魔法の英才教育
2010年06月22日07:17
─── 友子さんは帰国子女ではなく、ネイティブスピーカーでもない。小6まで本格的に英語を勉強したことはなく、セサミストリートのビデオを見て楽しんでいた程度だ。印刷会社に勤める父・啓一さん(53)、専業主婦だった母・幸枝さん(49)ともに海外生活経験は皆無だ。 (AERA:娘はハーバード 母の「千冊読破」教育 より引用)
ネイティブでもなく、小6まで本格的に英語を勉強したことはなく、セサミストリートを楽しんだ程度で英語が話せるようになるということは、とても難しいことだと僕は思う。
それがどれくらい難しいことなのかといえば、テキサスの片田舎で小6まで本格的に日本語を勉強したことはなくドラえもんを楽しんだ程度で、関西弁を話し始めるアメリカ人と同じくらい奇特なことだと思う。
◇
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100628-00000002-aera-soci
娘はハーバード 母の「千冊読破」教育
AERA6 月21日(月) 12時36分配信 / 国内 - 社会
──「早期教育効果は小学生で消える」(本誌4月26日号)を読み、
「うちの子育てが参考になれば」と投書を寄せた、若菜さん一家。
早くから英語を教えたわけでも、特別な家庭教師をつけたわけでもない。
子どもの自発性を最大限尊重する幼児期の家庭教育とは──。──
埼玉県蕨市出身の若菜友子さん(22)は、この夏から米ハーバード大大学院に入学、教育学を学ぶ予定だ。ハーバードだけでなく、ペンシルベニア大、英オックスフォード大、ケンブリッジ大などからも入学許可を得た。
お茶の水女子大附属高校在学中に、オクラホマ州の高校に交換留学したのを契機に、高校卒業後はそのままアーカンソー大学に進学、心理学を学んだ。将来は、「英語を母国語としない学生向けの英語教育カリキュラムの作成などにかかわりたい」(友子さん)という。
友子さんは帰国子女ではなく、ネイティブスピーカーでもない。小6まで本格的に英語を勉強したことはなく、セサミストリートのビデオを見て楽しんでいた程度だ。印刷会社に勤める父・啓一さん(53)、専業主婦だった母・幸枝さん(49)ともに海外生活経験は皆無だ。
■ 絵本を月20冊借りる
0歳からの英語教育や、フラッシュカードを使った知能開発など、いわゆる「早期教育」とは無縁だった。幸枝さんは、家では英語はおろか、ひらがなさえも教えたことはない。
幸枝さんが重視したのは、「五感を使って親子で楽しむこと」。童謡の本があれば、一緒に歌うだけでなく、歌に合わせてピアノの鍵盤を叩き、挿絵にすべて色を塗った。一緒にスーパーに買い物に出かけるときは、道すがら、「昨日と違うもの」を見つける「今日探し」に親子で熱中した。具体的なモノの名前を覚えさせるよりも、名もない雑草のような、幼い友子さんの目に映る「新しい世界」を大切にした。
「ただ娘と一緒に遊ぶことが目的でした。私自身が、非常に楽しかったんです」(幸枝さん)
2歳になると、近所の図書館で月20冊の貸し出し限度いっぱいの絵本を借りてきて、読み聞かせをした。お気に入りは谷川俊太郎の詩をもとにした絵本『もこ もこもこ』(文研出版)。文字を追うだけではなく、登場人物になりきって、二人で歌い、体を使って演技した。
新しく生まれた弟に、幸枝さんの手がかかるようになったこともあり、幼稚園でひらがなを習った友子さんは、年長組から一人で絵本を読むようになった。埼玉大教育学部附属小学校に入学後は、講談社の「青い鳥文庫」などを次々と読破していった。
小学校時代の得意科目は国語。小3で「小説」を書き、自作の連載マンガをノート30冊分も描きためた。おとなしい性格だったが友達は多く、クラス文集の表紙を担当するなど、自分に与えられた役割をきっちりこなすタイプの児童だったようだ。
■「勉強しなさい」はなし
英語の勉強は小6から。近所の塾に通って英検5級を取り、自信がついたので、中学の授業は楽しかったという。初めて本格的に受験勉強をしたのは高校受験の時だが、「母に『勉強しなさい』と言われたことは一度もないです」(友子さん)。
