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2010年4月21日水曜日

赤シャツについて雑感 (isaan05-c987254-201004210133)

おかあつがミクシコミュニティータイ東北イサーン語研究会として著した記事を紹介します。
赤シャツについて雑感 (おかあつ)
2010年04月21日 01:33
管理人おかあつが、赤シャツについて超無責任な事を言ってみるテスト。



去る2月26日にタイの最高裁判所がタクシンの資産を不正蓄財と認定し没収命令を出したそうで、その額は436億バーツとも760億バーツとも言われている。 これをきっかけにしてタクシンは国内のタクシン支持者を煽動するべく大規模なキャンペーンを行ってる。 ちょうど2009年のソンクラーン時も同じようにタクシンが主導したデモがあったが、今回ほど大きな騒ぎにはならなかった。 今年のタクシンは違う。 今回はタクシン手加減なしで本気で怒っているようだ。



今回のタイの政変って、ヘタしたら国が割れるかもしれないような気がする。

先日電話でタイに住んでる華僑の友達に教えてもらった話だけど、今回の赤シャツのデモは、去年のソンクラーン時の赤シャツデモとは比較にならないほど大規模であるらしい。 去年の赤シャツデモの様に、パトゥーナムエリアのみ、ディンデーンのみと言うように局所的に行っているのではなく、都内各所至る所で突発的にデモを行っているらしい。 こうして集まったデモ隊が都内あちこちの道をふさいでいるせいで、都市機能が麻痺し経済的に大打撃が与えられているということだった。

商店の多くは借家で家賃を払わなければならないが、デモの影響で開店休業状態らしく、その経済的な被害は深刻らしい。 また屋台も多くは閉店しており食事が出来なくて困るという話だった。 セブンイレブンですら買い物が満足に出来ない状況らしく、事態の深刻さを感じさせる。 都内のバスもほとんどが運行取りやめになっており、運良く走っていてもコースを変更したりしているのでどこにいくかわからないという話だ。 しかも状況は日増しに悪化しているとのことだった。

状況は非常に悪く、赤シャツ内でも殺し合いが起こっているとのことだ。 赤シャツだから善良なタクシン支持派であるとは限らない。 中にはそうじゃない人もたくさん混ざっており、 事態は混沌としている。

  結構ショッキングな映像
  http://www.youtube.com/watch?v=rLJeWI_gisw

赤シャツに参加するイサーン人はある意味騙されているとも言える。 話によると、多くのイサーン人は地方から(恐らくはタクシン派の華僑が煽動を目的として用意した)無料バスで都心に出てきているが、帰りの無料バスは出ていなかったそうだ。 未だに物々交換で過ごすラオ族の人は、都会ではお金を使わないと何もできないということを知らない。 信じられないことだけど、食事するのにお金が必要だ、ということすら知らないことがある。

だから、多くの人は何も考えずに現金を持たないで都会に出て来ている。 そこで行き詰まってしまう。 (そこで初めて都会暮らしはお金が必要だということを知る。) つまり、デモに参加しない限り滞在費はおろか帰りのバス代すらも支払うことが出来ない。 つまり、デモ参加を止めるに止められないことになっているらしい。 みんな農村出身で農民だ。都会人が運営するタイ政府のトンチンカンな農政で苦しんでおり、オラが村の為にどうにかしなければ、という善意ひとつでバンコクにやってきている。 だけどこうして無料バスに乗ってバンコクに来る自体がひとつのワナだとも言えなくもない。 善意がいつのまにか政治の道具として使われ、しかも逃げられなくなってしまう結果になるからだ。

また、デモ参加時に支払われるお金の半分は偽札だ、という話すら出回ってる。 何でも例えば400バーツ貰うとその内の200バーツは偽札で使えなくて残りの200バーツだけが本物なんだそうだ。 赤シャツも(多分黄シャツも)既にお金が尽きているということを暗に感じさせる。 (デモに参加すればお金は渡すが、帰りのバス代に足りるほどは渡さないということかもしれない。)

http://dailynews.yahoo.co.jp/photograph/pickup/?1271683552

昨今の赤シャツデモのエスカレートぶりは、民族問題でもある。 これは超多民族国家であるタイという国が内在している持病のようなものなのだと思う。 ごまかす事は出来ても決して解決する事はない。 加えて、タクシンをはじめとする華僑系の政治家や、軍や警察にいるタイ族のエリート層が、これらの文化差異を逆手に取って政治利用しているので、事態は更に混沌としている。 元々方向性の違う人たちをだましだましにまとめてきたものが、破綻していると見ることも出来る。

近年タイという国自体が弱ってきている。 今回も、タイ族は反タクシン派を扇動することで王制が乗っ取られてしまう事を防ごうとしているのだろうが、おかげで国が激しく疲弊し、もはややりすぎの領域に入りつつある。

加えて、アメリカ経済が落ち込むのに引きずられてタイの経済も落ち込んでいる。 日本経済もアメリカ経済が落ち込むのに引きずられて落ち込んでいるが、タイの経済はそんな日本経済にも引きずられ、激しく落ち込んでいる。



