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2001年1月10日水曜日

9×3+2=30? (oka01-jjtxnhoredszlarp)

そんなある日、旧友から生活のゆとりが無いことをなじられる。苦しみつつも前向きに受け止める努力をするおかあつ。そこに旧友で某レコード社からメジャーデビューしたミュージシャンB氏から連絡が…「ジョンスコのライブに飛び入りしようぜ!」。ジャズギタリストを目指していたおかあつの大ピンチ。おかあつの反応は如何に…。

※ジョンスコ=ジョン・スコフィールド。マイルス・デイビスバンドで演奏していた著名なジャズギタリスト。



2001年1月10日 5:19:55

この間、ある人に僕の部屋を見せたところ、汚いといわれた。実はその日、一日かけて大掃除をした後だったので、ショックだった。

必要な物がどこにあるかすぐにわかって考え事がしやすいんだからいいじゃない…と僕は反論した。すると、それだけでは駄目だ…との事だった。もっと、快適にしなければ駄目だ…といわれた。

僕は、僕がやりたい事(プログラムを組んだり、ギターを練習したり)はとても時間がかかるので、そんなゆとりは無いんだ…と反論した。部屋が快適ならばもっと効率よくできるかもしれないじゃないかといわれた。部屋を快適にする時間があれば、ギターの練習をしたほうが良い…と考えていたからだ。

自分の時間的限界と努力を不精物と扱われて非常に不愉快だった。その人の意見はこうだ。

部屋が快適である…という事は気持ちの豊かさの基本であって、それをないがしろにしているのは人間として危険な事であるという事だった。

危険人物扱いされて僕は非常に不愉快だった。とても不愉快だったので、色々な反論をぶつけてみたけど、どれも決め手にかけていてどうもすっきりしなかった。

それで、その日は終わったけども、その後、落ち着いてよく考えてみた。「部屋を快適にするゆとり」が僕には無い・・・というコンプレックスがかつての僕にはあった。実際たった4年前の自分を振り返って見るとそんな時間的、精神的なゆとりはまったく無いに等しかった。そういう状況下で必要なもの意外を削ぎ落としていった結果、そういう考え方を持つにいたったのだ。

しかし、今の自分をよく振り返ってみるとゆとりが無いわけでは無かった。僕の中では、ギターやパソコンをやる人間として、それらを最優先にするべきである…という考え方が根強く残っていて、「快適な部屋作り」を排除していた。

でも、僕の演奏には気持ちが無い…快適さが無い…という事は常々認識していたので、その「快適な部屋は精神的なゆとりの基本」という考え方を採用する事にした。

部屋を大改造するのには四日間かかってしまった。しかし、今までの僕には無い要素…「ああ、こんな置物が部屋にあったら快適だろうな」とか、「こんなマットを床に引いたら、きもちいいだろうな…」とか考えながら、グロッサリーをぶらぶらするのは非常に新鮮な感動があった。とても、気持ちが豊かになることに気が付いた。

今まで僕は、自分の部屋にいてかなり辛いと自分でも感じていた。しかし、お金をちょっとだけ出して買ってきた、トイレマットでさえおいてみれば、まったく部屋にいる気持ちが変わっていた。

自分のためにちょっとだけお金を払ってみるのは気分のよい事だった。(それまで、自分のためにお金を使うのは僕の中では自己投資という形以外にはありえなかったし、ちょっとした贅沢であっても絶対に自分のためにお金を払う事はしなかった。)それは僕の中では非常に革命的な事だったのかもしれない。

それで、色々変えてみた。お金をちょっとだけ出して、一人で美術館に赴いてみたり、何か小物を買ってみたりするようになった。自分の生活が見違えるように変わった。

繰り返すようだけど、ちょっとした贅沢を自分の為にすることに関して、お金を使った事がほとんど無かったのだ。服でさえ必要以上の物を買った事が無かった。

僕は考え方を改めて少しだけ自分の為に時間やお金を使うようにした。

実は、同じ理由で好きなジャズも自分で演奏する以外にライブハウスに赴く事をした事が無かったのだ。それもやめる事にした。ちょうどジョンスコフィールドが来日していたので、見に行こうかな…と思った。(ブルーノート東京なので学生割引もできるし)



今日、仕事が終わった後で、快適になった自分の部屋でホットカーペットの上にねっころがりながら、おせんべいを食べてテレビを見ていた。(実は、僕はかつて、これをやった事が無いのだ。)

すると、突然B氏から電話があった。

B氏はかつて郊外のライブハウスにレギュラー出演していて、僕もそこで1年ほど競演させてもらっていた。最近、某有名レコード会社からメジャーデビューした噂をきき、僕は非常に驚いたものだった。(かたや僕ときたら、生活やその他ゴチャゴチャに巻き込まれて音楽から遠ざかっていたのでなおさら驚いたものだ)

B氏は非常に元気そうだった。有名になったのに何も変わっていない事にもとっても驚いた。しかし、その電話の内容はさらに驚くべき物だった。

「今日、ジョンスコフィールドの演奏に飛び入りできるかもしれないから一緒に行こう」(ゲゲー!)

