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2019年9月22日日曜日

メトロノームが鳴る前に歌いはじめよう ─── 縦乗りを克服しようシリーズその10(oka01-zephynxzkddvxpgy)


日本でジャズを学んでいるとしきりに『裏拍が大切だ』と言われる。しかし黒人の名人の演奏を聞くとしばしば表拍を強調したメロディーを歌っていることに気付く。だが全くスピード感を失っていない。

日本人が彼らを真似して表拍を強調すると、どうしても『音頭臭い』感じになってしまい洗練されていないモッサリとしたスピード感に欠けた演奏になりがちだ。では日本人の表拍強調と黒人の名人プレーヤーが奏でる表拍強調の何が違うのだろうか。

実は、アフタービートとは決して裏拍を強調することだけではない。
  • メトロノームを表拍に合わせて演奏する。
  • メトロノームを裏拍に合わせて演奏する。
この2つは表裏一体で、どちらか片方だけを訓練すればいいというわけではない。以下そのことを見ていきたい。

表拍の重要性

黒人教会音楽を聞いてみると
  • バックが裏・リードが表
  • バックが表・リードが裏
の両方のパターンがあることがわかる。そのことを見てみよう。


このビデオは黒人教会音楽(ゴスペル)の世界でその名を知らぬものはいない超大御所『フレッド・ハモンド』のナンバーだ。

日本のジャズの世界では『裏拍が重要』ということがしきりに言われる。裏拍の強調ができなければジャズではないとすら言われる。だが実際に黒人の名プレーヤーの演奏を聞いてみると、実際には表拍を強調して弾いていることも多い。例えば、この中でのフレッド・ハモンドは、しばしば表拍を強調したメロディーを歌っているが、全くスピード感を失っていない。

だが日本人が彼らを真似して表拍を強調すると、どうしても『音頭臭い』感じになってしまう。洗練されていないモッサリとしたスピード感に欠けた演奏になりがちだ。アフタービートとは決して裏拍を強調することだけではないのだ。

では日本人の表拍強調と黒人の名人プレーヤーが奏でる表拍強調の何が違うのだろうか。

この問題は2つに分割できる。

掛け合いができない日本人

アフタービートは常に協力プレーだ  ─── 相手が表拍を弾いたら自分が裏拍にまわる。相手が裏拍を弾いたら自分が表拍にまわる。こうして複数人が集まって協力して裏拍と表拍のコンビネーションを表現する。つまり2グループで代わりばんこに音を出す。こうすることで音が二倍あるようなスピード感を生み出していく ─── この複数名で協力しあって裏拍表拍のコンビネーションを表現することこそがアフタービートの本質だ。
このツイートはアメリカ南部にある「ロン・クラーク学院」のビデオだ。学校行事で映画を見に行くことがきまって喜ぶ生徒の様子が写っている。これを見るとわかるがその場にいる全員が自然に裏拍と表拍の2派に分かれて交互に手を叩き合っている。これが複数名で協力しあって裏拍表拍のコンビネーションを表現する好例だ。

ところが日本の音楽には必ず表拍から歌い始めなければならないという世界的に見て非常に珍しいドレスコードがあるため、この『複数名でふた手に分かれ協力しあって裏拍表拍のコンビネーションを表現する』ということが上手にできない。

日本人が二派に分かれたアフタービートを演奏しようとすると、片方の人が裏拍で音を出すと、表拍で音を出している人が裏拍に釣られて裏拍に変わってしまう。或いは片方の人が表拍で音を出すと、裏拍で音を出している人が表拍に釣られてしまい表拍に変わってしまう。結果として音が分かれて2つの独立した音として存在できず、重なって1つに収束してしまう。

この様に日本人にはふた手に分かれてリズムを奏でることができないという大きな特徴がある。このことについては既に 縦乗りと横乗りの違い  で詳しく論じた。

後付アフタービートと前付アフタービート

次に問題となるのは後付けアフタービートの問題だ。

日本人がアフタービートを練習しはじめて長年に渡って厳しい訓練を乗り越えて2人組で代わりばんこに音が出せるようになったとしても、はっきりと裏拍を出しているのに何故かどうしても『音頭っぽい』フィーリングが抜けないというジレンマに陥る。

何故こういうことになるのだろうか。実は日本の伝統音楽にもアフタービートがあるのだが、この順番が海外のアフタービートの順番と真逆だからだ。日本人はしばしばこの順番の違いを認識することができない。

次のビデオを見てみよう。

このビデオは全く同じメロディーについて、完全に1小節ずれたバージョンとずれていないバージョンをそれぞれ並べたものだ。このビデオでそれぞれのバージョンを続けて聞いてもどこが違うのか全く認知できない…ということがこの問題の本質だ。

