氏ね、ダウンロード合法化野郎
2007年12月29日22:51
ダウンロード違法化阻止 ...
最近、ネットでマルチメディアコンテンツが自由に流通するようになった。 YouTubeで Van Halen の 超お宝映像がみれたりとか Pat Metheny の 超レア演奏の映像が公開されていたりとか、 下手すると、ジャズ歴史的名盤が imeem で視聴出来るようになっていたりとか、それも全く少なくない数の名盤が無料で配布されていたりしている。 いい世の中になったものだ。 しかし、それらの多くは不法アップロードだ。
もはや、IT業界は、やりたい放題になっているような気がする。 もちろん、そういうIT業界の横暴に対抗して、著作権関連の各団体が反発を強めている。それが今のこの状況といえる。
◇
昨今、著作権保護団体が、ダウンロードを規制することにやっきになっているが、僕はダウンロードを違法化することについては正直まったく反対だ。 ユーザーの利益を何も考えていない。 老害としか言いようが無い硬直化したこの著作権業界の人たちの言う事にはつくづく辟易する。
だからと言って、僕が今のこの状況はいいことだ! なんて思っているだろうか。 そんなわけない。 絶対マズイ! 矛盾するだろうか。 そんなことはない。 これは結局、僕ら視聴者の利益にならないからだ。
著作権保護団体は非難轟々、ダウンロード違法化反対派の人たちも喧々諤々といったかんじで、言い分は色々耳にするけど、おまーら、一番大切な何かを忘れていないだろうか。 今のこの状況で一番困っているのはアーティストなのだ。
アーティストは、自分の才能を信じて人生をかけた大博打を打って世の中に作品を送り出す。 これは誰でも出来る事ではない。 長い年月も費用もかかる。 そうやって、苦労して作り上げた血と汗と涙の結晶が、YouTubeで無料で視聴されてしまうということを、快く思っているだろうか。 思っているはずが無いのだ。
最近見ていて一番腹が立ったのは、タイ語の有名先生・ポンパン先生の苦心の作、タイ語レッスンビデオが、YouTube で公開されていたことだ。 僕はバンコクで実際にポンパン先生にお会いした事がある。 パワフルな方でカリスマがあり、才能あふれる方だなという印象だった。 そんなポンパン先生が苦労して作り上げたタイ語レッスン10巻セットがYouTubeを使って無料でばら撒かれているのを見た。 ポンパン先生の顔を思い浮かべると心が痛んだ。 特にポンパン先生は自身が出版社を経営しているわけで、こういう行為は会社の存続に関わる。
こういう風な状況を野放しにしたらどうなるだろう。 そうでなくても少ないすずめの涙の様なコンテンツ製作者(アーティスト)のギャラが更に少なくなってしまう。 つまり、そうでなくてももともと厳しいアーティストの生活が、更に輪をかけて苦しくなるわけで、これでは廃業を余儀なくされるアーティストは少なくないはずだ。 作品を作るのはダーター(無料という意味のミュージシャン用語)ではないのだ。 『あたしの音楽聴きたいなら、ゲー万頂戴(※) 。 ゲー万。 貰ったらとっととソークーしてゲルニーかますわよ。 早くローフー入りてぇ。』 というワケだ。
※ ゲー万
http://www.google.co.jp/search?hl=en&q=%E3%82%B2%E3%83%BC%E4%B8%87
(他の言葉はほとんど検索結果が無い... そんなマイナーだったっけなぁ...)