ジョンスコフィールドときたら、僕がジャズをはじめて以来ずっと聴いているし、コピーすらしていた。テクニックもセンスもずば抜けている僕の中のギターヒーローの一人だった。まして、自分が見に行こうとしていたライブに自分が飛び入りなど論外だった。

喜んで行きたいという事を伝えて、電話を切った。一人で行ったら死んでしまいそうだったので、取り敢えず、考えられるすべての友達のミュージシャンに電話をかけてみた。しかし、予定がつかなくて結局一人で行く事になってしまった。

久しぶりに会ったB氏は、3年前と何も変わっていなかった。再会を喜んで、観客席に入場した。中に入ると、B氏が呼んだいまをときめく若手ギタリストが勢ぞろいしていた。

ジョンスコフィールドは一時期なりを潜めていて、元気が無いな…という感じだったが、ライブの演奏はまったくそんな事を覆すようなすさまじい内容だった。ジョンスコ変態フレーズはまったく持って健在で、音楽内容はそれを上回ってさらに進歩していた。

僕は初めてジョンスコを生で見た。家でCDを聴いているの時とはまったく印象が違っていた。CDで聴いたジョンスコは平坦な印象すらあったが、実際には全く逆でものすごいダイナミクスで人々を圧倒していた。こういうことは家でCDを聴いているのでは全くわからない事だ。(この時飛び入り演奏を断る決心をした)

幸か不幸か飛び入り参加は無かった。(きっとB氏が予想していた状況と異なったんだと思う)しかし、僕にとってはとんでもない出来事であったことには変わりなかった。

演奏が終わった後でB氏が呼んだ人たちと食事に行く事になった。(よく見たら、その中の二人はお会いした事のある人だった)






B氏は僕と比べるととてもお金持ちの家柄の人だった。一緒に演奏しているとき、その事をとても悩んだ時期があった。音楽をやる上で何故こんなに状況が違うのか…音楽をやる上で努力や才能はさほど変わらないと自分では自負していたが、状況は雲泥の差だった。僕にはジャズ好きな父親も生活をバックアップしてくれる母親もいなかった。音楽をやるためにはもっとお金が必要だ…と思っていた。当時は、ようやくまともな職業にありついて生活が上向きかけていたころで、車もまだ持っていなくて、楽器もまだまともなものを持っていなかった。たった1年前は、新聞配達をしながら風呂なしトイレなしの赤塚不二夫の若いころに住んでいたようなボロアパートに住んで、定時制高校を卒業するべく奮闘していた。留学したくてあちこち走り回ってやっと得る事ができたバークリー音楽院の入学許可証も経済的な事情で断念した。


その事は後々にもかなり悩んだ。悩んだ挙句にちょっと無理をして楽器を買ったりもした。すると、とたんに周囲の評判がよくなったりして、なおさら悩んだ。結果的にどんどん潜在的にうらぶれていった。

(その後、僕を決定的にうらぶれさせる出来事があって更に悩んだ挙句に夜間大学に通う事を決心した。)

彼には内緒だったけど、そういう「確執」というか仲が悪いとかそういうことではない何と言うか…劣等感みたいなものを彼に感じていた。

実際にはこういう事は、彼には全く関係の無い事だ。だからこそ、やり場無くその感情が自分に向かってきてうらぶれてしまったのかも知れない。

その状況を「自分の能力の欠如」とどうしても切り離して考えられなかった。実際「状況からくる自分の能力の欠如」を日ごろ起こっている事柄から、確信しつつあった。そんなことが僕の中にはあったのだ。



最近そういう自分を振り切るような事件が起こった。それ以来、今はそういう考えに陥る事が無くなった。ひょっとしたら、経済的な状況が上向いたことが原因かもしれない。必要な物や(僕にとっての)ほんのちょっとした贅沢を手に入れることができるようになり、ゆとりが出たからなのかも知れない。