海外では主旋律が3拍目から入り掛け合いの間の手が1拍目から入ることが多い。ところが日本の場合1拍目から主旋律が入り3拍目から間の手が入ることが多い。

日本の音楽では、主旋律・副旋律(間の手)の入る順番が海外の音楽と完全に逆の順番で演奏される。

よって日本人が海外の人と一緒に演奏すると、結果として常に2拍+2拍=1小節ずれた状態で演奏してしまい、しかもその場にいる日本人全員揃ってそのずれに全く気付かないという非常に迷惑な癖となって観察されることになる。

この問題を僕は「後付けアフタービート問題」と呼んでいる。

この問題については既に 日本人が聞こえないリズム で詳しく説明した。

ここではこれらの違いに触れつつ、どのように訓練すれば克服できるのかについて論じたい。

民謡の掛け合い

民謡(唄)という物は、世界各国例外なく必ず掛け合いなっていてその点日本も例外ではない。

違うのは順番だ。

海外の民謡(アフリカ・インド・東南アジア)は大抵

34➀・34➁・34➂・34➃
が先

➀23・➁23・➂23・➃23・
が後だ

ところが日本は必ず

➀23・➁23・➂23・➃23・
が先
34➀・34➁・34➂・34➃
が後になっている。

結論を先に言うと、日本人が非常に苦手なリズムの正体は、
メトロノームが鳴る前に歌いはじめる
ことそのものだ。

そのことを実例から見てみる。



|ねやがわ・おんどで・えがおが・ふえて・|
|・ひとも・こここも・まるくな・る・ホントネー

この曲の中で「ホントネー」と歌っている部分が小節頭に先行して入るアウフタクト構成になっている。実はこの部分だけが例外だ。ここだけが次の小節のコードを先取りした真のアウフタクトであり、これ以外の全ての他の部分は全て小節を先取りしない偽アウフタクト構成になっている。

日本の唄の掛け合いは、次のような順番で構成されている。

12・34|22・34|32・34|42・34|

主旋律が入る拍数を太字で示した。

日本の掛け合いは、必ず主旋律が12に入りそれを追うように34で副旋律が入る

それが当然と思われるかも知れないが、実は外国の音楽はそうなっていない



この曲の唄の掛け合いは次のような順番で構成されている。

34 |12・34|22・34|32・34|42・34|12

再度、主旋律が入る拍数を太字で示した。

 |4   |1   |2   |3   |4   |
主|ジーザス|    |ジーザス|    |ジーザス|
副|    |ジーザス|    |ジーザス|    |

この曲では主旋律が34に先行して入り12で副旋律が入る。 この特徴は、海外の音楽(アフリカ・東南アジア・インド・中東などの民謡・そしてジャズやR&Bなどのアフリカの民謡の影響を受けた西洋音楽)でほとんど普遍的に見られる  ─── 否、日本の音頭だけが特異的に逆順番で唄の掛け合いを行う。



この曲は伝統的ゴスペルの形式を今なお踏襲しているルーサーバーンズとサンセットジュビレーの演奏だ。伝統的黒人教会音楽(伝統的ゴスペル)は現代ジャズのリズムの原型になった音楽で、現代ジャズでは失われてしまったリズムの全てのパターンを含んでいる。

この様に日本と海外の音楽は、裏・表の概念が完全に逆になっている。

日本   |12・34|22・34|32・34|42・34|
海外 34|12・34|22・34|32・34|42・34|12

これは、数学的に見ると2分音符でのリズムの捉え方の違いだ。

日本人は2分音符で表拍を強調する2分音符表乗り
外国人は2分音符で裏拍を強調する2分音符裏乗り

になっているといえる。

つまり12からメロディーを始めると『どどんがどん』的な響きが強くなる34からメロディーを始めると『どどんがどん』的な響きは弱くなる

メトロノームが鳴る前にメロディーを始める

この節の要点は、メトロノームが鳴る前にメロディーを始めることだ。だが、多分この節を読む方の大半は、まずその前の段階の初歩的なメトロノームの鳴らし方の基礎を学ぶ必要があると思う。ここではメトロノームの鳴らし方について初級・中級・上級の3つの節に分けて説明してみた。

初級

皆様は、メトロノームを鳴らしながら練習するときに、どのようにメトロノームを鳴らしているだろうか  ─── 一番よくあるのは、メトロノームを1拍3拍に合わせて練習することではないだろうか。ひょっとしたら既にご存知の方もいらっしゃるかも知れないが、このメトロノームの鳴らし方はあまりよい方法ではない。

