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2011年4月7日木曜日

イサーン語とビエンチャン語とルアンパバーン語の違い (isaan05-c987254-201104070443)

おかあつがミクシコミュニティータイ東北イサーン語研究会として著した記事を紹介します。
イサーン語とビエンチャン語とルアンパバーン語の違い (おかあつ)
2011年04月07日 04:43
「イサーン人が居た! 一発でわかった^^; 何でラオスの人がイサーンの人をすぐ見抜けるのかわかった^^; 」

僕は、ラオスのルアンパバーンに居る。 僕は、今回2011年3月8日から始まった中国旅行で、北京・天津・上海・深圳・広州・昆明と徐々に南下し、ラオスに入国し、2011年3月30日夜半過ぎ、長年の憧れの地だったラオス・ルアンパバーンに到着した。 僕は6年もウドンタニーと関わってきたが、その間一度もラオスを旅行した事が無かった。 今回ようやくラオスを旅行するという夢が叶い、こうしてルアンパバーンでくつろいでいる次第である。

今日、JOMAカフェというラオスで有名な大きな喫茶店に居て、外の席でタバコを吸っていたら、ラオ語を話すおじさんに、ラオ語を話す三輪タクシーの運転手のおじさんが、車乗っていくかと声をかけていた。普通は三輪タクシーの運転手は西洋人相手に商売をするものだが、珍しくラオの人に声を掛けている。 あれと思ったのだが、よく見たら、運転手のおじさんと、客のおじさんの話し方が、全然違う事に気がついた。 お客のおじさんの話し方は、非常に聞き覚えがあった。「そうだ」と思った。 イサーンから来た人だ、と思った。

僕は、何故そう思ったのだろうか。

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参考:ラオス語の声調一覧表

  第一 低く伸ばす
  第二 高く伸ばす
  第三 中くらいから高く上がる
  第四 低い音から高く上がる
  第五 高い音から下がる
  第六 中くらいから下がる
  第七 低い音から高い音に一気に上がる

前提知識:
ラオスではラオス語が話されている。 しかし実はラオス語は、タイ国内でも話されており、タイでは、ラオス語の事をタイの東北弁という意味を込めてイサーン語と呼んでいる。 タイ語の方言と言われているイサーン語は、実は基本的にラオス語と同じ言葉だ。しかし、タイ語とも異なるばかりか、本家のラオス語とも異なる部分が少なくない、不思議なミックス言語だ。 マイナーな感じがするが、実はタイ語よりも本家のラオス語よりも話す人が多いという隠された言葉だ。

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以下、何故僕が、同じラオ語を話す二人のうち片方の人をイサーン人だと気づくことが出来たのか、説明してみたいと思う。

★「5人(ห้าคน ha khon)」という言葉の言い方が違う。

「五」ห้า haa は 高子音字 で 第二声調記号だ。
 ビエンチャン語だと 第六 だけど、イサーンだと第一で発音する。
 バンコクだと第五だ。

「人」คน khon は 低子音字で 声調記号無しだ。
 ビエンチャンだと 第三 だけど、イサーンだと第五で発音する。
 バンコクだと第一だ。

つまり、
  ルアンパバーンの人は、ハー↓コン↑
  イサーンの人は ハー→ コン↓
  バンコクの人はハー↓コン→

上記のケースだとルアンパバーン語とビエンチャン語は同じ言い方だ。
イサーンとビエンチャンが同じでルアンパバーン語だけが違う単語も見つけた。

★ 犬 หมา maa / 馬 ม้า maa

「犬」 หมา maa は高子音字で 声調記号無し
 ビエンチャンだと 第四 ・バンコクも第四・イサーンも第四。
 ルアンパバーンは、第五。 これは非常に特徴的だと思う。

「馬」 ม้า maa
 ビエンチャンだと 第三 ・バンコクも第三・イサーンは第五。
 ルアンパバーンは 第三
 

つまりここから解ることは、イサーン語とルアンパバーン語で 犬と馬の発音が逆になっている事だ。 これは非常に興味深い。


★ 二千 สองพัน soong phan

「二」 สอง soong は高子音字で 声調記号無し
 ビエンチャンだと 第四 ・イサーンも第四・バンコクも第四。
 ルアンパバーンは、第五。 これが非常に特徴的だと思う。