そうやって生活苦からアーティストが廃業していき、音楽が夢のある魅力的なビジネスとして成立しえなくなる、音楽で生計を立てるということが全くの虚構であるという事が既成事実として白日の下にさらされてしまうような状態になってしまえば、当然アーティストを目指す人は激減する。 そうなれば、結局世の中は随分面白みがないものになりそうだ。
実はここ数十年間で上記の話はかなり現実味を増している。 90年代以降、音楽業界自体が下火だからだ。 ダウンロードが違法か合法か以前の問題として、もともと音楽で生計を立てるということ自体、成立しなくなってきているのだ。 そこには音楽の演奏がとても貴重なスキルでありえた60~70年代の幻影がある。この時代は音楽がものすごく儲かるビジネスでありえたのだ。 しかし80年代が終わり90年代のヘビメタブームが去って少子化が始まっていくという時代の変化のなかで、ミュージシャンという職業は徐々に現実性を失ってきていた。 しかし多くのアーティストは未だに、この60~70年代の甘い生活の幻影を追い続けてアーティストを目指しているのではなかろうか。
そんななかこの幻影を完全に打ち砕く事件が起こった。時代は21世紀、そこに追い討ちをかけるように現れたこのダウンロード問題だ。 これにより音楽はいっそうビジネスとしての存在位置を失わせているのではないだろうか。
行き着く先は音楽の無い世界。 あるものは、ごく確実に一般ウケを狙った平凡な音楽ばかり... 。 普段僕らが何気なくネットから著作物を自由にダウンロードしているこの行為は、こういう状況をエスカレートさせている、ということをもっと強く意識する必要が無かろうか。
◇
こういう状況を打破すべく頑張っているのが 著作権団体であるはずだった。 ところが、この著作権保護の体制は、実は既に長らく機能不全に陥っているのではないだろうか。 ミュージシャンの著作権の保護はおろか、逆にミュージシャンの健全な育成も阻んですらきたのではないだろうか、と僕は思っている。 確実に売れる無難な才能だけを掘り起こし世に送り出している業界。 その影では、鬼才・天才と呼べるような才能あふれる人達が今も苦汁を舐め続けている。 僕はこれまでそういう状況を何度も見てきた。 だからダウンロード違法化は反対だけど、それ以上に著作権保護団体の意見にも賛同できない。
インターネットはそんな隠れた天才鬼才の道を開く切り札でもある。
だからといって、僕はダウンロード反対の人たちも支持できない。 彼らは創作という行動の本質を知らなさ過ぎる。 そして、著作権保護サイドは、話にならないほど技術を知らなさ過ぎる。 どちらもレベルが低すぎる。
僕は、やはりここでも、プログラマの機能不全を感じる。 プログラマこそが、そういう人たちの間を取り持つ存在であるべきではないだろうか。 ところが、現状、多くのプログラマは技術がどう使われるのか、というビジョンが完璧に欠落している。 彼らは技術しか理解できないのだ。 僕はプログラマはもっと他の職業についてよく知るべきだと思う。 特にもっとアーティストの仕事を良く知るべきだ。
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「『ダウンロード違法化』阻止、まだチャンスある」――MIAUがシンポジウム
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071227-00000020-zdn_n-sci
12月27日13時3分配信 ITmediaニュース
「『ダウンロード違法化』阻止、まだチャンスある」――MIAUがシンポジウム
写真:ITmedia
「著作者に無断でアップロードされた動画、音楽のダウンロード」について、著作権法30条に定められた『私的使用』の範囲から外し、違法とすべき――文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会でまとまった方向性についての是非を考えるシンポジウムを、MIAU(Movements for Internet Active Users:インターネット先進ユーザーの会」)が12月26日に開いた。
【MIAUのシンポジウムの様子】
「ダウンロード違法化は、経済全体で見るとマイナスの方が大きい」「まともに執行しようとすれば、一般ユーザーのプライバシーを著しく害する恐れがある」「技術的な根拠が薄弱」――集まったパネリストからは違法化に反対する意見とその論拠が次々に出、国会での法案成立阻止に向けてロビー活動していく、という報告もあった。
