム』をとることが全くできないということ気付くようになった。

最初は「まぁ偶然なのかな」程度に思っていたのだけど、あちこちに顔を出していくうちに、そうではないらしいことに徐々に気付くようになった。日本の大半のミュージシャンがこのリズムを正しく数えられないということが納得できるまで数年の時間がかかった。

どうやら僕はラオ語が話せるようになったことで、日本語がネイティブだと気が付きにくい日本語のリズムの特徴に僕は気付くようになったようだった。  

ラオ語を話す人は子供から老人まで全員がこのリズムで踊ったり歌を歌ったりしていた。僕が現地の民族音楽の現場で得た体験は実際のところは非常に厳しいもので、このリズムでしゃべったら「お!お前はやるな!」と一目置かれる...などというような生易しいものでは決してなく、このリズムで話せないと話を聞いてもらえないばかりか、軽視され見下されて相手にすらされず、社会に適応自体すること自体が無理になってしまうようなものだった。できるのが当然なのだ。

僕はそういう世界にずっといたのだが、日本に帰ってきたところ、一流のプロと呼ばれているようなミュージシャンですら、そのリズムのとり方が全くできていないということに気付いて愕然とした。

その『あるリズム』とはアフタービートのことだ。

このリズム=アフタービートは、南米の人達やアフリカ・東南アジアやインドなど南方の人達がよく使うリズムパターンで、1940年代にアフリカ系の人がジャズ(西洋音楽)を演奏する様になって持ち込まれたリズムらしい。アメリカ音楽の大きな影響下をうけている日本人から見ると、このリズムは『ジャズのリズム』と認識されることが多いのではないだろうか。だがこのリズムは決してジャズだけが特別に持っているリズムではない。

日本人は何故このリズムがとれないのだろうか。それは日本語がネイティブの人は四字で韻を踏む習慣があるからだ。

四字で韻を踏む日本語

アフタービートとは裏拍を強調するリズムのことだ。ただそれだけのことなのだが、日本語がネイティブだとこれがどうやってもできな。必死にアフタービートのリズムで演奏しようとしているのに呪われた様にオンビートになってしまう。本人はアフタービートにしているつもりでも実際にはなっていない、またそのことに気付かない。日本語にはそういう独特なパラドックスが存在する。

何故、日本語がネイティブだとアフタービートができなくなってしまうのかにははっきりした理由がある。 それは日本語が持っている韻の踏み方と大きな関連がある。

それは日本語が四字くぎりで韻を踏む習慣を持っているからだ。

とこや・やっとこ・さざんか・とらさん/けっこー・けだらけ・ねこはい・だらけ・・・日本語は必ず4つで帳尻をあわせる言語だ。日本語の語呂合わせは必ず4つ区切りになっている。

だから日本人はジャズのアドリブを演奏するときも無意識のうちに4音で区切られたフレーズを多用する。 実はこれは日本人独特な非常に珍しいリズムのとり方だ。日本語以外の言語でこういうリズムのとり方をすることは極めて稀だ。だが日本語ネイティブだと自分が無意識のうちに四字くぎりで韻を踏んでいること自体に気付くことができない

実は4音でアフタービートを作ることは原理的に不可能だ。

その理由を以下で説明したい。

アフタービートと音数

外国語のリズム

ジャズ(=アフリカ系・南米・インド・東南アジア系の音楽)は、音数が3個・5個・7個で区切る習慣がある。何故かというと彼らは裏拍から始まって裏拍で終わるメロディー=アフタービートを多用するからだ。裏拍から始まって裏拍で終 わると音数は必然的に奇数(3・5・7)になる

音数3の場合

八分音符数
メロディー





音数5の場合

八分音符数
メロディー



※ メロディーの終了地点を小節後尾に合わせている点に注意してほしい。ジャズ系のリズムは必ずメロディーの最終地点を小節後尾にあわせる。

表を見れば、裏拍から始まって裏拍で終わるメロディーは必ず3・5・7…の奇数音数になることがわかるだろう。

日本語のリズム

日本語の語呂合わせリズムは音4個(偶数)で構成される。このリズム感覚でメロディーを作ると始まりが表拍なら終わりは必ず裏拍に、始まりが裏拍なら終わりは必ず表拍になる。つまりメロディーの終わりと始まりのいずれか片方が必ず表拍(=オンビート)になる。 これで表拍が強調されてスピード感が消えてしまう。

音数4の場合

八分音符数
メロディー

音数6の場合

八分音符数
メロディー

※メロディーの開始地点を小節先頭に合わせている点に注意して欲しい。日本系のリズムは必ずメロディーの先頭地点を小節頭にあわせる。

この表を見ればわかるように音数が偶数だとどの様な配置にしても片方が表拍に当たる


また、日本語のリズムは場合によっては先頭の1音を休符にすることがある。先頭が休符になっても4つまとまりでメロディーが構成される法則は変わらない。


八分音符数
メロディー


※ 先頭1音を休符にすることを僕は『おやつはカール』のメロディーになぞらえて『それにつけても』フレーズと呼んでいる。『それにつけても』フレーズについては節目のない音楽で説明した。

このように日本語のリズムは日本語に4つで韻を踏む習慣があることにより、開始地点か終了地点のどちらかが必ず表拍になるため、アフタービートにならない。

※ また4は必ず2で割り切れるので、弾く人がどんなに速く弾いても聞く人には半分のスピードにしか聞こえない。このことについては 裏拍の重要性 で説明した。


3字5字で韻を踏む外国語のリズム




タイ東北地方・僕が住んでいたウドンタニー県の方言のリズム。僕が住んでいたアパートのすぐ側にこのバンドの本拠地があった。16裏で数合わせをしている部分を除くとほとんどの場合で8分音符5個か7個で韻を踏んでいる。

このリズムのとり方については 節目がない言語・日本語 で説明をした。


ブラジルのミュージシャン João Bosco の演奏を聞いてよう。


この曲はメロディーが主に裏拍で構成されている。つまり奇数音数のメロディーが多く出現する。


当記事の冒頭で挙げたこのメロディーも5+5+3=13個の奇数音数で構成されていることがわかる。裏拍から始まり裏拍で終わるメロディーは必ず奇数音数になる。

四音洗脳を解く

日本語ネイティブだと、かなり意識して3・5・7音のリズムを練習しないとアドリブするとき無意識のうちにメロディーの音数が必ず4になってしまい、リズムがスピード感を失って単調になってしまう。

タイの人がそんなに練習しなくてもある程度まともにジャズが弾けるのを何度か目撃した。だけど日本語ネイティブの者は恐らくそういう風になることは絶対にないだろう。

日本語がもつ特殊な性質によって、日本語ネイティブ話者は、リズムを矯正する専門の訓練を行わない限りジャズの演奏には非常に独特な悪癖を残すことになるだろう。

その四音洗脳を解くヒントをこの縦乗りを克服しようシリーズに書き残したので読んでみて頂けたら幸いだ。

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更新記録:

タイトルを『日本語の四字語呂合わせ洗脳を解け! 』から『奇数音数フレーズ=日本語の四字語呂合わせ洗脳を解け! 』に変更した。(Thu, 06 May 2021 20:00:09 +0900)

 

著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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