NYで若いホームレスが急増。行き詰まった米国経済に大転換の足音
アメリカの景気が悪くなっている…という。本当にそうだろうか。
僕はあしかけで通算12年タイで暮らしたし、原発事故が起きた2011年から6年間は一度も日本に帰らなかった。日本にいない間は、日本についてはネットでしか知ることが出来なかった。その間、日本が疲弊して景気が悪いということは、何度も聞いた。
だが日本(都内&23区内)に帰ってきて即座に思ったのは、2011年から比べて明らかに指摘できるほどの大きな経済発展だ。2011年以前、街の変化は緩やかだった。だが日本は、2011年以降ものすごい勢いでインフラ整備に投資し、建物も新しくなり、街の雰囲気は一変していた。
人の雰囲気も変わった。僕の地元は、京浜工業地帯のどまんなかなので、50年以上住んでいる人が多く、労働者が多いが、みな引退して高齢化が激しい。だがそれを補うように大勢の新しい人が街に入ってきている。この街は東北色が非常に強く、以前は、関西人をほとんど見かけなかったのだが、関西弁をしゃべる人がとても増えたことも感じた。人が増えた。そして人が多様になった。
街の発展は、僕にとって意外だった。
なぜかといえば、日本を離れていた間、延々と東京の疲弊を耳にしていたからだ。東京は景気が悪く、人口が減少しており、公害も激しく病気が多くなっている。精神的に病んでいる人も増えている、と。
僕は、自分たちの住む街に対して批判的なことは、とても大切だと思っているので、そういう意見は貴重だと考えている。
だが今改めて思うと、ネット上で、東京の批判をしている人の大半は、東京在住ではないのだ。
原発事故のあった2011年は、日本でスマホが一気に普及した時期とかぶっているので、ネットにネット初心者の人が大勢あふれていた時期でもあった。僕も最初は気付かなかったが、彼らは東京に住んだことがない人たちだった。
東京に住んだことがない、ということ自体は、何の問題もない。
だが『稀』に、東京に住んだことがないのに、激しく東京の批判をする人がいる…ということは、思うのだ。彼らは、東京の現状を何も知らない。それなのに東京を批判する。それは一体なんなのか。
これは、嫉妬なのだ。
不景気と二極化は違う
東京の景気が悪くなった、アメリカの景気が悪くなった、と人は言う。『景気』という言葉が曖昧だが、それ以前に、景気が悪くなったことと、二極化が進んだことは、違う現象だ。景気が悪くなったという言葉は、社会全体の低迷を指しているだろう。だが二極化という言葉は、低迷が社会全体で起きている現象ではない、ということを暗喩している。ニューヨークで浮浪者が増えているという。
Homelessness in New York City is on the rise ーーー New York Post
Street Homelessness in NYC Increased by Almost 40 Percent: Report
これを見て僕は「なんと小奇麗な浮浪者なのか」と思った。東京でその辺を歩いているきちんと家のある人より、ずっと身なりが綺麗だ。少なくとも、僕よりもいいかばんを持っている。
求められる生活水準が高く、これくらいのですら生活がなりゆかないのだ。
これと同じことは、東京でも起きている。最近の東京の浮浪者は、しばしばスーツを着ている。きちんとした靴を履いて、革製のかばんを持って歩いている。景気が『本当に悪かったら』、こういう綺麗なかばんすら買うことは出来ない。本当に景気が悪かったら、こういう高級な物は売っていないからだ。
ここで起きているのは、不景気ではなく、二極化だ。
世界的な二極化
二極化が進んでいる理由は、ITやネットが普及したからではないか、と思う。コンピューターを使うことで、物やお金や情報が、国境を超えて飛び回るようになった。社会が効率的になった ─── 否、世界が効率的になった。
これによって、世界的な『一極集中』が進んでいるのではないか。
一極集中とは、国の中にある優秀な資源(物資や人材)をひとつの都市に集めて効率化をすることだ。一極集中が進めば、二極化(=貧富の差の拡大)が進む。
IT化による規模縮小と不景気は違う
中国が大国化して、世界を牛耳るようになる ─── こう言われるようになって、久しい。実際中国は、経済的にものすごく大きくなり、お金持ちになった。だが中国が世界を牛耳って世界をリードしていくようになるだろうか。