ただ「違法化反対、という結論ありきではない」という。MIAU発起人でIT・音楽ジャーナリストの津田大介さんは、「『ダウンロード違法化』の問題点について、議論が尽くされていない」とし、今後は違法化賛成の立場の意見も聞きながら、十分に議論していきたいと話した。
●ファイル交換ソフトによる売り上げのマイナスは「実証されていない」
「そもそもの前提がおかしいのではないか」――上武大学教授の池田信夫さんは言う。「(ダウンロード違法化の方向で議論をまとめようとしている)文化庁は、違法コンテンツのダウンロードが日本経済にとって害がある、という前提だろうが」
「ダウンロード違法化」が主な“ターゲット”にしているのは、(1)違法着うたサイト、(2)P2Pファイル交換ソフトの2つだ。権利者団体などはこれらによって多大な経済的不利益を被っていると主張している。
池田さんは特に(2)について反論する。「ファイル交換ソフトのよる経済的な影響についての実証研究はいくつもあるが、マイナス影響があると結論づけた研究は、私が知っている限り、ない」
米国の権威ある雑誌に、ハーバードビジネススクール教授のFelix Oberholzer-Geeらが今年発表した論文では「ファイル交換ソフトによる売り上げに対する打撃と、ファイル交換で広まることによる宣伝効果はほぼ同じで、異なる場合もプラスマイナス数%の範囲にとどまる」という結果が出たという。
●「消費者の便益」が無視されている
加えて池田さんは「消費者にとっての便益がこれまでの議論からすっぽり抜け落ちている」とも指摘する。例えば、昨日見逃したテレビ番組のファイルを今日ダウンロードして見たり、どこにも売っていない過去の映像を、ファイル交換ソフトから見つけ出したり――といったことは、消費者にとってはメリットでありつつ、それによってコンテンツホルダーの売り上げが下がるわけではない。
つまり、ファイル交換ソフトによる売り上げのマイナスと、それによる宣伝効果がほぼ変わらないとするなら、消費者にとっての利益の分だけ社会全体にとってはプラスになる、ということになる。「ファイル共有は、社会全体から見ればプラスになっている蓋然(がいぜん)性が高い」(池田さん)
●著作権法が日本のネットの成長を阻害した
池田さんは「著作権法は日本のネット企業の成長を阻害してきた」と主張。ダウンロード違法化も、経済成長を阻害する政策だと批判する。「著作権法を厳密に運用しているせいで、日本には検索サーバも置けない。新しいサービスを立ち上げるのも困難だ。その一方で、Googleの時価総額20兆円。新しい価値で成長力を上げている」(池田さん)
「あえて議論をふっかけるための意見を述べると」――映画専門大学院大学助教の中川譲さんは、「1960年代の邦画は、当初無数にあった映画会社が政府の方針などで3つに統合され、体力を付けたためではないか。政府(の立法)による産業の保護にメリットもあるのではないか」と問題提起する。
池田さんは「だがその後の日本映画界はボロボロ。寡占体質で新しい人が入って来なくなったせいだ」と指摘。「新聞も1400紙あったのが現在の形に統合されて寡占体質になり、質が下がった。政府が産業を保護してうまくいくという例はほとんどない」と反論した。
●「著作権法が情報統制法になる」と小倉弁護士
弁護士の小倉秀夫さんは、「違法ダウンロードを取り締まろうとすると、一般ユーザーのプライバシーが害される」と指摘する。
文化庁のまとめた資料には「現行法のまま違法アップロードを取り締まるだけでは不十分」などとある。だが「権利者は、違法にアップロードした人(アップローダー)に対してほとんど権利行使していない」と小倉弁護士は言う。
「米国やドイツでは、権利者が違法アップローダーに対して数千・数万件単位で訴訟を起こしている。日本では報道で知る限り、1、2件しかない。Winnyの場合も、違法アップロードで逮捕された人は2人しかいない」(小倉弁護士)
加えて、正規のコンテンツが十分に提供されていないため、違法アップローダーに「正規コンテンツにないものをアップロードすべき正当性」を与えてしまっていること、公衆送信権という権利自体が、一般ユーザーをかやの外に置いて設定されたことなどを指摘。違法アップローダーに「後ろめたさ」がないと話す。
さらに「ダウンロード時のIPアドレスを確認する方法が技術的に存在しないため、違法ダウンローダーを取り締まるためには、違法ダウンロードしていそうなユーザーの家に行ってPC内のデータや操作ログを全部コピーする証拠保全手続きが必要になり、プライバシーが著しく害される」と指摘する。「権利者がそこまでする気がないと言うなら、そもそもダウンロードを違法化する意味はない」(小倉さん)
