(メモ)タイ語について (山田 均)
2011年03月02日03:31
タイ語について (山田 均)
≪NHK出版 アジア語楽紀行 旅するタイ語 山田均監修 より引用≫
http://www.amazon.co.jp/dp/4141896128
一般的にタイ語といえば「タイ国の国語」を思い浮かべられることでしょう。タイ国の法律を記述し、新聞・雑誌・テレビなどのマスコミュニケーションで使われ、学校で教えられている言語。 この講座でとりあげて、その魅力をご紹介したいと思っているのも、タイ国の国語、とくにその母体となっているバンコクのことばです。
では、バンコクのことばとはいったいどのようなことばなのでしょうか。 バンコクは200年ほど前に、ビルマに滅ぼされたアユタヤーから逃げてきた人々によって、新たな都として建設された都市です。 ですから当初、そこで話されていたことばは現在のアユタヤーや中部タイで話されていたことばを基にしたものだったでしょう。 しかし、バンコクが建設された時代には、カンボジア人、モーン人、中国人、ラーオ人など大量の移民が労働力として流入しましたし、そうして拡大したバンコクは一種の交易センターとして、さらに多くの移住者を呼び寄せることになったわけです。 彼らがバンコクに定住するにしたがって、バンコクのことばも大きく変容して行ったことは自然なことでした。 そもそもバンコクのことばの母体となったアユタヤーのことば自体が、その400年間にも及ぶ周辺の国々との交渉・交易の歴史を通じて、さまざまな民族の言語が入り込み、混ざり合ったことばだったのです。 バンコクのことばの大きな魅力は、そうした多民族の入り混じってきた歴史的なダイナミズムを感じさせてくれる点にあると言えるでしょう。
一方、タイ語には「タイ族の言語」という広い意味もあります。タイ族はアジアに広く分布して住んでいる民族であり、それはそのままタイ語の範囲の広さをもあらわしています。タイ語はアジアを代表する大言語の一つであり、実に、東は中国広西省から西はインドのアッサム州まで、北は中国雲南省から南はマレー半島中部にまで広がって話されている言語なのです。 とくにインドシナ半島では、タイ国はもとより、隣国のラオスでも、ミャンマーのシャン州でも、ベトナムの北部でも話されています。 同じタイ国の中でも、南タイのタイ語や北タイのタイ語は、日本人が考える方言差以上の違いを含んだ別のタイ語であるといって過言ではありません。 それらのタイ語は、今となってはお互いに全部が通じるというわけではありませんが、やはりそれぞれ皆タイ語です。 そこにはそれぞれに驚くほど豊富な言い伝え、物語、掛け合い歌、仕事歌、子守歌などが残っており、それはタイ族の生きてきた世界とたどってきた道筋を表わすかけがえのないことばの財産になっています。広い意味でのタイ語の魅力は、民族の広がりと、そこに残る深い暮らしのしるしとが感じられることだといっていいのです。
タイ族はどこから来たのか、それとももとから今の場所に住んでいたのか、タイ国では昔からなかなか議論のさかんな話題です。 畢竟、タイ族とは何なのかという問題なのでしょうが、どう答えるにせよ、タイ族であるという根っこの部分にタイ語があることは確かです。 タイ語の中にタイ族の姿があるのです。
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質問:
・タイ語の方言について解説している場面で、何故シャン族(シャン語)という言葉を使い、ダイヤイ族(ダイヤイ語)という言葉を使わないのでしょうか。
・ダイルー族について触れているのに、ダイヤイ族が非常に近い民族であるという事に触れないのは何故でしょうか。
・ タイ族(泰)と ダイ族(傣) は、表記も発音も民族の実態も違うのに、どちらも「タイ」と同じ日本語表記を適用するのは何故でしょうか。
(英語での表記は Dai らしい。 またタイ標準語では、飽くまでも ไทลื้อ タイルーと呼ぶらしい。 実際のダイヤイ語でのダイの発音は ไต であるにも関わらず ท を使うところや、タイ国のタイ族を表す ไทย の様に語尾に ย をつけず、そのままで綴るところも興味深いと感じます。 ダイ族には ヤイ族 や ルー族などの様々な族がいますが、なぜルー族しか出てこないのでしょうか。)
・シャン語はタイ語の方言として紹介しているのに、北部タイ語の領域がタイ語の領域から外れてかかれているのは何故でしょうか。
参考資料
http://th.wikipedia.org/wiki/%E0%B8%8A%E0%B8%B2%E0%B8%A7%E0%B9%84%E0%B8%97%E0%B8%A5%E0%B8%B7%E0%B9%89%E0%B8%AD
http://en.wikipedia.org/wiki/Dai_people