もし国が割れるなんてことになったら、それは恐らくイサーン地方だけが分離してラオスに併合する形になるんじゃないだろうか。

イサーン地方は文化的にラオスと非常に近い。 百年くらい前までは実際ラオスだったくらいだ。(もっともタイ化して資本主義の色が濃くなったイサーンのラオ人は、ラオス国内のラオ人とは意外と仲が悪いのだけど。)

今年のラオスの勢いは凄い。ラオスには、去年からすごい勢いで中国の投資が集まっている。 アジア最貧と言われたラオス。 そのラオスに日本は何十年もかけて援助をしたけど、まったく浮かび上がらなかった。 そのラオスが中国の投資により前代未聞の経済発展を遂げている。 ラオスはもう昔のラオスではない。

この様に、ラオスは近年、中国の投資を積極的に受け入れるなどして中国と関係を非常に強くしている。 ラオスは元々共産圏で中国との関係は悪くないということもあるのだろう。

今大騒ぎしている赤シャツのデモはみんなタクシン派だ。 タクシンは元々中国人で、タイ人だけど中国名も持っている。 定期的に中国に挨拶に行っており、中国との関係は非常に緊密であるように見える。

今、アメリカは中国をわざと強化しているようなところがある。

  米国の運命を握らされる中国 (田中ニュース)
  http://www.tanakanews.com/100210china.htm
  
  行き詰まる覇権のババ抜き (田中ニュース)
  http://tanakanews.com/f0615empire.htm

ラオスはベトナム戦争以降、隠密にアメリカの影響下でやってきたと思わせるところがある。 例えば、2008年にラオスで民主クーデターが起きそうになったとき、ラオスが民主化すればそれは民主主義にとってとても良いことであるはずなのに、何故かアメリカが率先して民主クーデターを潰した感がある。 これは何らかの理由でラオスを共産主義国家として置いておいた方がいいってアメリカが判断したからじゃないだろうか。 ラオスは一応共産主義国家ということでアメリカとは敵対関係という事になっているけども、漠然とアメリカが現政権を支持していることを感じさせる。

タクシンは中国だけでなくアメリカとも強い関係を持っている。

これらを併せて考えると、タクシンが中国とアメリカの両方に接近して、タイのイサーン地方を分離してラオスに併合することでイサーンを間接的に中国の影響下に移動する方向で話を取りまとめることが、ひょっとしたら可能なのかもしれない。 これは中国アメリカ双方のメリットになる可能性がある。

普通に考えれば絶対にありえないことだけど、今、タイは極端に国力を落としているし、タイが油断しているうちにいきなり実現してしまう、などと言うことが起こらないとも言えない。



http://www.jiji.com/jc/zc?k=201004/2010041800220&rel=y&g=int

こっちのニュースによると、黄色シャツが赤シャツに対して行動を取るっていうようなことを言っているらしい。 こういう話が出てくるということは、軍や警察の同意が得られているということではないか。 ということは、これはおそらくタイの得意技、敵の力で敵を倒す「政治的背負い投げ」だと思う。つまりタイ族(タイ国軍や警察)は、客家系の影響が強い赤シャツと直接対抗することを避けつつ、元々客家と仲が悪い潮州系の黄色シャツを煽動することで、一挙に両方を「共倒れ」させる方向を狙うんじゃないだろうか。

赤シャツが道を閉鎖しているおかげで、商人のバンコク人(潮州人や潮州タイハーフ人)は家賃は払わないといけないのに、店が開けられないので、借金だけが増えていってしまう。 これは大変なダメージだ。 こうやってフラストレーションがたまっているバンコク人(黄色シャツ)は、恐らく煽動するまでもなく、自然に赤シャツと衝突する。 タイ族はそれを黙認して、黙ってみているだけで良い。



ところで、タクシンは今やビデオで王様の悪口をバンバン言っているらしい。 これはタイでは絶対にやってはいけないことだけど、 これはつまり、タクシンは、もうタイに帰る気がないっていう事なんだろう。 そうなると、タクシンは何でもやる。 どうせ逃げるなら「最後っ屁」を放っていった方がすっきりするだろう。 タイ族は、タクシンが20年かけて築き上げた財産を全部没収してしまった。 自分が作った物をメチャメチャに壊してやれ、ってタクシンじゃなくても思うだろう。

もっとも、タイっていうのは元々そういう国なんだと思う。 国を開けっ広げにして誰彼構わず入国させる。 バカを装い、法律を非常に柔軟に適用して、多少違法な事でもジャンジャンやらせる。 バカを装って外人に自由に商売をさせる。 外人はジャンジャン儲ける。で、外人が図に乗ってタイ族に食ってかかってくると、いきなり法律を厳格適用して、逮捕し、国外追放する。 そして、外人が才能を駆使し、血と汗と涙で作り上げた利権やビジネスモデル・財産・貯金等々を「法律違反」とか「脱税」「違法ビジネス」「談合」とかそういう理由をつけて、全部横取りする。

