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2017年7月17日月曜日

あたし、お月さまに行きたい! (oka01-uozgvobnlizcralq)

これから書こうと思うことはは、僕が今、ものすごく難しいな、と思っていることのひとつだ。その難しさ自体も、非常に説明が難しい。この難しさを説明するのに、ひとつの喩え話をしてみようと思う。さっき、こんな話を、ふと思いついたのだ。


─── 満月の夜・・・サッちゃんはパパと夜空を見上げた。


「パパ、お月様が綺麗だね!」

「本当だね!さっちゃん! 」

「パパ、あたし、お月さまに行きたいな…。」

  ─── ここでもし・・・パパがさっちゃんの言うことを本気にしたら、大変なことになる。

「そうか!遂にその気になったか!」

パパは、矢継ぎ早にさっちゃんにこう言った
  • 月に行くには、まず宇宙飛行士にならないといけないよ!
  • もし月に行きたいなら、まず物理学の勉強を必要! 今から頑張ろう!
  • ほら、今から東大理科一類を目指す為に、参考書を買ってきてあげたよ!
  • 宇宙船に乗るためには、高Gトレーニングが必要だね! 今から練習しようね!

    ※高Gトレーニングの様子(ビデオ)

  • パパ、裏庭に 高Gトレーニング・マシンを作っちゃった! これでいつでも訓練できるね!

    ※高G訓練マシン・この巨大なマシンが秒速2回転くらいで回る。

  • 宇宙飛行士の本場はNASA! やっぱり英語の勉強も頑張らないとね!
    来週からテキサスに引っ越しして、本格的に慣らしていこうね!
  • 「パパ、あたし辛い…」
    大丈夫!世界初女性飛行士・テレシコワも最初は辛くて挫折しそうになったけど、最後までやりぬいたんだよ! さっちゃんだってできるさ!」
  • etc...

パパがさっちゃんの言うことをいちいち本気にしたら、さっちゃんは命がいくつあっても、足りない。

 ─── ここでのパパの『正しい返答』 は、次のようなものだ。

「そうだね!パパも行ってみたいなぁ! きっと綺麗な風景だろうなぁ!」


切り替えのむずかしさ

言っている話が本気かどうかわからない時がある。いや、それが「月に行きたい」などという話であれば、間違えることはまずないが、話題によっては、それがその人にとって「月に行きたい」という非日常なのか、「コンビニに行きたい」という日常なのか、判別がつかないことがある。

単刀直入に言ってしまうと、僕が一番本気かどうかわからない話題。

 ─── それは『東京に行きたい』だ。

僕は、東京出身だ。だから僕にとって『東京に住む』というのは、『コンビニに行きたい』という程度の日常だ。

とはいえ僕は、東京から外に出て暮らした年月が10年以上ある。よって、東京外(特に西日本)から東京に入ることがどれくらい難しいのかに関しても、いろいろなことを見聞きしてきた。だから関西人にとって『東京に行く』というのが、実はかなり『月に行く』という非日常的な感覚を帯びている…ということに、薄々は気付いては、いるのだ。


だが、とはいえ僕は、子供の頃から東京におり、東京に対して非日常的な感覚を全く持っていない。それが非日常として認識している人がいる、ということは知識として持っているのだが、感覚として理解できない。

僕にとって東京は現実以外の何物でもない。実家が東京だから、東京以外のどこにも逃げ出せない。 どこかの地方に実家があれば、そこに逃げ帰ることもできただろう。だが実家が東京だから、東京が嫌になっても、帰る場所は東京しかない。

東京出身だが、中卒なので16の時から仕事をしている。だが東京で働くことが「楽勝だ」と思ったことはない。仕事は非常に厳しく、言葉遣い・礼儀作法なども知っていて当然、出来なければ直ぐに弾き飛ばされてしまう世界だ。非人間的で奴隷のような働き方をしなければならないことも、少なくなかった ─── だが悲しいかな、僕は東京者。どこにも逃げ出せない。そこで歯を食いしばって、適応するしかなかった。

だが長年にわたって揉まれていれば、嫌でも「勘どころ」というものが見えてくるものだ。常に全力でやらなくても、適度に手を抜いても、要求された仕事をすることができるようになってくる。

僕は、都内で配達の仕事を長くやっていたので、都内全域に土地勘がある。またあちこちの同好会/サークル等々に顔を出していたことがあるので、これにより都内全域に友達がいるという状況がある。都内全域に土地勘がある・・・これは、いくら東京出身でも、全員が全員持っているものではないのだ。