何故かというと、1拍目3拍目にメトロノームを鳴らすと無意識のうちに1拍目3拍目からメロディーを始めてしまうからだ。すると前述の理論によって『どどんがどん』的な音頭のフィーリングが強くなってしまい、異国情緒的なジャズ的のフィーリングが弱くなってしまう。

これを避ける為にとてもよく行われるのが、メトロノームを2拍目4拍目に鳴らすことだ。これは若干の慣れが必要なのだが、とても有効な練習方法だ。こうすることで自然に2拍目4拍目からメロディーを開始することができる。

これを基礎練習として毎日続ける。

中級

メトロノームを2拍目4拍目に慣らして練習するのはとてもよい練習だ。しかしこれだけだと4分音符表拍ばかりからメロディーを始めてしまうという悪い癖がついてしまう。この問題を解決するよい方法は2拍目裏・4拍目裏にメトロノームを合わせて練習することだ。

これは非常に難しい。だが基礎練習として毎日続けたほうがよい。

上級

メトロノームを裏拍に合わせて弾くのは難しいことだ。だがある程度慣れるとこれは実はとても簡単なことでもある。何故簡単なのかといえば、メトロノームを裏拍に合わせて演奏すると、メトロノームを聞いてからメロディーを弾き始めることができるからだ。
  • メトロノームを表拍に合わせて演奏する。
  • メトロノームを裏拍に合わせて演奏する。
この2つは技術的な手の動きだけを見れば完全に同じ動きだ。つまりこれは心の中でリズムをどう認識しているのかという問題でしかない。だけど『メトロノームが鳴ってから音を出す』と『メトロノームが鳴る前に音を出す』の間には、とても大きな心理的ギャップがある。

この2つには大きな違いがある。メトロノームを裏拍に合わせて演奏すると、メトロノームを聞いてからメロディーを弾き始めることができるため心理的に安心感がある。ところがメトロノームを表拍に合わせて演奏するためには、メトロノームを聞くまえにまだ見えないメトロノーム音の位置を心の中で想像しながらメロディーを弾き始めなければならなくなるため、心理的な不安感が強くなる。

これは筋肉や脊髄反射の問題ではなく心の中の問題だ。日本人がこのメトロノームが鳴る前に音を出す能力を習得するためにはどうやら、とても長い修練が必要なようだ。

それは日本の伝統音楽の中にこのリズムが全く存在しないためだ。日本人はこのリズムの認識方法に馴染みがほとんどなく、日本人としてはどうしてもある程度まとまった集中的な訓練をしないとなかなか身につかない。

メトロノームの前に入るむずかしさ

メトロノームを裏拍にならすと、メトロノーム音を聞き、それをトリガーとしてメロディーを弾き始めるだけでも、充分に『1拍目前にメロディーを入れる=アウフタクト』を構成することができる。だからこそリズムに対する理解がなくても、無意識のうちに自然にできる。

しかしこの練習方法を長く続けると、常に4拍目表からメロディーを始めてしまう癖がついてしまう。

例えば、R&Bやジャズでよく使われるアウフタクトの構成に8分音符3つ分だけ先行して『喰って』入るものがある。このメロディーをメトロノームを2拍目表・4拍目表に鳴らしながら演奏しようとするとメトロノーム音よりも8分音符速く音を出さなければいけなくなる。これはやってみると案外と難しい。

メトロノーム音よりも先に音を入れるということは、やってみると案外と難しい。アウフタクトの難しさの本質は、メトロノーム音を聞いてから音をだすことよりも、メトロノーム音を聞く前に音をだすことのほうが圧倒的に難しいことだ。

つまりメトロノームを何拍目にどのように鳴らしたとしてもメトロノームが鳴る前に音が出てメトロノーム音と同時にメロディーが終了したならそのメロディーはジャズ的なフィーリングを帯びてくる。