≪NHK出版 アジア語楽紀行 旅するタイ語 山田均監修 より引用≫
http://www.amazon.co.jp/dp/4141896128
一般的にタイ語といえば「タイ国の国語」を思い浮かべられることでしょう。タイ国の法律を記述し、新聞・雑誌・テレビなどのマスコミュニケーションで使われ、学校で教えられている言語。 この講座でとりあげて、その魅力をご紹介したいと思っているのも、タイ国の国語、とくにその母体となっているバンコクのことばです。
では、バンコクのことばとはいったいどのようなことばなのでしょうか。 バンコクは200年ほど前に、ビルマに滅ぼされたアユタヤーから逃げてきた人々によって、新たな都として建設された都市です。 ですから当初、そこで話されていたことばは現在のアユタヤーや中部タイで話されていたことばを基にしたものだったでしょう。 しかし、バンコクが建設された時代には、カンボジア人、モーン人、中国人、ラーオ人など大量の移民が労働力として流入しましたし、そうして拡大したバンコクは一種の交易センターとして、さらに多くの移住者を呼び寄せることになったわけです。 彼らがバンコクに定住するにしたがって、バンコクのことばも大きく変容して行ったことは自然なことでした。 そもそもバンコクのことばの母体となったアユタヤーのことば自体が、その400年間にも及ぶ周辺の国々との交渉・交易の歴史を通じて、さまざまな民族の言語が入り込み、混ざり合ったことばだったのです。 バンコクのことばの大きな魅力は、そうした多民族の入り混じってきた歴史的なダイナミズムを感じさせてくれる点にあると言えるでしょう。
一方、タイ語には「タイ族の言語」という広い意味もあります。タイ族はアジアに広く分布して住んでいる民族であり、それはそのままタイ語の範囲の広さをもあらわしています。タイ語はアジアを代表する大言語の一つであり、実に、東は中国広西省から西はインドのアッサム州まで、北は中国雲南省から南はマレー半島中部にまで広がって話されている言語なのです。 とくにインドシナ半島では、タイ国はもとより、隣国のラオスでも、ミャンマーのシャン州でも、ベトナムの北部でも話されています。 同じタイ国の中でも、南タイのタイ語や北タイのタイ語は、日本人が考える方言差以上の違いを含んだ別のタイ語であるといって過言ではありません。 それらのタイ語は、今となってはお互いに全部が通じるというわけではありませんが、やはりそれぞれ皆タイ語です。 そこにはそれぞれに驚くほど豊富な言い伝え、物語、掛け合い歌、仕事歌、子守歌などが残っており、それはタイ族の生きてきた世界とたどってきた道筋を表わすかけがえのないことばの財産になっています。広い意味でのタイ語の魅力は、民族の広がりと、そこに残る深い暮らしのしるしとが感じられることだといっていいのです。
タイ族はどこから来たのか、それとももとから今の場所に住んでいたのか、タイ国では昔からなかなか議論のさかんな話題です。 畢竟、タイ族とは何なのかという問題なのでしょうが、どう答えるにせよ、タイ族であるという根っこの部分にタイ語があることは確かです。 タイ語の中にタイ族の姿があるのです。
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質問:
・タイ語の方言について解説している場面で、何故シャン族(シャン語)という言葉を使い、ダイヤイ族(ダイヤイ語)という言葉を使わないのでしょうか。
・ダイルー族について触れているのに、ダイヤイ族が非常に近い民族であるという事に触れないのは何故でしょうか。
・ タイ族(泰)と ダイ族(傣) は、表記も発音も民族の実態も違うのに、どちらも「タイ」と同じ日本語表記を適用するのは何故でしょうか。
(英語での表記は Dai らしい。 またタイ標準語では、飽くまでも ไทลื้อ タイルーと呼ぶらしい。 実際のダイヤイ語でのダイの発音は ไต であるにも関わらず ท を使うところや、タイ国のタイ族を表す ไทย の様に語尾に ย をつけず、そのままで綴るところも興味深いと感じます。 ダイ族には ヤイ族 や ルー族などの様々な族がいますが、なぜルー族しか出てこないのでしょうか。)
・シャン語はタイ語の方言として紹介しているのに、北部タイ語の領域がタイ語の領域から外れてかかれているのは何故でしょうか。
参考資料
http://th.wikipedia.org/wiki/%E0%B8%8A%E0%B8%B2%E0%B8%A7%E0%B9%84%E0%B8%97%E0%B8%A5%E0%B8%B7%E0%B9%89%E0%B8%AD
http://en.wikipedia.org/wiki/Dai_people
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