子どもに手がかからなくなったので、幸枝さんは介護の勉強を始めていた。「何も言わなくても、親の勉強する姿を見て、子どもも自然と勉強することの意義を感じてくれたのだと思います」(幸枝さん)。
親子で楽しんでいるうちに、子どもがさまざまなことに興味を持ち、進んで読書や勉強に向かう──友子さんのようなケースは、多くの親にとって理想だろう。だが、子どもはなかなか親の思う通りには動いてくれないものである。
都内に住む主婦、A子さん(35)は、幼稚園年中の息子がいつまでたっても、文字に興味を示さないことに焦っている。絵本の読み聞かせは0歳からやった。色のきれいな絵本や、外国製の飛び出す絵本が大好きで、まだ口もきけないうちから目を輝かせていた。今でも「読んで」とせがみにくるが、目は絵にばかり引きつけられ、まったく字を見ていない。
「うちの子は本好きだと思っていたのに、裏切られた気分です。園の同級生はみんな字が読めるらしいのに、心配です」
学習指導要領上は、ひらがな、カタカナはすべて、小1で最初から教えることになっている。だが、静岡県内の小学校で23年間、教師の経験がある教育評論家の親野智可等さんのような教育のプロにして、こうアドバイスする。
「できれば就学前に、ひらがなの読みだけでも、できたほうがいいでしょう」
■名前や看板で覚える
もっとも、早期教育を勧めているわけではない。最近では、ひらがな、カタカナだけでなく、初歩的な漢字もマスターした状態で入学してくる子が少なくない。スラスラ長い文章を書ける同級生を見て劣等感を感じ、「国語嫌い」になる恐れがあるからだという。ただし、無理強いは逆効果だとも。
「自分の名前はどんな字を書くのかとか、身近なもの、興味のあるものから少しずつやればいい。子どもが嫌がったらすぐやめることも大切です」
親野さんは、そう提案する。
千葉県に住む30代の主婦、B子さんは、懸命に読み聞かせをしたのに、当時5歳の息子は興味を示さなかった。読み聞かせの最中にすぐ飽きて、歩き出してしまうのだ。
ところがある日、一緒に街を歩いていた息子が、カタカナで書かれた消費者金融の看板を、ちゃんと読めていると気づいた。息子はテレビCMを見て、いつのまにか覚えていたのだ。
「興味を持ったのが消費者金融のCMというのは微妙ですが、息子にとっては、私が読む絵本より面白かったんでしょうね」 とB子さんは苦笑する。息子は小3になり、好きなアニメや漫画を通じて語彙は飛躍的に増えた。国語も得意だ。
日本赤ちゃん学会理事長で、同志社大学赤ちゃん学研究センターの小西行郎教授は、
「子どもの学習に、絵本を使わなければいけないと思いこんでいる親が多すぎる」
と指摘する。現実には存在しない「親切なゾウさん」や「いつも笑っているライオンさん」よりも、街にあふれている看板や、友達の名前のような身近にあるもののほうが子どもの興味を引きやすいのだ。
■母がすべてではない
小西教授は、特に文字や音楽といった視聴覚分野だけが重視され、嗅覚、味覚、触覚などの感覚がないがしろにされている現状が怖いと言う。
「特にフラッシュカードは、りんご→ みかん→すいか、というふうに、決められた順番で、与えられたものをただ反射的に覚えていくだけのもの。でも通常は、子どもの興味はりんごの色、味、におい、といったように、一つのりんごから多方面に広がっていくものなのです」
子どもと向き合い、その興味の方向を見極めるのは、時間に余裕のないワーキングマザーにとっては大変そうだが、
「母親が向き合うのは、保育園から帰ってきてからで大丈夫」
と小西教授は言う。子どもの世界は、母親との関係だけではなく、幼稚園や保育園でも構築される。幼児期の親子関係が重要なことは言うまでもないが、それがすべてではないのだ。
前出の幸枝さんは、友子さんと過ごした濃密な時間を、かけがえのないものだと思う。読書記録や友子さんがお絵描きしたスケッチブックはすべてとってある。でも、肝心の友子さんは、就学前のことはあまりよく覚えていないという。