要するに、タクシンもそれをやられたんだと思う。



世界の国の関係がドラスティックに変わっていく中で、タイは極端に国力を落としている。 これまでは「大国からやってくる外人(華僑とか日本人とかイギリス人とか)に、金儲けでも放蕩でも何でも好き放題やらせて、後で適当な理由をつけて全部没収する」という方法が上手く行ったかもしれないが、その大国が没落しているのでこの手はもう使えない。 時代は変わった。 もう他力本願では居られない。昨今の政治衝突で、タイは得意の「政治的背負い投げ」をかけようとしているのかもしれないけど、気が付いたら両方共倒れ、ということにもなりかねない。



このままラオ系の反感を放置して、そこをタクシンにつけ込まれて、ラオ系だけ国から離れて分離してしまうなんていうことになれば、タイは軍力すら落とすことになるのではないか。

実は、タイの兵役はお金を払えば免除になるという話がある。 相場は三万バーツぐらいだという話だけど、三万バーツぐらいポンと出せる都心の人は兵役にはいかないだろうし、三万バーツを稼ぐのに何年もかかるイサーン人は兵隊に行った方が得策という話になるだろう。 何だか不公平な話だ。 だけど、都心の人は重い税金を払っている一方で、収入の無いイサーン人はほとんど税金を払ってない、という話もある。 こちらはこちらで、非常に大きな不公平だ。 イサーン人は少ししか税金を払っていないのに医療はバンコクの人同様に無料になる。土地を持って田畑を耕すイサーン人はバンコク人と違い家賃などの負担も無く、都心の人よりずっと暮らし向きが楽だ。 考え方によってはイサーン地方はバンコクとは比較にならないくらい有利なのだ。 義務は少ないのに保証は大きいイサーン人。 都会が稼ぎ田舎が使う。 多くのバンコク人はこのことについて大きな不満を抱いている。 これはバンコクの人がイサーンを重視するタクシンを嫌う原因にもなっているだろう。

確かに賄賂で兵役が免除になるなんて、凄い不公平だ。 だけど、タイには他にもっとたくさんの不公平があるので、多少違法なことをやることにより全体としてみてみれば釣り合っている、という面がある。 つまりイサーン人は、国の中で肉体労働担当係になっている。 つまり、タイ族はラオ族が嫌いだけど、ラオがいなくなると、それはそれで困るという面がある。 兵役に行く人が居なくなってしまう。



僕が見るかぎりタイの王様を操っているのはタイの国軍ではないかと思う。 王様が国軍を操っていると人にはアピールしつつ、実は国軍が王様を操っている。 こうすることで、タイ国軍は夫婦漫才のボケとツッコミを一人でこなしているんだと思う。

普通なら、軍が強引に政治を運営してしまうと、国軍に厳しい批判が集まってしまうけど、タイでは最終決断は王様がするということになっている。 強面の軍がボケをやってしまうと風当たりが強いけど、やさしい顔をした王様がボケをやっても国民はやさしく許してくれる。 軍に取って都合の良い決断でも、王様がしたということにすれば、怒れる人も何となく丸く収まってしまう。 みんな「王様は政治的に若干ボケが入っている」ということを暗黙に悟っているので、怒らない。 これをタイの国軍はわざとやっているんじゃないだろうか。

だからタイの国軍は、いつも念入りに王様の栄光を讃えるコマーシャルを流す。 一日一時間は必ず国王の偉業をたたえる特別番組を放送する。 各県の入り口には必ずタイの王様の(美化された)像が飾られる。 全てのお寺は国営でお坊さんは全て公務員。 お寺には必ず王様の写真が飾られている。 ポスターには王様が全てのお坊さんの頂点であると言うことがしつこいくらいにアピールされている。 こうして王様が祭り上げられているので、王様は一種のアイドルになっている。 加えてタイでは、王様についてあれこれと批判する事は法律で厳しく禁じられている。 タイでは、こうやってアメとムチで極度に美化された王様のイメージが構築されている。

しかし、その本質は国軍の操り人形なんじゃないか、と思う。

おそらくだけど、青年期をタイですごしたタクシンにも内面にそういうプロパガンダが刷り込まれているんじゃないかと思う。 タクシンが軍を批判せずに王様の批判をしたということは、タクシンも国軍の術にハマってしまっているということでもあるのかもしれない。

ところで外人がタイに来て王室不敬罪をやると、すぐ警察とか軍とかに逮捕される。で、裁判で懲役何十年とかそういう重い刑罰が下される。 で、しばらくすると、国王の恩赦が出る。 それで「国外追放」という形を取る。多分、これも「その線」を狙ってるんだと思う。腹話術の様にカミナリ親父とやさしい母をひとりで演じているんだろう。

こうやって冷徹に書いてしまえば、これだけの事かもしれないけど、タイにいくとそれがなかなか見えない。 タイの人というのは、他人の気持ちのコントロール術に非常に長けていて、人を気持ちよくさせるのがうまいので、なかなかその本質を見せてくれない。 普段は冷静で論理的な西洋人ですら、タイ人の前にはコロっと参って判断を誤ってしまう。
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出展 2010年04月21日 01:33 『赤シャツについて雑感』

著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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