それは絶対に起こらないだろう。
僕は中国が好きだ。人間的でとても過ごしやすい国だと思う。だが仕事をする、という段になれば話は別だ。中国人の中身の伴わない点に関しては、異論がないところだ。 中国人の見栄っ張りさ・短視点的な展望のなさ・大雑把さ、怠けっぷりは、仕方のないところだ。もちろん全員ではない。だが優秀な中国人は、しばしば、中国から出て行ってしまう。中国は競争が平等でなく、本当に能力のある人が押しつぶされてしまうからだ。
日本も中国と似ているところがある。確かに、日本も平等な競争がないので、優秀な人は日本から出て行ってしまう傾向がある。だが、中国人と比べると、日本人はずっと几帳面で勤勉だ。何か一定のルールを与えると、それを確実に守り、確実に仕事をすすめるので、いい加減な人が多いアジアの中の国では唯一、日本は例外的にとても仕事がし易い国だ。
アメリカは、几帳面でも勤勉でもないかも知れないが、長期展望を設計することがものすごく巧い。この点で、世界的に抜きん出ている。
アメリカが経済的に縮小していることは間違いない。だがそれは、ITが発展して、世界をコントロールすることに必要なお金が減っているからではないだろうか。
100万人が使うSNSを運営するのに必要なお金は、そう莫大な金額ではない。ある程度速いサーバーが1000台くらいあれば、なんとかなるだろう。もし一台のサーバーを維持するのに、3000円くらいのお金が掛かるなら、かかるお金は月300万円くらいだ。月額300万円で100万人の情報を管理できるなら、安いものだ。
この延長でいけば、世界人口100億人くらいの情報を一斉に管理することに掛かるお金は、さほどでもない筈だ ─── 軍備を揃えて武力で世界中を威嚇するのに比べたら。
アメリカは、軍事費に年額60兆円くらい使っているのだそうだ。
SNSで世界から情報を集めるようにするためには、60兆円は絶対にかからない。しかもこのようなITによる諜報の効率化を勧めることで、この60兆円は、劇的に減る。
『覇権』のIT化が進む。
つまり、お金が潤沢に流れている業界がIT周辺だけになり、 軍事産業の周辺の業界にお金が流れなくなる。
それもITによる効率化で経済的な規模縮小が可能になってしまったことにより、経済規模も以前よりずっと小さくてすむ。
こうして世界的な一極集中が進んでいるのではないだろうか。
中国の大国化の嘘
米国が自滅して、中国が大国化するという説が出て久しい。僕もこの説を信じて、中国に留学までしてしまった。
だが冷静に考えてみると、この説は大きな「希望的観測」が混ざっているのではないか、と今は思う。
中国は大国化する。だが世界を牛耳るほどの先見力が中国にはない。中国が大国化する、という話は、その世界を牛耳る米国が発してるプロパガンダでもある。中国の大国化を煽って、そこで利益を出そうとしているのだ。
中国は大国化する。だが中国が大国化するという話に、付随して必ず出てくる「米国が没落する」という説は、事実ではない。没落しているのではなくて、効率化が進んで規模が縮小しているだけだ。
だが1980年代の冷戦構造で日本が高度経済成長を遂げた時に、冷や飯を食った層(恐らく近年に日本で米国批判をしている人たちに多いのではないか)は、アメリカが発する中国が大国化するというプロパガンダを、安易に信じてしまう傾向があるのではないだろうか。
中国の大国化・米国の没落は、ワンセットではない
中国は大国化するという話に必ず付け合せの様に出てくる米国没落説。僕はここに、中国人や日本人の、米国に対する嫉妬が見え隠れするのではないか、と思う。安易に米国没落説を唱える人は、東京に住んだことがない人が、東京を批判してばかりいるのと、若干似ているところがあるのではないか。
中国の大国化・米国の没落は、別々の事象だ。そして、米国は没落している訳ではなくて、効率化が進んで規模縮小が進んでいるだけだ。
終わりに
思いついたことを大雑把に書いただけなので、細かい部分がたくさん抜けているのだが、とりあえず着想だけを書ききったので、この段階で公開しようと思う。今日書ききったので、これが頭のなかで熟成したら、もう一度書こう。この文章は、僕にとっても、かなり厳しい内容だ。これを読んだら怒る人もいるかも知れない。だけど次の時代に向けて、大きな発想の転換が求められている… そんな時期ではないか…と思う。