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2011年1月10日月曜日

聞き違え (mixi05-u459989-201101100249)

ミクシ内で書かれた旧おかあつ日記を紹介します。
聞き違え
2011年01月10日02:49
今日は朝起きてからずっとグーグルピンイン(中国語のLinux版IMEモジュール)のデバッグをしていた。 このまま修正して図書館に行って作業を続けようと思っていたら、前国境で出会ったタイの人の友達Aさんから電話がかかってきた。 近くに居るからちょっと顔かせという話だった。 Aさんの友達がたくさん来ており、しばしおしゃべりをして帰ってきた。 こういうことがあるといつもスーパーマルチリンガル空間に引きずり込まれて非常に疲れる。 今日は中国語とタイ語と日本語と英語だった。

その後、しばらくして Aさんとその友達のBさんと食事に行った。 とてもおいしいお酒を奢ってくれておいしかった。 多分50度くらいあるお酒だけど薬草が入っている様なお酒で、コップ2杯飲んだだけで昇天する感じだった。 それでずっと中国語でおしゃべりをした。

Bさんは大理から来たという。 Bさんは宿舎のおばさんと近い話し方だけど、普通語は同じ大理出身の宿舎のおばさんよりずっと上手なので、何を言っているかずっとはっきり聞き取れる ...だけどひょっとしたら僕の听力(聴力=リスニング力)が上達してきたから、わかるようになっているのかもしれない。 帰ってから宿舎のおばさんと話したら、前よりも何を言っているか聞き取れるようになってるし、僕が言うことも前よりも通じるようになっているのを感じる。

いつも思うけど、お酒を飲むと語学力がいきなりジャンプアップする。 これって何なんだろうか。 いつも頭でっかちで「うーん、うーん」って感じで悩んでいるのだけど、お酒を飲むと、調子にのって一気に喋りまくって、気がつくと前よりも喋れるようになっている。

嬉しいようなちょっと困るような感じもする。 前イサーンでタイ語を勉強している時、バンコクに行くと結構、イサーン訛りを拾ってしまっていて、恥ずかしい思いをする。 今ではバンコク風とイサーン風とかなり使い分けられるので、多少いい。 だけど、今でも発音はよくない。 恐らく、これと同じ事が中国語にも起こると思う。

お酒を飲んでから、AさんとBさんと 学校のそばまで歩いてきてわかれた。 わかれてから、僕の大好物のプーアル茶が切れていたので買いに行った。

中国のお茶には二種類ある。 ひとつは「生茶」と言って日本の緑茶と同じようなものだ。実際中国語で「緑茶」とも言う。 もう一つは「熟茶」と言って発酵させたお茶だ。 これを「紅茶」とも言う。 つまり 生茶 = 緑茶 ・ 熟茶 = 紅茶 である。 ここまではよい。これらの 発音がややこしい。 緑茶は リューチャーと 言う。 紅茶 ホンチャーだ。 ここまではよい。 生茶は sheng cha で、熟茶は shu cha だ。普通語はそうなのだが、この発音が雲南省だと上手く通じない。 僕は中国語をCDから勉強しているが、お茶に関しては お茶屋さんでお茶屋さんから正しい発音を教えて貰ったことがあり、正しい発音をリアルで覚えることが出来た。 雲南省では 生茶をセンチャという。 そして 熟茶 は スーチャだ。 生茶の発音はまるで「煎茶」みたいだ。 熟茶は逆に「生茶(ショウチャ)」みたいな気がしてくる。 あぁややこしい。

  【チャート】
  生茶=シェンチャ=センチャ / 緑茶 =リューチャ
  熟茶=シューチャ=スーチャ / 紅茶=ホンチャ

お店に入ったら「何にしますか」と話しかけられた。 僕はカビ臭い濃いプーアル茶の熟茶が好きなので、シューチャが欲しい、と言いたかった。 だけどそこをグッとこらえて「スーチャ」下さいと、聞いたことがある方の発音で話した。 そうしたら、スコーンと一発で通じた。 お店の人は改まって「あーシューチャね」と言い直していたけど、明らかに顔が違う。 ニコニコ顔でちょっと嬉しそうな感じなのだ。

そういえば、まだ来たばかりで中国語を勉強する前の話、昆明名物の米線 ミーシアンを聞き覚えの発音で「ミーチアン下さい」って言ったら、これもスコーンと通じて、しかもお店の人がニコニコしていた事を思い出す。 その後、中国語を勉強して、ミーチアンをミーシアンと覚えなおしてからこのかた、ミーシアンが正しく出てきた試しがない。

だけど最近、どの発音とどの発音が同じ発音だと考えられているのかがだんだんと読めるようになってきたので、ノリがわかる様になってきた。

タイ語からラオ語にかけての発音の変化は、研究すると実におもしろい。 地方によって聞き間違えの傾向があって、聞きやすい方の発音で捉えて覚えてしまう。もっともタイ~ラオにいる人は、この発音の変化を当たり前の様に知っているので、言い間違えてもすぐ何を言っているのか理解できるのであまり問題はない。

タイで「スィー」 が ラオ語で「ティー」になったり、「ボー」が「コー」に変わったり、「ボ」が「モ」に変わったり「ディー」が「リー」に変わったりする。 慣れが必要だ。 この法則は非常に重要だけど、誰も教えてくれない。