しかし、決定的な事件により、ある特定の意味での「僕は間違っていなかった」という確信のような物を取り戻す事ができた。

だからこそ、「快適=生活の基本」思想も受け入れられたかもしれない。まだ、よくわからないけど…。

そんななかで、みんなと食事に行った。



みんなとても感受性が高くて太刀打ちできないような感じがした。さっき見た演奏に関しても人が気が付かないような細かなニュアンスとかを捕らえて話をしているような感じだった。

また、すごく好奇心が強くて社会的な出来事…例えばテレビに出てくるタレントとか…最近起こった事件とか…もっといえば、ジャズミュージシャンとか…とても詳しかった。本当に詳しくてみんな名前とかフルネームですらすら出てくるくらいだった。頭がよくて記憶力が良い…というのもあるかもしれないけど…好奇心や感受性や…何と言うか「人間としてのパワー」が非常に強いという感じがした。



ただ、言ってみれば…こういうことはテレビを見ないとわからない事だ。僕はテレビを全く見ない。

どれくらい見ないかというと、台風がきたことを知らなくて窓を開けっ放しで出かけてしまって部屋がビシャビシャになってしまうくらい見ない。また、もっといえば、ついこの間までテレビを持っていなかった。これもまた、長い間に削ぎ落としていった物の一つだった。

今は、ボケっとテレビをみて一人笑いをしている時間を大切にしてもいい…と考えている。

しかし、やはりテレビを見ていると、仕事が終わってから、寝るまでの少ない時間内に必要なことを済ませる事ができないのもまた事実なのだ。(ちなみにこの文章を書いている今は5:30AMだ。非常にやばい)

テレビをボケーっとみてなおかつ必要なことを済ますだけのゆとりはどう考えてもないと思う。また、僕が興味を持っている事が、(質的量的という意味での)「量的」な事を多く必要とする物事が多いということにもかかわっているかも知れない。ある程度ストイックさが求められているジャンルが多いのかも知れない。

だから、「状況が違う」のだとおもう。ひょっとしたら、ここにいるみんなも口に出さないだけで本当はそうなのかもしれない。

ただ、自立して家賃衣食住保険その他生活を成り立たせた上で、音楽をやるゆとりを持つのはかなり綱渡り的な難しさがあって、やっぱりそれは変らないことなのだ。

だから、僕が同じようにやったとしてもうまくいかない。それをはっきり知っておく事が必要なのかな…と思う。



こんなクイズをやった。

30$のホテルに3人で泊まった。そこでそのホテルのオーナーに一人10$出し合ってちょうど30$はらった。ところが30$というのは実は間違いで5$だった。オーナーは5$返さなければならない。ところがオーナーはずるかったので一人あたま1$づつ返してそのままにしてしまった。という事は、一人あたり9$払ったことになる。9$x3で27$、オーナーが盗んだ2$を足すと29$になる。

1$はどこで消えてしまったんだろうか...というクイズだった。

その問題を出した人は1年位何でだか考えつづけていまだにわからない...面白いね-という話だった。

実は、この問題を聞いたときぼくはすぐに答えがわかってしまった。みんながこの問題のトリックを楽しんでいるのに答えがわかってしまうのは非常につまらないような気がした。それで、答えを言ってみたんだけど、やっぱりつまらなかった。

僕は、なんとなく人と感覚が違う事でその場の雰囲気にそぐわなくなってしまう事が多いので少し自己嫌悪を感じた。

実は、帰るときに、支払金の割り勘の計算を暗算でやってみんなから誉められた時もそういう感じを受けた。

しかし、このときは、みんなに「すごい」「暗算が速い!」と絶賛されたのでうれしかった。でも、全員で7人なのに6で割り算していたのでたくさんおつりが来た時僕の評判は再び地に落ちた...

しかし、ちょっと和んだ雰囲気に変わったので良かったかな...とも思う。



さっきの問題は面白いな...と思ったので後日よく考えてみた。

これは一人9$づつ(9$×3人+オーナーが盗んだ2$)=29$+1?という前提がそもそも違っていて本当は9$×3人+(おつり5$+オーナーが盗んだ2$)=27$というのが正しい式なのだ。

でも、僕はなんとなく腑に落ちなかった。確かに数学的に説明するとそうなんだけど...

この問題はオーナーが2$盗んだんだからつい2$を足してちょうどになる...と思ってしまうというところが面白いのだ。この問題は本当は数学の問題ではなくて心理学の問題なのだと思う。

僕は...はっきりとはわからないけど...

こういう「理論的に言えば確かに間違っているんだけど...こっちのほうが面白い...」という物を大切にしたいな...と思った。

2001-01-10 05:19:55

更新記録
公開 2013-08-21T17:39:00+09:00

著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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