「千」 พัน phan は 低子音字で 声調記号無しだ。
 ビエンチャンだと 第三 だけど、イサーンだと第五で発音する。
 ルアンパバーンは、ビエンチャンと同じ第三。
 バンコクだと第一だ。

つまり、 สองพัน soong phan
  ラオスは ソーン(グ) ↑ パン ↑
  イサーンは ソーン(グ) ↑ パン ↓
  ルアンパバーンは ソーン(グ) ↓ パン ↑

★ 以前と同じ ( คือเก่า kww kao )
「同じ」 คือ kww は 低子音字で 声調記号無しだ。
 ビエンチャンだと 第三 だけど、イサーンだと第五で発音する。
 バンコクだと第一だ。
 ルアンパバーンは恐らくビエンチャンと同じ第三。

「以前」 เก่า kao は 中子音字 第一声調記号だ。
 ビエンチャンだと 第二 イサーンも第二で発音する。
 バンコクだと第一だ。
 ルアンパバーンの人は、驚くべき事に 第五で発音する。

ラオス語は、第一声調記号がつくと必ず 第二声調になる。
ルアンパバーンだけ第五になるらしい。

つまり、คือเก่า kww kao は、
  ラオ
    ク↓カオ→
  イサーン
    ク↓カオ→
  ルアンパバーン
    ク→カオ↓

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要約:
★ ラオ語の方言による発音変化には法則がある。
「中子音字+声調記号無し」「低子音字+声調記号無し」と「低子音字+第二声調記号」に変化が現れる事が多いので、この部分を重点的にチェックすると良い。

★ イサーン語は 第六声調が無い
イサーンの人は 第六声調を発音しないで、第一声調に変わる。これは、イサーンだけのオリジナルで、ビエンチャンの人もルアンパバーンの人もきちんと 第六声調を発音する。

★イサーンの人は第三声調が好きでない
人によって(特に女性)は第三声調を発音する。 だけど普通、第三声調は全て第五声調に変わる。

★ ルアンパバーンの人は 第四声調が好きでない
ルアンパバーンの人は、第四声調を発音しない事が多い様だ。 地元の人同士で話すときは、第四声調を発音しないで、特殊な第五声調に置き換える様だ。 発音出来ない訳ではない様で、他の土地から来た人と話す時は、第四声調にして話すらしい。

第四声調は、ラオ語タイ語含め高子音字の声調記号無しにしか現れない。 ラオ語もタイ語もイサーン語も「高子音字の声調記号無し」は常に第四声調で、方言によって変化しない。(方言によってどの声調がどの声調に入れ替わるのかを感覚的に理解することは、タイ語とラオ語を混ぜるイサーン語を話す時とても重要だ。 タイ語とラオ語を混ぜて話す時、第四声調は常に変化しないので安心して発音出来る。) しかしルアンパバーン語では、このタイ語ラオ語イサーン語の聖域「高子音字の声調記号無し」に変化が出るという意味で、画期的だ。

この第五声調は、ビエンチャンやイサーンの第五声調と若干異なり、 第五の様に発音し最後を少しだけ上がる特殊な声調だ。 ラオ語上もっとも頻出表現であろう「コプチャイラーイラーイ」のラーイラーイがこの発音に当たるので、聴感上ずいぶん印象が違う。


★ ルアンパバーンの人は 第一声調記号に変化がある。
ビエンチャン語もイサーン語も、第一声調記号がつく場合は、子音字の中高低に関わらず必ず 第二声調になるのだが、ルアンパバーンだけは第五になるらしい。

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余談:
タイ語で「泣く」の事を ร้องไห้ roonghai というが、これを ラオ語では ไห้ hai という。 すると、発音上、 ให้ 「あげる」 と同じ発音になってしまう。これは僕も紛らわしいことだと思っていたのだが、この「あげる」の方の ให้ をルアンパバーンの人は、ハウと発音する、という話をした人が居た。話を耳にしただけでまだきちんと確認していないのだが、これが事実だとしたらとても興味深い事だ。