逆にメトロノームが鳴ると同時に、或いはメトロノームが鳴った後に、メロディーを始めると、そのメロディーは音頭的なフィーリングを帯びることになる。

更に踏み込んで言うと1拍目からメロディーが始まるとメロディーは音頭的なフィーリングを帯びる。僕はこれのことを『頭合わせ乗り』と呼んでいる。

逆に、ある拍(例えば1拍目)の前からメロディーが始まり1拍目で終了するメロディーはジャズ的なフィーリングを帯びる。僕はこれのことを『尻合わせ乗り』と呼んでいる。

このことに関しては 節目がない言語 で詳細に論じた。

超上級:3から始めるリズム

具体的に言うと、メトロノームを1小節に1拍だけ鳴らして

34➀・34➁・34➂・34➃

と小節数を数えながら2を抜かして3から弾き始める練習をする。

これは実は

や っ て み る と

 す ご い む ず か し い

ことがわかる。

これができる人が日本人にはいない。

つまり、たまにいるけど弱いのだ。

➀23・➁23・➂23・➃23・

と数える人が表れると直ぐにつられて順番が変わってしまう。

外国の人は、しばしば3から数え始める。

何をするのも『さんはい』1『さんはい』2『さんはい』3というように、3拍目から数え始めて始める。

掛け合い=代わりばんこに歌う

海外の音楽(※アフリカ・東南アジア・中東・そしてそれらの民族音楽音楽の影響を受けた西洋音楽=R&B・ロック・ジャズなどの米国音楽)のグルーヴ感の源泉は繰り返しだ。特に2つのパターンが代わりばんこに表れるリズムは、外国の音楽では定番と言ってよくほぼ必ず出てくる。ところが日本の音楽にはこの要素がない。このことを僕は縦乗りと横乗りの違いで指摘した。

アフタービートというと4分音符裏拍を強調することだと(日本では)一般的には考えられている。だがアフタービートの本質は、この2人で代わりばんこに繰り返し歌う行為=掛け合いだ。

通常掛け合いというと1小節単位で代わりばんこに歌うものを想像するかも知れない。だが1小節ではなくより短い半小節=2分音符や4分音符で掛け合いをすると考えたとすると、掛け合いとアフタービートは全く同じ行為だということがいえる。

ゴスペルやR&Bでは、4分音符だけでなく8分音符や16分音、或いはより長い2分音符・全音符、更に複数の小節にまたがって2小節単位・4小節単位など、様々な長さの音符での裏拍が強調される。

相手が先手なら自分が後手、相手が後手なら自分が先手と分担して演奏する。 ─── これはつまり実践上は、メトロノームを表拍に鳴らして裏拍を演奏したり、メトロノームを裏拍に鳴らして表拍を演奏したりすることと全く等しい行為だ。

つまりジャズの練習をするうえでメトロノームを裏拍で鳴らすだけでは実は不充分だということでもある。メトロノームを表拍で鳴らして裏拍だけでメロディーを構成する練習も必要なのだ。相手が裏で自分が表のケース・相手が表で自分が裏のケースの両方を練習しなければいけない。メトロノームを裏拍で鳴らして練習するだけでは、自分が表で相手が裏のパターンしか練習できないことになり、相手が表になったときに転んでしまう。

そして相手が裏で自分が表のケース・相手が表で自分が裏のケースのどちらに於いても、自分がメトロノームよりも先にメロディーを始めることが必要になる。

この練習を正確に行うためには、数えながら練習することが非常に重要になる。数えながら行う練習については 数えれば数えるほどに巧くなる!ジャズ─── 縦乗りを克服しようシリーズその9 で説明した。


掛け合いとバランス



この曲は映画ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFTのテーマソングだ。この曲は日本のリズムを強く意識して作られており、曲中で日本の4抜きリズムがしつこいほどに繰り返されている。日本人の音頭のリズムには次の小節に先行するアウフタクトを一切つくらず4拍目で間を開けて待つという非常に強い癖がある。このどどんがどん337拍子のことを僕は4抜きリズムと呼んでいる。

この曲ではここまでしつこく4抜きリズムを繰り返しているにも関わらず、実は僕はずいぶんと長いあいだ、この曲が日本を強く意識していることに気付かなかった。

一方、日本人が演奏するジャズには最初の1音を聞いただけで即座にそれと判る特徴がある。アウフタクトが一切ないからだ。その原理については 何故、日本人は縦乗りなのか ─── 縦乗りを克服しようシリーズその1 でも詳細に説明した。

これほどまでに4抜きをしつこく繰り返している東京ドリフトが、あまり日本的に響かないのは何故だろうか。

それはリズムの重心だ。

東京ドリフトで歌っているのは日本人だ。しかも意識してしつこく日本のリズムを繰り返している。しかし全体で見ると、日本の『どどんがどん』にありがちなスピード感ゼロな印象はなく、むしろスピード感が溢れている。

それは歌が12拍を強調している分、バッキングトラックが34拍を強調してバランスを取っているからではないか。

12拍で歌が入ると34拍で『キターーー』4拍目で『ハイッ』などの高インパクトのサンプリング素材が入る。こうして、歌がしつこく1拍目に入ってリズムの重心が強烈に1拍に偏ってしまった状態に対して、3拍目に強烈に重いカウンターウェイトを入れて全体としてのバランスを取っている。