また、文化庁の提出した資料には「違法ダウンロードの立証責任は権利者にあるため、一般ユーザーが法的に不安定な立場に置かれることはない」などと書かれているが、「権利行使されるとユーザーとってつらい結果になる、という前提に文化庁も立っているということ。そういう前提で立法し、権利を創設しようとしう考え方自体が間違っている」と小倉さんは指摘する。
●「適法サイトマーク」の無意味さ
適法サイトと違法サイトは見分けるのは難しいという指摘に対して、権利者側は「適法マークを普及させ、一目で見分けられるようにする」としている。だが「マーク付きのサイト以外は違法性を疑ってかかるべし」となれば、“権利者お墨付き”サイト以外へのアクセスが減り、結果としてネットの利用が減ったり、マークのない海外のサイトを見ることの法的リスクが高まるということにもなる。
「現行の著作権法は、業者保護のための競業規制法だが、法改正後は、一般市民が知っていい情報と悪い情報を、権利者団体などにコントロールされる情報統制法に変わってしまう」(小倉さん)
池田さんも個人情報保護法を例に、違法化による萎縮効果の危険性を指摘する。
「個人情報は、企業が扱うほぼすべての情報に含まれているもの。保護法によって企業は、USBメモリの全面使用禁止や、シンクライアント端末の利用など、社内で厳重な“情報規制”を行った。(ダウンロード違法化が決まれば)コンプライアンスということで、(違法コンテンツのアップロードされたサイトにアクセスして『違法ダウンロード』する可能性を避けるため)企業内ではインターネットへのアクセス一切禁止、ということにもなりかねない」(池田さん)
慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構講師の斉藤賢爾さんも、技術者の立場から、適法サイトマークの実効性に疑問符を投げかける。
「違法サイト運営者は、適法サイトマークをコピーして自分のサイトに置くこともできるだろう。それを防ぐために電子署名で認証する――といったことになれば『コストがかかるからできない』という権利者も現れるだろう。より自由な権利者と、不自由な権利者の間で格差が生まれる」(斉藤さん)
●「ストリーミング」「ダウンロード」の区別に意味はあるか
ダウンロードを違法にする際の条件として、文化庁のまとめなどでは「ダウンロードのみで、ストリーミング視聴は含まない」とされているが、斉藤さんはこの区別も無意味だと指摘する。
「ダウンロードとストリーミングの違いは、情報の「複製先」の違いでしかなく、いくらでも組み替えられる。例えば、ダウンロード違法の法改正がなされた場合、すべてのダウンロードをストリーミングとして扱うソフトを作ることもできるだろう。だがそれが広まれば法律の解釈が『ストリーミングもダメ』というふうに変わることもあり得る」(斉藤さん)
津田さんもこの区別の実効性に疑問を呈する。「小委員会で日本映画製作者連盟の華頂尚隆委員は『YouTubeをなんとかしたい』と漏らしていた。ストリーミングを除外したダウンロード違法化では、彼らにとっては足りない。また、今回は刑事罰もないが、権利者側は刑事罰も付けてほしいと思っているかもしれない」
立法時の「ストリーミングは除外する」という文化庁の意志が、実際の法運用の段階で無視される可能性はあるだろうか。池田さんは「法律は、条文そのものはあいまいに書かれていて、政令・省令などで役所が都合がいいように解釈を変える」と指摘。小倉さんは、著作権法に貸与権が設定された当時、立法時の文化庁の意志が実務に覆された例を引く。
「レコード会社には貸与権を1年間禁止する権利を与えたが、立法時の議論では『実際には行使しないだろう』という話になっていた。確かにその議論に参加した日本レコード協会などは行使しなかったが、洋楽では1年の禁止権がまるまる行使され、レコード協会に所属しないインディーズでも行使された」(小倉さん)
●「録音・録画物に限る」ことも技術的には不可能
斉藤さんは「録音・録画物に限る」という制限も、技術的に見ると無意味だと話す。「音なのか画像なのかはデジタルデータの解釈の違いでしかない。例えば、音をデジタルデータ化して画像として再生し、耳の聞こえない人に音楽の雰囲気を楽しんでもらう場合は、録音物と言えるのか」
斉藤さんは前提として「情報は複製される(伝わる)ことによって初めて価値を生む。複製のされかたに制限をかけることは、価値の生まれ方に制限をかけること。デジタル化は複製を効率化し、価値を生まれやすくすること」と定義づけた上で、「ちょっと近視眼的すぎませんか?」と問題提起する。
「私たちは、300年先の世界も考えてものごとを決めているでしょうか。私が子どもだったころの記録は白黒写真で残っているが、今の子どもたちの記録はブログやYouTubeで残っている。そういう人たちが活躍できる道を作るべき」
