FLAGS

MENU

NOTICE

2021年2月8日月曜日

フェザリングについて (oka01-dmqvrzowlnxqjowh)


ドラマーとフェザリングについて話し合った時、彼は「フェザリングはドラムの基礎だ」言ったので、僕は「そんな考えは大間違いだ」と言い放ちました。 彼は「フェザリングは昔から使われているテクニックでそれを否定されても困る。」といいました ─── そこではたと思ったのですが、 ひょっとして日本語で「フェザリング」と言われているものは、海外でフェザリングと言われているものと全く違うのではないか ─── 

はじめに

というのも僕は2005年に海外放浪を始めた時くらいから「リーディング日本語断食」をしていて、つまり読むものを全て日本語から英語に切り替えました。だから何かについて調べるときは日本語の一切の記事は読まず全て英語を読みます。コンピュータ関連は当然のこと音楽関連やニュースも日本語のものは基本として一切読みません。

これは非常に難しいことでした。最初の頃はどうしても日本語に頼ってしまっていましたが、少しずつ続け2010年頃にはほとんど英語の記事しか読まなくなっていました。2015年頃には息抜きで読む記事もほぼ全て英語になりました。 ─── 日本に帰国した2021年の今は社会の世相を知るためにやむを得ず日本語を読むようにもなりましたが、今でもニュースは基本的に英語のものしか読みません。

それで僕が日常的に思うことのひとつは、日本の音楽関連書籍で正しいことが書かれていることはむしろ稀だということです。日本文化は極めて語学を苦手とする文化で、外国の物をありのままに理解することがとても苦手です。だから日本社会のなかには信じられない様な酷い誤訳がそのまま放置されてその間違いに誰も気が付かず定着してしまう…ということが日常的に起こっています。

それは街中にあふれる広告のなかの英語から、山手線の車内アナウンスに至るまで日常のそこら中に「間違い英語」が転がっています。これはある程度英語がわかると強烈に気持ちが悪いことですが、気持ちが悪いと言っても誰も理解してくれません。これは僕が海外放浪から帰ってきて真っ先に感じた「逆カルチャーショック」のひとつでもありました。

なので僕は今、フェザリングについて日本語でどの様なことが語られているのか全く知りません。そこで取り敢えず今、フェザリングについて片っ端から英語で調べて気がついたことを書いてみようと思います。 

ビデオの見方

以下で紹介するビデオは、どれもほとんど有名ではありません。だけどどの人も「海外での当たり前」はクリアしています。 オフビートの使い方、8分音符オフビート/4分音符オフビートの区別とタイミングずれ、バスドラムは他の楽器よりも早めに叩いてスピード感を出す等々、誰もが当たり前のように実践しています。これらに関して、海外ではできない人はいません。日本人は相当に上級の人ですら出来ている人がいるかいないかという状態ですが、海外では基本できない人はいません。お年寄りから子供まで誰もができることです。 

※ アトランタ州のドラムアカデミーという学校の生徒が出演するビデオ。早めのバスドラムと遅めのスネア。子供でも8分裏と4分裏の区別がついている。

 

そういうオフビートが当たり前感を掴んで頂けたら幸いです。

フェザリングの語源

フェザリングのフェザーとは英語で「鳥の羽根」という意味です。

これはつまりバスドラムを『鳥の羽根で叩く様に軽く』叩くという類推から生まれた表現だと思われます。

Alvin Atkinsonにとってのフェザリング


要約:『リバース・フェザリングとはスイングを演奏する時にバスドラム音が大きくなり過ぎないようにビータをバスドラムに当てる代わりにかかとで床を蹴って音を出すことで自分自身だけが聞こえるクリック音を演奏するテクニックです。』

Ryan Showにとってのフェザリング


 要約:『フェザリングは古い伝統的な奏法のひとつで、バスドラムを使うことでベースが弾く4音よりもずっと大きい4音を得ることが可能で、しばしばベースレスの演奏で活用されます。フェザリングをする方法には2つあってペダルを踏み込む( digging off )方法とペダルを離す(coming off) 方法がある。僕は離すほうが好きです。 現在の多くの偉大なドラマーはしばしばフェザリングをしません。いずれにせよ今では大きな音でフェザリングをすることは好まれないので、大音量でフェザリングはしてはいけません。フェザリングはドラマーの隠れたテクニックでドラムス演奏全体のフィーリング向上に大きく貢献します。しかし、もし大きな音でフェザリングしたらバンドリーダは即座にやめろ!と注意するでしょう。だからどうか正しい方法でやって下さい!』  

Ralph Petersonにとってのフェザリング

ラルフピーターソンの『フェザリングについて』


要約: 『 (羽をドラムにふわりと落とす)これくらいの音でフェザリングしましょう。』『フェザリングは、かつてベースアンプがなかった時代にベース音をサポートする為にバスドラムを叩いていたことがきっかけで出来たテクニックです。だからベース音よりも大きな音でバスドラムを叩いてはいけません。』

クルーズシップドラマーの記事

グーグル翻訳

ここにフェザリングという用語は90年代に現れた表現で、50年代にバスドラムで4音を刻むスタイルが廃れたのちに90年代になって再紹介された時に生まれた表現だ、という指摘があります。フェザリング自体は古くからあるテクニックでも、フェザリングという言い方自体は実は新しい言い方なのだ、という説です。

