縦乗り・横乗り共演不可能問題とは
リズム感に自信があり、絶対にグルーヴして聴者を圧倒してやる! と自信満々で演奏したつもりが、セッションに出た途端、いつもの調子が発揮できず、リズムがどんどんおかしくなって、大勢の前で大恥をかいて自信喪失。
これが横乗りの人にとっての、典型的な縦乗りとの出会いです。 そこから「リズムがおかしいのはお前だ」「いやおかしいリズムを演奏したお前がわるい!」という人間関係のいざこざが生じて、大抵は深刻なトラブルになって、人間関係はほぼ確実に決別してしまうのです。
表拍を聴いてから裏拍を演奏しようとする縦乗りの人と、裏拍を聴いてから表拍を演奏しようとする横乗りの人が同時に演奏すると、異なる拍を起点としてニュアンスを演奏することにより、テンポが一定しなくなるという深刻な問題が発生します。
テンポが無限に加速して演奏が破綻したり、あるいはテンポが無限に減速して演奏が止まってしまったりします。
横乗りの人は無意識の内に、相手が演奏する裏拍を聴いてその位置を待ってから表拍を演奏します。この表拍が早くなったり遅くなったりすることで、表情を演出しようとします ─── これが横乗りのニュアンスの世界です。
しかし縦乗りの人は無意識の内に相手が演奏する表拍を聴いて、その位置を待ってから裏拍を演奏します。裏拍の位置が早くなったり遅くなったりすることで、表情を演出しようとするのです。 ─── これが縦乗りのニュアンスの世界です。
横乗りの人は、縦乗りのこの動き回る縦乗りニュアンスのついた裏拍を聴いてから表拍を演奏しようとします。 そして縦乗りの人は、横乗りのこの動き回る横乗りニュアンスのついた表拍を聴いてから裏拍を演奏しようとします。
お互いがお互いの動き回る拍の位置を基準に演奏しようとするので、バラードを演奏するとテンポがどんどんと遅くなって止まってしまいます。 アップテンポを演奏しようとすると、テンポがどんどん早くなって演奏が破綻してしまうのです。
これが縦乗り・横乗り共演不可能問題です。 これはどちらが正しいという問題ではなく、語法の違いの問題と言えます。しかし、その時に演奏する語法をどちらにするのかを統一しない限り、共演は論理的に不可能なのです。
縦乗りという文化衝突
これから述べる見解は、私の主観的な観察から導き出した結論ですので、客観性がありません。 とはいえ、私の見解を間接的に裏付ける学術的な論文が既にいくつかあります。 日本語がどの様に成立したのかに関しては、日本の国学者の金田一春彦氏の書籍で詳細に論じられています。 金田一春彦氏の見解に対する私の解釈は、日本語とは、渡来系日本人の発音の影響を受けた在来系日本人の言語だ…というものです。 日本国内に混在する縦乗りリズムと横乗りリズムの違いは、この日本語の発音差と近い要素がある…と私は考えています。
中国の音楽を聴いてみるとすぐに気づくように、中国の音楽は日本の音楽以上に縦乗りです。そして縦乗りリズムを演奏する民謡は京都に近付くほど増えていき、京都から遠ざかるほど横乗りリズムの民謡が増えていく … これは日本語の成立経緯を考えると、とても自然なことです。
縦乗りの人は横乗りを理解する事が出来るのでしょうか。また逆に、横乗りの人は縦乗りと和解することが出来るのでしょうか ─── 縦乗りと横乗りの衝突は、正に文化衝突そのものです。
西日本と東日本は、文化圏として異なる文化圏に属しており、数百年前までは違う国として分かれて戦争までしていた時代があります。それどころか征夷大将軍と称して侵攻して地域住民の殺戮までしていた時代が日本にはあります。 https://www.city.aomori.aomori.jp/namiokaoyumi/im_n089.html
その後何百年も掛けてこの怨念を隠しおおせて丸く収めてきたのが日本という国です。 縦乗りと横乗りは、この文化衝突をある「音楽のリズムの好み」という側面から観察したものとも言えます。
これまで昔の日本人が、何百年も殺し合いをしていた程ですから、縦乗りと横乗りが和解することはそう簡単には起こらないでしょう。
横乗りの存在をしらない縦乗りの人に横乗りの人を見せても、その違いに気付かないばかりか、その違いに気付いた途端に卒倒して逆上することもありえるでしょう。 それは日本人が何百年も掛けて神社の結界に封印してきた、日本の中に潜む民族問題を解き放つ、大変に危険な行為だと言うことも出来るでしょう。
縦乗りの中に潜む横乗り、横乗りの中に潜む縦乗り ─── 日本の音楽は既に混合しており、純粋な形で残っているものはほとんどありません。
斜め乗りの時代の到来、そしてメタディビジョン・オフビートカウントについて
インターネットが普及し高度に国際化が進んだ現代では、縦乗りも激しく横乗りの影響を受けており、横乗りもまた「アニソン」「ゲームミュージック」「JPop」という形で縦乗りの強い影響を受けています。そういう現代では、純粋な横乗りも、純粋な縦乗りも存在しません。 そこには縦でもない横でもない両方の要素を兼ね備えた『斜め乗り』の音楽があります。
私岡敦は、この斜め乗りの音楽が持っているリズムを「ディビジョン次元」「サブディビジョン次元」「メタディビジョン次元」という3つの次元に分解した上で分析し、更にサブディビジョン0〜n個のずれをつけた上で声を出してカウントするという特殊なカウント法「オフビートカウント」を組み合わせることで、縦乗りのリズムも横乗りのリズムも的確に認識することが出来る画期的なメソッドを考案しました。
これにより縦乗りと横乗りが持っているリズム要素を的確に認識し、適切に使い分ける斜め乗りを身につけることが出来ます ─── 斜め乗りによって、縦乗りの良さも横乗りの良さも両立することが出来るのです。
まだ生まれたばかりのこのメタディビジョン・オフビートカウント・メソッドですが、東京のジャズシーンの中で少しずつ輪が広がりつつあります。
貴方も、このメタディビジョン・オフビートカウントを身につけて、縦乗りと横乗りの壁を突き破る調和のムーヴメントに参加してみませんか?
2024/08/19 22:20:55 に執筆しました。 岡敦。風邪で頭がぼうっとしており、意識がやや朦朧としています。まずは、ここXツイッターで公開致します。