よく日本人はタイに来て「タイには報道の自由がない」などという。だが日本には本当に報道の自由があるのだろうか。答えは否である。それは日本の中国についての報道に最もよく現れる。中国は、本当に日本を敵視しているのだろうか。
ソンクラーン(タイ暦の新年・水掛祭り)が終わり、うだるような暑さのウドンタニー。エアコンをマックスに設定しても一向に涼しくならない強烈な猛暑の中を過ごしていたのだが、このウドンタニーという場所は極端に気温の変化が激しい場所で、雨が振るとそれまでの暑さがウソのように寒くなることがある。先日までのノリで半袖で外出すると確実に風邪を引く。
昨日夕方食事に出た時、喉が痛いなと思った。家に帰ってコーディング作業をしている時、何か頭がぼんやりするなと思ったら、寒気がしてきた。風邪をひいてしまった様だ。風邪ひきとは、さてどうしたものか。日本だと「暖かくしてよく寝る」などというが、寒さもとうに和らいで暑くなっている。特に寝不足ということもない。せいぜい市販のタイでよく用いられるパラセタモルという解熱剤を飲んでゆっくりするぐらいが関の山である。
というわけで一昨日からゆっくりしている。熱が高いらしくネットで遊ぶ気力もない。という訳でテレビを付けてみた。僕は普段テレビを見ない。テレビが嫌いなのだ。テレビを見ると、何かテレビに気持ちが乗っ取られた様になってしまう。家に帰ると先ずテレビをつけるというように、生活の中心が全てテレビになり、友達との話題はいつもテレビ。そういう状態が嫌いだという事もある。僕は、普段あまりテレビを見ない。だが、熱でうなされる僕は、なんとなく気分転換にテレビを付けてみた。それで気がついたのだが、このアパートのケーブルテレビには中国のチャンネルがあるのだ。
僕は、中国語を少しだけ話すことが出来る。2010年の年末にタイからバスに乗って雲南省に行って語学留学に行ったからだ。僕は中国語の勉強に全く不真面目であり、日本人が中国に行ってやる様な真面目な訓練を全く受けていない。だが中国語は、ラオ語やタイ語と語順がかなり似ている上、加えて読み書きは殆ど日本語と同じである。ラオ語が話せる日本人に取って中国語は、既に話せたも同然だ。(実際には僕が話せるようになった言語は、ラオ語よりも中国語の方が先なのだが、その話には非常に複雑で説明が難しい事情があるので、稿を改めよう。)
中国語は、語順がラオ語と似ている。中国語の文字は日本語とほぼ同じだ。だが中国語の子音の発音はラオ語よりずっと複雑(※)で、日本語が持っていない子音の発音もある。日本人にとって、中国語の文字は簡単に読めるのに、何を言ってるかサッパリ聞き取れないということが多いのだ。しかし、よくしたもので、中国のテレビは大抵の場合、普通話の字幕が付いている。これで理解出来なかったらバカである。
※ 子音の発音に於いて、標準の北京語とラオ語を比べると北京語の方がずっと複雑だが、中国語の雲南方言とラオ語を比べると、実はものすごく似てる。ラオ語話者が中国語を学ぶと、自然に雲南方言になる。ラオ語訛りの中国語は雲南省の人にとってとても聞き取りやすい様だ。一方、日本語の子音の発音は、ラオ語より複雑だ。日本語にはジチシ・ヅツスの違いがあり、北京語と似ている面がある。だからか、日本語訛りの中国語は、雲南の人に取ってとても聴き取り辛いものらしい。 これは、雲南省が民族史としてみてタイ文化圏であることからも、当然のことだ。
ふとテレビをつけてみたら、リーリンチェイの映画をやっていた。リーリンチェイは、ジェットリーという名前でも知られるアクションスターだ。僕がリーリンチェイが好きになったのは、小学生の時に見た「少林寺」という映画を見た時からだ。当時の僕のこの「少林寺」という映画に対する僕の熱の入れ用は、凄かった。この映画に出てくる動きを真似したり、何度も何度も繰り返し見て、映画のセリフを全て暗記したりした。
中国に来て中国語を学ぼうと思った時、まず思い出したのが、リーリンチェイの事だった。だから昆明の街中で、リーリンチェイの映画を購入しようと思ったのだが、これがなかなか売っていない。長らくあちこち探しまわっていたらリーリンチェイのDVDコンプリートセットみたいなものが売られているのを見つけたので、若干高かったのだが、これを購入した。
それで知ったのだが、リーリンチェイの出演作品というのは、日本で知られている出演作品の10倍は存在する。きちんと調べて確認していないが、殆どが日本で公開されていないのではないだろうか。このDVDコンプリートセットを見たことで、リーリンチェイが、実は今まで見たことも聞いたこともないような作品に無数に出演している事を知った。
面白いなと思ったのが、リーリンチェイが抗日映画に出演している事も多いという事だった。そして更に面白いのだが、抗日戦争に参加したことによって、逆に中国が英国に支配される足がかりを作ってしまった、という結論を持った、抗日戦争を否定するメッセージを持った映画も少なくないことだ。この様に、日本を肯定する映画に限って、日本で上映されていない。中国映画を見たことで、日本の過激なプロパガンダの方向性を思った。中国は定期的に日本を肯定するプロパガンダを流している。それだけでなく、中国人の対日感情は非常に良い。にも関わらず、日本では真逆の報道がなされている。 日本にとって中国は、敵意に満ちた極悪な存在でなければならないのだ。
話がそれたが、そんな訳で中国のテレビを見ている。だがこのテレビ、ただの中国テレビではなく、広東省のテレビらしい。一応みな普通語を話しているが、あちこちに広東テレビとかいてあるのが出てくる。
この広東テレビ、僕が中国国内で見たテレビと大分風情が違う。だいぶ面白いのだ。というのも中国で見た北京のチャンネルはどれもこれも堅苦しくギャグがつまらなかったからだ。北京のチャンネルでは、一応コメディーみたいなものも放映されているのだが「オチはどこデスカ?」みたいな物が多くて辟易した。 だけど広東のテレビは面白い。「お前…そんな頭いいのに、マジでバカなことやってくれちゃって…。」みたいな感がある。理屈抜きで面白い。
僕が居るタイは、テレビが面白いことで有名だ。タイのテレビを見て、面白くないという人は居ないだろう。コマーシャルの作りも凝っており、皮肉が効いている。かなり辛口の風刺を交えたギャグで、タブーに踏み込むこともやぶさかでない感がある。
広東のテレビはタイのテレビと似た感じがある。どんなに頭がよくても飽くまでアホの線は外さないというか。広東省のテレビには、そういう「アホの線は外さない」 的な点でタイのテレビとの共通点を感じる。
一説によると、広東語・福建語・そしてその中間にある潮州語は、実は北京語とは語族が違うらしい。広東語や福建語・潮州語は、実は発端は、ラオ語やタイ語と同じ、ダイガダイ語に端を発しているという。 僕は学者ではないので、それが正しいことかどうかはわからない。だけどこういうギャグのセンスの共通性などを見ると、それは僕には正しいことと思えるのだ。
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2012年4月23日月曜日
著者オカアツシについて
小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。
特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々
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