●「DRMが普及し、補償金が不要になる未来」はありえるのか
文化庁は小委員会で、「コンテンツの複製回数や条件を、DRMによって完全にコントロールできれば、補償金は不要になる」という前提に立ち、「20XX年にDRMが普及すれば補償金は不要になり、私的録音録画について定めた著作権法30条も不要になる」という可能性を提示した。
この案についても疑問が噴出した。斉藤さんは「すべてのDRMは解除可能だ」と話し、「そもそも、人間が回避したいと感じる技術は使われない」と、DRMという技術そのもののあり方について疑問を投げかける。
津田さんも「現実問題として、DRMは破られる。例えば、台湾のペーパーカンパニーのようなところがDRMの規格作りに参加し、その後倒産してDRMの暗号解除法が漏れる、というケースもあると聞く。ハッキングやリバースエンジニアリングで破られることもある。Windows Media AudioのDRMも『強力で破られない』とされていたが、いとも簡単に破られた」と話す。
小倉弁護士は「著作権は死後50年続く。亡くなった権利者からどうやってDRMを発行してもらうのか。また(私的録音録画の範囲について定めた)30条1項までなくすという文化庁の考え方だと、『法が家庭に入る』ということになる。つまり裁判所が家庭に介入し、PCの使い方の開示を求めたり、ひいてはノートの書き込みを見せろと言って、子どもが描いたドラえもんの絵も著作権侵害だ、ということになる」と指摘する。
「DRMと契約でみんなが納得できる世界が来るれば、そのときに初めて移行すればいいが、『それはないな』と思う」(津田さん)
なぜこういった方針が唐突に出てきたのか。津田さんは「『補償金について抜本的に見直すように』という知的財産戦略本部の意向を反映しようと中山主査(中山信弘・東京大学教授)が苦労した結果」と分析する。
「現状では権利者・ユーザー側とも言いたいことを言うだけで妥結点が見えなかった。20XX年というSF的未来であっても、補償金がなくなるという方向で妥結するしか、『抜本的な見直し』の方法が見えなかったのだろう」(津田さん)
●文化庁が暴走している?
「文化庁が、総務省や経済産業省などの意向を無視して暴走している」と池田さんは言う。「レコード輸入権問題の際も、IPマルチキャストの扱いでも、文化庁は経済産業省など他省庁と意見が対立し、それを押し切って法改正した。現在は、総務省が放送、経済産業省が通信、というこれまでの垣根を取り払って、放送通信政策を一体化して進めていこうとしているのに、文化庁だけはその2つを切り離したまま進めようとしている文化庁にこれ以上狂った政策を進めさせていいのか」(池田さん)
ちなみに文化庁の力の源泉は「外圧」だという。「IBMが自社プログラムの特許権が切れる際に強力なロビー活動をし、プログラム著作権を認めさせたのが始まりではないか」(池田さん)
●パブリックコメントのテンプレートの是非
小委員会の中間整理に対するパブリックコメントは7500件と異例に多く集まり、うち8割の約6000通がダウンロード違法化に対する反対意見。うち7割、約4200通がMIAUなどがネットで公表したテンプレートをもとにしたものだった。
テンプレートを公表したことについて津田さんは「賛否両論は予想していたが、賛成派にもテンプレートは多かったはず。それには言及しない(文化庁著作権課の)川瀬(真)さんは、ちょっと不公平では。レコード輸入権の時も、権利者側はテンプレートで動員をかけてきた」とこぼす。
「テンプレートではない、自分の意見を寄せてくれた人も1200通もあった。MIAUの活動が、著作権問題に目を向けさせるきっかけになったのでは」(津田さん)
●「違法コピーを禁止して何が悪い」に反論するために
「ダウンロード違法化」は、ネットに詳しくない人にとっては問題点が見えにくい。「確かに、違法コピーのダウンロードを違法化するのは当然、といわれると分かりやすく、そこで思考停止してしまう。問題点が分からない、という人も多い。ダウンロード違法化の立場からも、キャッチフレーズのようなものを作って、分かりやすい発信をしていく必要があるだろう」(AV機器評論家・コラムニストの小寺信良さん)
またMIAUは「悪質な違法ダウンロードを助長する団体」と見られてしまうこともある。津田さんは「しょうがないと思う」と苦笑。小寺さんは「不買運動などで“殴り合い”をする時代ではない。例えばiTunes PlusのDRMフリー配信を利用したり、ニコニコ動画のMADがきっかけでPerfumeのCDが3000枚売れたっといったように、(著作権を保護しないことによる権利者へのメリットが分かる)事例を紹介していく必要も、方法論としてあるだろう」と話す。