日本語にもある。 日本語はもっと複雑だ。 「ない」が「ねい」に変わったり「じゃん」が「やん」に変わったり、「けど」が「けんど」に変わったりする。 いっぱいある。 これは日本人が日本語を話しているから当たり前の様に同じだと理解できるが、外国人にはなかなか理解が難しい物だ。 この聞き間違えの法則は、飽くまでも日本語話者だからその様に聞き間違えるのであって、違う国の人は絶対にそういう風には聞き間違えない。

「こんにちは」は、普通に聞いていたら絶対に kon nichi wa とは 聞き取れないだろう。 一部の西洋人には konu shi wah と聞こえたらしい。
http://www.google.com/images?um=1&hl=en&safe=off&q=konushiwah

そこには必ず聞こえた音を解釈する過程が必要で、この解釈方法が正しくないと聞いても何を言っているのか理解できない。 すべての言葉には「聞いているポイント」がある。 その聞いているポイント以外は、無意識のうちに雑音として捨てられてしまう。

日本人がアメリカ人が何を言っているのかさっぱり聞き取れないのは、日本人にとっては雑音として切り捨ててしまう音に、アメリカ人の「聞いているポイント」が来ているからだ。 そういえばビョークの Hidden Place とか聞いていると、ビョークがサビの部分の「ヒィガゥズトゥーゼヒッデーンプ レェーーーース」を歌うところで、どんなロングトーンの後でも忘れることなくしつこいくらい最後に「ス」って言っているのが聞こえる。 中国語は、末尾子音を持たないのでこれを雑音として無視してしまう。 日本語も同じだ。 タイ語も同じかもしれない。日本人の激しくかっこつけて英語の歌を歌っている様な人が、この「ス」をつけないと、激しくダサい。 激しくダサいけど、つけない人の方が圧倒的に多い。

日本人は子音をほとんど聞いていない。 タイ語もラオ語も同じだ。 英語話者は、逆に子音しか聞いてない。 だから、日本人は英語が何を言っているかさっぱり聞き取れない。

そういえば、日本語には中国語にある歯擦音がない。 中国語とタイ語とラオ語にはある。 日本語にも一応あるけど、中国語ほど歯の根元に舌をつけたりしない。 割とジュ-って感じに訛って聞こえる。 この「ジュージュ-弁」が結構特徴的な日本語訛りだと多くの外国の人からは思われている、と僕は思う。 一方、日本語には、反り舌音の「ジーチーシー」がある。 このどれもがラオ語とタイ語にはない。 雲南の人もあまり「ジーチーシー」の発音が得意でない。 全部「ズースースー」と変わってしまう。 これは結構特徴的なタイ訛り・ラオ訛りだ。 一方、日本人は中国北部の人ほど反り舌をしないので、これも恐らく訛って聞こえるんだと思う。 逆に北部中国人の人が日本語を話すと、非常に舌が反ってるので、これが中国っぽい訛りになる。

言葉によって、この音の解釈方法を、ガラッッッッと変える必要がある。 複数の言葉を同時に話す時、この頭の切り替えに非常に苦労する。 特に僕みたいにミソジ過ぎてからマルチリンガラーに華やかにデビュ~した人は、非常に苦労する。 多分だけど、この「音の解釈方法」をいかに作り上げるか、作り上げたらそれを、いかに素早く切り替えるかがポイントなんだと思う。 単語を覚えたり、文法を覚えたりするのも結構大変だけど、「音の解釈」の方が大切だと感じる。 文法の切り替えは、音の切り替えが上手く行けば、誰でも自然についてくるような気がする。



何が書きたかったんだか忘れてしまったが、まぁいいや。 日記だし。

コメント一覧
あび   2011年01月10日 05:19
「聞いているポイント」これって、ホルマントのことかな。
おかあつ   2011年01月10日 05:35
音声学とかやったことないからわからないのだけど、何を持って記号とするかが違うんだよな...

英語とかって音程には高い低いの違いくらいしかないけど、中国語って音程のあがりさがり自体に記号が割り当てられているので、何に注意して聞くかが違うんだよな...。

聞いている感覚としては、「えっ、その音の変化を聞いてるわけ?!」みたいな感じに、ものすごく意外な感じがする。

言葉の最後が「プスーーーー」っていう音があるか、無いかで全然意味が違う言葉とか。 英語の複数形とか、エッ!それが言葉だったの?!みたいなかんじでビックリする。

それを言葉だと思ってないから、ネイティブの人が「ぷすーーーーーーーーー」って思いっきりやっても、聞こえないんだよね。 聞こえないというか、あまりにも目の前にありすぎて、気がつかないというか。
おかあつ   2011年01月10日 05:44
逆にアメリカ人とか、中国語聞くと音程の上がり下がりに意味があるって思ってないから、あぁ~~~? あー↓ って思いっきりやっても、聞こえないというか、それを言葉だと認識できないんだな。

アンマ・アンナ・アンカって書いたとき、この 「ン」の発音は、日本人にとって言葉として認識していない部分なんだよな。 ところが、結構よくある言語でこのアンマ・アンナ・アンカの ンを区別するんだな。 これを前鼻音後鼻音という。

タイ語ラオ語中国語には この区別がはっきりあって、間違えると通じにくくなる。

英語にはないかって... あるんだな。これが。 king ship と kinship は違う単語だけど、日本語にするとキンシップになっちゃう。 幸運な事に英語には破裂が必ず付くので区別つきやすいけど、ケンジントンとか Kensington って 本当は ケンジングトンなんだけど、日本人には区別つかない。 日本語なまりのひとつだよね。

 
出展 2011年01月10日02:49 『聞き違え』

著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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