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■ 小さな声で批判

鈴木玲子先生のCDエクスプレス/ラオス語は、日常に出てくる細かな表現がきちんと解説されていて素晴らしい。ここまで細かな表現まで踏み込んで説明してる本は、日本語で書かれた本のみならず、英語/ラオ語/中国語で書かれた本を含めても滅多に見かける事はなく、貴重な本だと言える。 だけど説明されている声調は、あまり正しくないと思う。

まず鈴木先生の発音解説の一番良くないところは、タイ語の声調表記を元に説明している所だ。 これだとラオ語の方言を全部説明しきれない部分が出てくる。 また他の本で使われている六声調・七声調の発音番号表記と順番がまったく違うので、非常に混乱する。

鈴木先生の本では、低子音字+第二声調の発音が、第五声調とかかれている。 確かにイサーンやラオ南部ではこれで正しいのだけど、ルアンババーンやビエンチャンの人は第三声調で発音するので、正しくない。

鈴木先生の本では、中子音字+声調記号無しの発音が、第四声調とかかれている。 確かに人によってはそう聞こえない事もない発音をする。だけど感覚から言って、第四声調を、常に変わらない声調(又はルアンパバーンの人は常に第五と置き換える声調)という規則を感じながら話していると思うので、中子音字+声調記号無しの発音は、第四声調ではなく、第三声調だと僕には思える。

僕がドンドーク大学の先生に習った時は、この中子音字+声調記号無しを第一声調と習った。 イサーンの人は、この部分を第一声調で発音するが、ビエンチャンの人はそうではないようだ。 ひょっとしたら先生は、僕がイサーン語を勉強したがっている事を察して、第一声調と教えてくれたのかもしれない。 (でも僕が持っているラオス語のテキスト本では、第一とかかれている本が多い。)

また、欲を言えば、よく出てくる口語表現は前にあまり使わない表現は後になっていればいいのに、と思う。 一番よく使う語気助詞が一番後ろで説明されているのが、とても残念でならない。 ラオス語は語気助詞が豊富で語気助詞が持っている表現力が大きいので、語気助詞だけでかなりのことを伝える事が出来る。

鈴木先生の本については、本当にいろいろな事を思う。 いつか直接お話する機会があれば良いのにと思う。
コメント一覧
[1]   おかあつ   2011年04月07日 17:01
驚いたこと:
今しがた民宿のおばさんに聞いたら、ルアンパバーンでは ใ と ไ の 読み方が違うのだそうだ。バンコク・ビエンチャン・イサーンでは、ใ と ไ のどちらもアイと読むが、ルアンパバーンでは ไ を アイ ใ をアウと読むのそうだ。

ルアンパバーンの読み方例:
ใกล้ / 近い カウ
ไกล / 遠い カイ
ใจ 気持ち チャウ
ให้ (あげる) ハウ

以下、未確認
ใหญ่ (大きい) は ヤウ?
ใช้ (使う)は チャウ?

注1:文字はタイ語表記だが、 ほとんどの場合スペルはラオ語とタイ語で同じであり、決まった法則で読めばそのままラオ語になる。
注2:ラオ(イサーン・ビエンチャン・ルアンパバーン)では、多くの場合、二重子音の二つ目を読まない。バンコクでも実際に二つ目の子音を読む人は稀。
注3:タイ語の ญ は 大抵 ラオ語の ຍ に、タイ語の ย は 大抵 ラオ語のຢ に置き換わるが、例外も多い。
[2]   おかあつ   2011年04月07日 17:10
ใหม่ (新しい) マウ

(たった今、立ち聞きで聞こえた言葉。 聞きかじりなのではっきりしない。恐らく間違ってないと思う。)
[3]   ダメ兄貴   2011年04月07日 20:10
いつもながら勉強になります。

ウドン出身の越系イサーン人の嫁に尋ねてみます。

当方は身内が話してる言葉なんでいちいち意識していませんでした。
[4]   nhat   2011年04月11日 00:08
>ルアンパバーンでは ไ を アイ ใ をアウと読むのそうだ。

ベトナムの黒タイ族語、白タイ族語でも たぶん この区別があったと思います。ใจはチャウでした。

たぶんこっちのほうが古い発音を残していて、バンコク・ビエンチャン・イサーンでは合流して1つになってしまったんじゃないですか? でも書く時のつづりでは区別が残ってますが。
 
出展 2011年04月07日 04:43 『イサーン語とビエンチャン語とルアンパバーン語の違い』