今後は、MIAUの各メンバーが知り合いの国会議員などに話をするなどロビー活動を行い、国会での法改正阻止に向けて動いていく。「レコード輸入権の時は閣議決定があってから民主党が反対を始めたので結局、無理だったが、今回はまだ時間がある」(池田さん)
小倉さんはロビー活動の計画についてブログで公表しているが「年内は難しく、年明けに接触できそう」という状況という。「国会議員にアクセスある人はぜひ、訴えていってほしい」(小倉さん)
ただ、現在の国会は著作権法とはまるで関係ない問題で紛糾しており「予算案以外の法案は提出するな、と各省庁に言われているとも聞く」(津田さん)といい、そもそも法案の提出自体が行われない可能性もあるという。
●次は「ダビング10」でシンポジウム
MIAUは今後も、シンポジウムなどを積極的に開いていく計画。来年早々には中間法人を設立し、「実行力のある団体にしたい」(津田さん)
来年1月16日には、地上デジタル放送の「ダビング10」に関するシンポジウムも、都内で開く計画だ。
【関連キーワード】 違法 | 著作権
最近、ネットでマルチメディアコンテンツが自由に流通するようになった。 YouTubeで Van Halen の 超お宝映像がみれたりとか Pat Metheny の 超レア演奏の映像が公開されていたりとか、 下手すると、ジャズ歴史的名盤が imeem で視聴出来るようになっていたりとか、それも全く少なくない数の名盤が無料で配布されていたりしている。 いい世の中になったものだ。 しかし、それらの多くは不法アップロードだ。
もはや、IT業界は、やりたい放題になっているような気がする。 もちろん、そういうIT業界の横暴に対抗して、著作権関連の各団体が反発を強めている。それが今のこの状況といえる。
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昨今、著作権保護団体が、ダウンロードを規制することにやっきになっているが、僕はダウンロードを違法化することについては正直まったく反対だ。 ユーザーの利益を何も考えていない。 老害としか言いようが無い硬直化したこの著作権業界の人たちの言う事にはつくづく辟易する。
だからと言って、僕が今のこの状況はいいことだ! なんて思っているだろうか。 そんなわけない。 絶対マズイ! 矛盾するだろうか。 そんなことはない。 これは結局、僕ら視聴者の利益にならないからだ。
著作権保護団体は非難轟々、ダウンロード違法化反対派の人たちも喧々諤々といったかんじで、言い分は色々耳にするけど、おまーら、一番大切な何かを忘れていないだろうか。 今のこの状況で一番困っているのはアーティストなのだ。
アーティストは、自分の才能を信じて人生をかけた大博打を打って世の中に作品を送り出す。 これは誰でも出来る事ではない。 長い年月も費用もかかる。 そうやって、苦労して作り上げた血と汗と涙の結晶が、YouTubeで無料で視聴されてしまうということを、快く思っているだろうか。 思っているはずが無いのだ。
最近見ていて一番腹が立ったのは、タイ語の有名先生・ポンパン先生の苦心の作、タイ語レッスンビデオが、YouTube で公開されていたことだ。 僕はバンコクで実際にポンパン先生にお会いした事がある。 パワフルな方でカリスマがあり、才能あふれる方だなという印象だった。 そんなポンパン先生が苦労して作り上げたタイ語レッスン10巻セットがYouTubeを使って無料でばら撒かれているのを見た。 ポンパン先生の顔を思い浮かべると心が痛んだ。 特にポンパン先生は自身が出版社を経営しているわけで、こういう行為は会社の存続に関わる。
こういう風な状況を野放しにしたらどうなるだろう。 そうでなくても少ないすずめの涙の様なコンテンツ製作者(アーティスト)のギャラが更に少なくなってしまう。 つまり、そうでなくてももともと厳しいアーティストの生活が、更に輪をかけて苦しくなるわけで、これでは廃業を余儀なくされるアーティストは少なくないはずだ。 作品を作るのはダーター(無料という意味のミュージシャン用語)ではないのだ。 『あたしの音楽聴きたいなら、ゲー万頂戴(※) 。 ゲー万。 貰ったらとっととソークーしてゲルニーかますわよ。 早くローフー入りてぇ。』 というワケだ。
※ ゲー万
http://www.google.co.jp/search?hl=en&q=%E3%82%B2%E3%83%BC%E4%B8%87
(他の言葉はほとんど検索結果が無い... そんなマイナーだったっけなぁ...)