土地勘があれば、都内のあちこちにある街によって傾向が違うことも知っていて、どの街では何がやりやすい、何がやりにくい…といった事柄に関しても、勘がある。

僕の「日常の東京」という感覚には、そんな「東京に住むノウハウ」のようなものも含まれている。



関西人がいう:「東京に住んでみたいわぁ」

「そうか!遂にその気になったか!」

僕は、矢継ぎ早に関西人にこう言った:
  • 東京は大きく分けて5つのエリアに分かれるんだよ!
    城北・城南・城西・城東・中央(千代田区・中央区)だよ!
  • 東京に住むなら、地域別に人の雰囲気が違う感覚を大まかに掴んだほうがいいよ!
  • 都心のほうが関西人が多く、郊外にいくほど少ないよ!
  • ◯◯系の仕事をするなら◯◯区がいいよ
  • etc...
こういう話は、僕にとって完全に日常で、東京の友達ともしばしば話題になることだ。


だがどうも、どうやら、どういうわけか、しばしば、これらの返答は、あまり関西人を喜ばせないらしい…ということを、何度も繰り返し見てきたような気がするのだ。

恐らく、ここでの理想的な返答は:

「そうだね!僕も行ってみたいなぁ! きっと東京は、楽しいんだろうなぁ!」


差別なのか区別なのか

タイの農村地帯で10年間の語学武者修行をしていた時、似たような状況があった。

近所の虎おじさんがいう。
 虎「こんな物はな!バンコク(タイの首都)に行って売ったら、ムチャクチャ儲かるだろ!」

僕「そうか! じゃぁこんど一緒に行こう! 僕も案内するし!」

次の日、近くの熊おじさんがやってきた。

僕「こんど、虎おじさんとバンコク行くわ!」

熊「バカ!あいつがバンコクにたどり着けるワケないだろ!言ってるだけ!言ってるだけ!」

虎おじさんは、筋金入りのファーマーだ。バンコクに行くどころか、村から出たことすらない。だがいつも大言壮語で、スケールの大きな話をしている。だがそれは飽くまでも実行に移す気のない、定番の話題なのだ。

僕「あぁーー、そういうノリ?」

僕は東京育ちだし、言葉も丁寧だし、関東弁だ。だが僕の家柄は基本的に西日本系だ。僕の苗字は関東にほとんどいない。下の名前も関東では珍しい方だ。恐らく、四国人だった祖父(初代)の命名だからだろう。

だが、初代が西日本から上京して3代目なので東日本人の血が入っている。よって僕の風貌から僕が関西人と思う人は、絶対にいない。僕は関東らしい顔つきをしている ───  だが僕の中身は、風貌と全く一致せず、かなり大雑把というか、適当というか、裏をかく性格というか、コテコテな人間だ。

よって前述のような、大雑把な人らの感覚は、他人と思えぬほどの強い馴染みがある。


この感覚 ─── を先ほどの関西人との会話に適用すると、次のようになる。

関西「こんなのはな!東京に行って売ったら、ムチャクチャ儲かるだろ!」

僕「よしきた! じゃ俺、今度案内するわ!まぁ飲め!ハハハ!」

次の日:

友達「東京行かなくていいの?」

僕「関西人が東京にたどり着けるワケないだろ!言ってるだけ!言ってるだけ!」

確かに、これで収まりがよくなった。確かに、違和感はない。

だが、何故か、心が痛むのだ。

 ─── 果たして、こんな差別的なので、いいのだろうか。



  

人生は、全てバランスだ

人間、全てを右・左と2つに分けて、どちらか正しい方を選び続ければ万事上手く行く・・・などという単純なものではない。場合によってどちらも選べない時もある。場合によっては両方選ばなければならないこともある。状況によって右に手をかけながら左を取る・・・あるいは左を睨みながら右を取る・・・等々、相反する物事を清濁併せ呑んで、両方を成立させなければいけないことばかり ─── 人生は、全てバランスだ。


だが、西日本と東日本の違いは、とても複雑だ。僕はいつも西と東に挟まれ、どちらも取れず悩んでいる。関東と関西のどの辺りでバランスを取ればいいのか、それが僕にはわからない。



更新記録:
(Mon, 17 Jul 2017 16:54:42 +0900) 文法間違いを修正した。
(Tue, 25 Jul 2017 04:54:11 +0900) 高G訓練を高Gトレーニング に統一した。「都心のほうが関西人が多く、郊外にいくほど少ないよ!」を追加した。


著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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