「それでいいんです。私のした教育は、この子にとって日常であり、自然であり、何のストレスもなかったということだから。それが私の子育てにおける、最大の成功だったと思います」
編集部 甲斐さやか
(6月 28日号)
ネイティブでもなく、小6まで本格的に英語を勉強したことはなく、セサミストリートを楽しんだ程度で英語が話せるようになるということは、とても難しいことだと僕は思う。
それがどれくらい難しいことなのかといえば、テキサスの片田舎で小6まで本格的に日本語を勉強したことはなくドラえもんを楽しんだ程度で、関西弁を話し始めるアメリカ人と同じくらい奇特なことだと思う。
◇
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100628-00000002-aera-soci
娘はハーバード 母の「千冊読破」教育
AERA6 月21日(月) 12時36分配信 / 国内 - 社会
──「早期教育効果は小学生で消える」(本誌4月26日号)を読み、
「うちの子育てが参考になれば」と投書を寄せた、若菜さん一家。
早くから英語を教えたわけでも、特別な家庭教師をつけたわけでもない。
子どもの自発性を最大限尊重する幼児期の家庭教育とは──。──
埼玉県蕨市出身の若菜友子さん(22)は、この夏から米ハーバード大大学院に入学、教育学を学ぶ予定だ。ハーバードだけでなく、ペンシルベニア大、英オックスフォード大、ケンブリッジ大などからも入学許可を得た。
お茶の水女子大附属高校在学中に、オクラホマ州の高校に交換留学したのを契機に、高校卒業後はそのままアーカンソー大学に進学、心理学を学んだ。将来は、「英語を母国語としない学生向けの英語教育カリキュラムの作成などにかかわりたい」(友子さん)という。
友子さんは帰国子女ではなく、ネイティブスピーカーでもない。小6まで本格的に英語を勉強したことはなく、セサミストリートのビデオを見て楽しんでいた程度だ。印刷会社に勤める父・啓一さん(53)、専業主婦だった母・幸枝さん(49)ともに海外生活経験は皆無だ。
■ 絵本を月20冊借りる
0歳からの英語教育や、フラッシュカードを使った知能開発など、いわゆる「早期教育」とは無縁だった。幸枝さんは、家では英語はおろか、ひらがなさえも教えたことはない。
幸枝さんが重視したのは、「五感を使って親子で楽しむこと」。童謡の本があれば、一緒に歌うだけでなく、歌に合わせてピアノの鍵盤を叩き、挿絵にすべて色を塗った。一緒にスーパーに買い物に出かけるときは、道すがら、「昨日と違うもの」を見つける「今日探し」に親子で熱中した。具体的なモノの名前を覚えさせるよりも、名もない雑草のような、幼い友子さんの目に映る「新しい世界」を大切にした。
「ただ娘と一緒に遊ぶことが目的でした。私自身が、非常に楽しかったんです」(幸枝さん)
2歳になると、近所の図書館で月20冊の貸し出し限度いっぱいの絵本を借りてきて、読み聞かせをした。お気に入りは谷川俊太郎の詩をもとにした絵本『もこ もこもこ』(文研出版)。文字を追うだけではなく、登場人物になりきって、二人で歌い、体を使って演技した。
新しく生まれた弟に、幸枝さんの手がかかるようになったこともあり、幼稚園でひらがなを習った友子さんは、年長組から一人で絵本を読むようになった。埼玉大教育学部附属小学校に入学後は、講談社の「青い鳥文庫」などを次々と読破していった。
小学校時代の得意科目は国語。小3で「小説」を書き、自作の連載マンガをノート30冊分も描きためた。おとなしい性格だったが友達は多く、クラス文集の表紙を担当するなど、自分に与えられた役割をきっちりこなすタイプの児童だったようだ。
■「勉強しなさい」はなし
英語の勉強は小6から。近所の塾に通って英検5級を取り、自信がついたので、中学の授業は楽しかったという。初めて本格的に受験勉強をしたのは高校受験の時だが、「母に『勉強しなさい』と言われたことは一度もないです」(友子さん)。
子どもに手がかからなくなったので、幸枝さんは介護の勉強を始めていた。「何も言わなくても、親の勉強する姿を見て、子どもも自然と勉強することの意義を感じてくれたのだと思います」(幸枝さん)。
