僕はこのジョージ・ベンソンのスターダストのギターソロが大好きだ。シンプルで非常に短い半コーラスのソロで、次に来るクライマックスに非常にスムーズに美しくつないでいる。無駄のない完璧なソロだ。
僕はこれを2000年頃に音を採った。それ以来弾けるようになるために数限りになく練習したのだが、何故か弾けない。音は全て採れたしテクニックとしては何も難しいことはない。だがどうしても弾けない部分があった。
僕にはこういう『音は採れたのにどういう訳か弾けなかった』曲がいくつかあった。
だが10年に渡る語学修行の旅から帰ってきたら、何故か理解できるようになったのだ。
簡単なのに何故か弾けない・・・ 今回はその理由を譜面上で説明してみたい。
譜面
以下がジョージベンソンのスターダスト・ギターソロ部分の譜面だ。ビデオも用意した。
こうして譜面に起こしてみると面白いことがわかる。
特徴1・拍子入れ替えがある
ここでいう拍子入れ替えというのは、マイルス・デイヴィスのフットプリンツのように曲中で一定のパルスを維持したまま、異なる拍子を同時に演奏することだ。スターダストのジョージ・ベンソンのソロでは、この短い中で4拍子の上で2拍3連・8分スイング・16分を入れ替えて、非常に効果的にメリハリをつけている。このようにリズム変化がある音楽は聞く人を飽きさせない。
特徴2・コード進行先取りがある
ソロ25小節目の4拍目の音はF#-7の分散和音だ。この部分のコードはG-7なので本来はあらわれてはいけない音だが、次の小節を先取りするような形でF#-7の分散和音が現れている。コード進行先取り部分を赤線で示した。
これのことを僕は「コード進行の先取り」と呼んでいる。この様にソロが、曲のコード進行が実際に起こる前に、先取りしてコード進行を起こすことによって、聞く人に新鮮さやスピード感を与えることができる。
コード進行先取りについて
コード進行先取りについては、 節目がない言語・日本語 ─── 縦乗りを克服しようシリーズその4 でも触れている。このテクニックは日本人が最も苦手とするものだ。日本人が外国の曲を聞いたり弾いたりするとき、何故かうまく弾けない・何故かリズムがとれない・何故か理解できない…と感じる時、しばしばそこに「コード進行の先取り」がある。
その他
ジョージ・ベンソンといえばあの『パララララ』という4度入りオクターブのトリル…というほどに特徴的な『あの』音がこのソロにも出てくる。ジョージ・ベンソンが教則DVDで語ったところによるとジミー・スミスに影響を受けて試行錯誤を重ねてあの奏法を編み出すまでに7年掛かったという。この譜面にはコードポジションが指定されているのみで、奏法までは書き込まれていない。各自オリジナルを聞いてニュアンスをつかんでいただければ、と思う。