50年代以降にロックのドラマーがフェザリングを酷使するようになってからは特にフェザリングは下品だという印象が強くなってジャズの人たちの間で敬遠されるようになった、という指摘も有ります。

『ジャズにファンク(16ビート)やラテン(13・24の分離が大きい)の影響が強くなってからはほとんど使われなくなった』という表現もあります。

Nic Marcyさんにとってのフェザリング


 

Drum Forum に書き込んだある方にとってのフェザリング

https://www.drumforum.org/threads/are-jazz-guys-feathering.115263/

I seem to remember an old Downbeat magazine in which several top drummers were interviewed all at once, in a room. I think I remember Art Blakey, Shelly Manne, and several others, and a very young Tony Williams. Part of the interview became an argument between Tony and the rest of the drummers, over the bass drum. Everyone said you had to have a (very) light 4 on the bass drum, but Tony was saying he didn't play the bass drum at all except for accents. The rest of them thought he was crazy. Now what Tony was advocating is pretty much standard.

要約:昔ダウンビートマガジンに数人のドラマー同時インタビューが載っていた時があって、確かアート・ブレイキー、シェリーマンとあと何人かいたと思うんですが、当時ものすごく若かったトニー・ウィリアムスがいました。それでインタビュー中にバスドラムを使うかどうかでトニーと他のドラマーの間で論争が起こって、他の全員がフェザリングをすると言っていたのですが、トニーは「アクセントにしか使わない」と断言して頭がおかしいと思われていました ───その後だいぶ経ちましたが今ではトニーの言っていることのほうが普通になってしまいましたよね。

これまでの記事の中にも「トニー以降フェザリングしなくなった」という話はしばしば出てきました。


何故フェザリングは弱くなったのか

僕が考えついた仮説は次の通りです:

ダンスミュージックとしてジャズが生まれた1940〜50年頃はベースアンプがなかったので人々を踊らせるためにバスドラムを4つ叩くことが常套化していたのではないでしょうか。

1950~60年頃に掛けて

  • ベースアンプが登場、フェザリングがなくてもボトムエンドを安定させることが可能に
  • よりスピード感を求めて1小節4音のスイングから、1小節8音のラテン・1小節16音のファンクが主流になった
  • 1小節8音(ラテン)/16音(ファンク)が、1小節4音のスイングにも影響を与えた

─── という状況の変化によりフェザリングをしない人が増えたのではないでしょうか。

恐らくその理由は次のようなものです。

1拍3拍と2拍4拍を別々なグループで演奏することでグルーヴさせるというアフリカ系の人々のリズムが元になってスイングが生まれましたが、60年代までに1拍3拍と2拍4拍の位置を変化させることでニュアンスをつける南米系の音楽が米国に紹介されました。

以降ラテン音楽のリズムは徐々にスイングにフィードバックされ、その結果としてファンク/R&Bなどの4音が均等ではない音楽(8ビート)が生まれ、結果としてバスドラムで4拍を均等に叩く行為が敬遠される様になったのではないでしょうか。

とはいえドラマーが基礎のリズムを取るクリックとしてバスドラムで足踏みする行為だけが残り、それが後世になって、『フェザリング(音を出さずリズムだけを感じるペダリング)』と呼ばれる様になったのではないでしょうか。


以下現代南米音楽をいくつかと、ラテンがジャズに与えた影響で僕がよく知っているものを紹介します。

ラスタスタス(サルサ・チョーク)


マドリッドでサルサチョーク(コロンビアのリズム)を教える青年


1950年代〜1960年代のスイングがラテンの4分音符(1拍3拍と2拍4拍でずらす)の影響を受けて結果として4分音符が均等ではないブギーが生まれたのではないか、というのが僕の想像です。


ウェス・モンゴメリはジャズのなかでもブギーやラテンなどのスイング(4ビート)以外のリズムも演奏するリズムが多様なミュージシャンの1人だと僕は思います。以下でいくつか紹介します。

ウェス・モンゴメリのブルーン・ブギー


ウェス・モンゴメリのカリバ


フェザリングを行う上での注意点

もしフェザリングをするなら

  • ライドより早いタイミングにずらして入れる(そうしないと自分ライドが自分のバスドラ音に妨害されレガート渋滞が起こる。早めフェザリングは上記で紹介したドラマのほぼ全員がやっています。)
  • バスドラムを叩いたらスネア等の他楽器はそこに入らない(上記ビデオRyan Show等々を参照。スネアがオンに入るとオンビートが重なってオンビートが強調されすぎます。)
  • 音を出すなら1拍3拍と2拍4拍のタイミング/アクセントを変える(平坦さを回避するためです。)
  • 音を出す必要がないなら『かかと落とし』のみにして打音は出さない

 としたほうがよいのではないか、というのが僕の提案です。

 

更新記録:

加筆訂正した。(Mon, 08 Feb 2021 13:50:02 +0900)

加筆訂正した。(Mon, 08 Feb 2021 14:42:17 +0900)

 

著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




おかあつ日記メニューバーをリセット


©2022 オカアツシ ALL RIGHT RESERVED