親子で楽しんでいるうちに、子どもがさまざまなことに興味を持ち、進んで読書や勉強に向かう──友子さんのようなケースは、多くの親にとって理想だろう。だが、子どもはなかなか親の思う通りには動いてくれないものである。
都内に住む主婦、A子さん(35)は、幼稚園年中の息子がいつまでたっても、文字に興味を示さないことに焦っている。絵本の読み聞かせは0歳からやった。色のきれいな絵本や、外国製の飛び出す絵本が大好きで、まだ口もきけないうちから目を輝かせていた。今でも「読んで」とせがみにくるが、目は絵にばかり引きつけられ、まったく字を見ていない。
「うちの子は本好きだと思っていたのに、裏切られた気分です。園の同級生はみんな字が読めるらしいのに、心配です」
学習指導要領上は、ひらがな、カタカナはすべて、小1で最初から教えることになっている。だが、静岡県内の小学校で23年間、教師の経験がある教育評論家の親野智可等さんのような教育のプロにして、こうアドバイスする。
「できれば就学前に、ひらがなの読みだけでも、できたほうがいいでしょう」
■名前や看板で覚える
もっとも、早期教育を勧めているわけではない。最近では、ひらがな、カタカナだけでなく、初歩的な漢字もマスターした状態で入学してくる子が少なくない。スラスラ長い文章を書ける同級生を見て劣等感を感じ、「国語嫌い」になる恐れがあるからだという。ただし、無理強いは逆効果だとも。
「自分の名前はどんな字を書くのかとか、身近なもの、興味のあるものから少しずつやればいい。子どもが嫌がったらすぐやめることも大切です」
親野さんは、そう提案する。
千葉県に住む30代の主婦、B子さんは、懸命に読み聞かせをしたのに、当時5歳の息子は興味を示さなかった。読み聞かせの最中にすぐ飽きて、歩き出してしまうのだ。
ところがある日、一緒に街を歩いていた息子が、カタカナで書かれた消費者金融の看板を、ちゃんと読めていると気づいた。息子はテレビCMを見て、いつのまにか覚えていたのだ。
「興味を持ったのが消費者金融のCMというのは微妙ですが、息子にとっては、私が読む絵本より面白かったんでしょうね」 とB子さんは苦笑する。息子は小3になり、好きなアニメや漫画を通じて語彙は飛躍的に増えた。国語も得意だ。
日本赤ちゃん学会理事長で、同志社大学赤ちゃん学研究センターの小西行郎教授は、
「子どもの学習に、絵本を使わなければいけないと思いこんでいる親が多すぎる」
と指摘する。現実には存在しない「親切なゾウさん」や「いつも笑っているライオンさん」よりも、街にあふれている看板や、友達の名前のような身近にあるもののほうが子どもの興味を引きやすいのだ。
■母がすべてではない
小西教授は、特に文字や音楽といった視聴覚分野だけが重視され、嗅覚、味覚、触覚などの感覚がないがしろにされている現状が怖いと言う。
「特にフラッシュカードは、りんご→ みかん→すいか、というふうに、決められた順番で、与えられたものをただ反射的に覚えていくだけのもの。でも通常は、子どもの興味はりんごの色、味、におい、といったように、一つのりんごから多方面に広がっていくものなのです」
子どもと向き合い、その興味の方向を見極めるのは、時間に余裕のないワーキングマザーにとっては大変そうだが、
「母親が向き合うのは、保育園から帰ってきてからで大丈夫」
と小西教授は言う。子どもの世界は、母親との関係だけではなく、幼稚園や保育園でも構築される。幼児期の親子関係が重要なことは言うまでもないが、それがすべてではないのだ。
前出の幸枝さんは、友子さんと過ごした濃密な時間を、かけがえのないものだと思う。読書記録や友子さんがお絵描きしたスケッチブックはすべてとってある。でも、肝心の友子さんは、就学前のことはあまりよく覚えていないという。
「それでいいんです。私のした教育は、この子にとって日常であり、自然であり、何のストレスもなかったということだから。それが私の子育てにおける、最大の成功だったと思います」
編集部 甲斐さやか
(6月 28日号)
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