一方、日本人一流プロミュージシャンが演奏するジャズは、バンドのメンバー全員そろって無意識のうちにバンドメンバー全員で4抜きリズムを繰り返してしまうため、全体としてリズムの重心が1拍目に極度に偏ってしまい、必死にジャズ風を醸し出しているにも関わらず意図せず強烈な音頭フィーリングを発生させてしまう。

結果として東京ドリフトと真逆に、サウンド自体はジャズなのにどことなく垢抜けない音頭的な雰囲気が濃厚に漂うジャズとなって観察されるのではないだろうか。

リズムの重心

先に挙げたように音頭も必ずしも1拍目頭ばかりに音が入る訳ではなく、アクセントとして3拍目からはいる尻合わせリズムがはいることがある。

またゴスペル音楽も必ずしも3拍目ばかりに音が入る訳ではなく、アクセントとして1拍目からはいる頭合わせリズムが入ることがある。

違いは頻度だ。

頭合わせリズムが繰り返されればそのリズムは頭合わせ乗りのフィーリングを帯びるようになる。逆に尻合わせリズムが繰り返されればそのリズムは尻合わせ乗りのフィーリングを帯びるようになる。


数えてみよう

いずれにしても、リズムの構成を的確に認識するのはとても難しい  ─── リズムの構成を的確に認識するためには小節数をあわせて数えることが非常に大切で、それ以外の方法は存在しない。数える大切さについては数えれば数えるほどに巧くなる!ジャズで説明した。

ここでは具体的な数え方について説明してみたいと思う。

ジャズやR&Bなどのポピュラー音楽ではカウントを1小節目1拍目から数え始めることはほぼ全くないといってよい。大抵の場合は4小節目の3から、場合によってはそれよりも大分前から数え始める。

34・4234・1234・2234・3234

日本語でもよいができれば英語で

1ア2ア3ア4ア
2ア2ア3ア4ア
3ア2ア3ア4ア
4ア2ア3ア4ア
と小節数を含めながら数える。

慣れたら次のように常に4小節目から数え始めるようにする。

4ア2ア3ア4ア
1ア2ア3ア4ア
2ア2ア3ア4ア
3ア2ア3ア4ア

更に慣れたら3小節目4拍目や4小節目2拍目等々の任意の拍から数え始められるように練習しよう。

以下でビデオを見ながら実際に数えてみよう。

森のくまさん


日本でもよく知られたこの曲は、もともとはディキシーランド・ジャズのナンバーだった。1972年に日本語に翻訳されNHKみんなの歌で紹介されたことがきっかけで一般化した。最も典型的なジャズのリズムを含んでおり、一番最初に練習する素材として最も適している。

この曲は4小節目3拍目裏から始まっているので
『4ア2ア3あるう|日ア2ア3モリのな|かア2ア3』
と数える。これを数えながらメロディーを弾いてみよう。

So what


この曲のメロディーは4小節目1拍目裏から始まっている。つまりその前の
『3ア2ア3ア4ア4タラーラララララ』と始まらなければいけない。
これも数えながらメロディーを弾いてみよう。

Loved on Me

この曲は3小節目4拍目から予告なくいきなり始まる。この始まり方はヒップホップやR&Bでよく使われるので慣れておいたほうが良い。


God Made It


エヴェリン・トゥレンティーン・アギーの名曲『神の御技』。伝統的ゴスペルを守るこの曲はロック式の基本的な掛け合いを学ぶのに適している。

Going with the Lord

ルーサー・バーンズとサンセットジュビレーの渋い名曲。ここではリードシンガーのルーサー・バーンズが間の手に回り、普段は間の手のサミュエル・バーンズがリードを取っている。


This is the Day


この曲を最初から最後まで数えることができたら大体完璧だ。


発展課題

以下のビデオを正確に数えるのは非常に難しい。だが世界レベルのミュージシャンはこの程度は当然のようにこなす。世界レベルのミュージシャンを目指すためには乗り越えなければいけない課題だ。


2017年のNAMMショーでのライブ



Take it Back



I Made It


現代ゴスペルの名人・マランダ・カーティスのバンドのリズムは壮絶だ。これを全て間違いなく数えることができたら、もう何も怖いものはない。

これを数えるのはものすごく難しい。一番細かい音符を16分音符にして数えると正確にシンコペーションを歌うのはほとんど不可能に近いので、一番細かい音符8分音符と考えて8小節グループとして数えると多少わかりやすくなる。

I'm All in


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著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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