そうやって生活苦からアーティストが廃業していき、音楽が夢のある魅力的なビジネスとして成立しえなくなる、音楽で生計を立てるということが全くの虚構であるという事が既成事実として白日の下にさらされてしまうような状態になってしまえば、当然アーティストを目指す人は激減する。 そうなれば、結局世の中は随分面白みがないものになりそうだ。
実はここ数十年間で上記の話はかなり現実味を増している。 90年代以降、音楽業界自体が下火だからだ。 ダウンロードが違法か合法か以前の問題として、もともと音楽で生計を立てるということ自体、成立しなくなってきているのだ。 そこには音楽の演奏がとても貴重なスキルでありえた60~70年代の幻影がある。この時代は音楽がものすごく儲かるビジネスでありえたのだ。 しかし80年代が終わり90年代のヘビメタブームが去って少子化が始まっていくという時代の変化のなかで、ミュージシャンという職業は徐々に現実性を失ってきていた。 しかし多くのアーティストは未だに、この60~70年代の甘い生活の幻影を追い続けてアーティストを目指しているのではなかろうか。
そんななかこの幻影を完全に打ち砕く事件が起こった。時代は21世紀、そこに追い討ちをかけるように現れたこのダウンロード問題だ。 これにより音楽はいっそうビジネスとしての存在位置を失わせているのではないだろうか。
行き着く先は音楽の無い世界。 あるものは、ごく確実に一般ウケを狙った平凡な音楽ばかり... 。 普段僕らが何気なくネットから著作物を自由にダウンロードしているこの行為は、こういう状況をエスカレートさせている、ということをもっと強く意識する必要が無かろうか。
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こういう状況を打破すべく頑張っているのが 著作権団体であるはずだった。 ところが、この著作権保護の体制は、実は既に長らく機能不全に陥っているのではないだろうか。 ミュージシャンの著作権の保護はおろか、逆にミュージシャンの健全な育成も阻んですらきたのではないだろうか、と僕は思っている。 確実に売れる無難な才能だけを掘り起こし世に送り出している業界。 その影では、鬼才・天才と呼べるような才能あふれる人達が今も苦汁を舐め続けている。 僕はこれまでそういう状況を何度も見てきた。 だからダウンロード違法化は反対だけど、それ以上に著作権保護団体の意見にも賛同できない。
インターネットはそんな隠れた天才鬼才の道を開く切り札でもある。
だからといって、僕はダウンロード反対の人たちも支持できない。 彼らは創作という行動の本質を知らなさ過ぎる。 そして、著作権保護サイドは、話にならないほど技術を知らなさ過ぎる。 どちらもレベルが低すぎる。
僕は、やはりここでも、プログラマの機能不全を感じる。 プログラマこそが、そういう人たちの間を取り持つ存在であるべきではないだろうか。 ところが、現状、多くのプログラマは技術がどう使われるのか、というビジョンが完璧に欠落している。 彼らは技術しか理解できないのだ。 僕はプログラマはもっと他の職業についてよく知るべきだと思う。 特にもっとアーティストの仕事を良く知るべきだ。
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「『ダウンロード違法化』阻止、まだチャンスある」――MIAUがシンポジウム
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071227-00000020-zdn_n-sci
12月27日13時3分配信 ITmediaニュース
「『ダウンロード違法化』阻止、まだチャンスある」――MIAUがシンポジウム
写真:ITmedia
「著作者に無断でアップロードされた動画、音楽のダウンロード」について、著作権法30条に定められた『私的使用』の範囲から外し、違法とすべき――文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会でまとまった方向性についての是非を考えるシンポジウムを、MIAU(Movements for Internet Active Users:インターネット先進ユーザーの会」)が12月26日に開いた。
【MIAUのシンポジウムの様子】
「ダウンロード違法化は、経済全体で見るとマイナスの方が大きい」「まともに執行しようとすれば、一般ユーザーのプライバシーを著しく害する恐れがある」「技術的な根拠が薄弱」――集まったパネリストからは違法化に反対する意見とその論拠が次々に出、国会での法案成立阻止に向けてロビー活動していく、という報告もあった。
ただ「違法化反対、という結論ありきではない」という。MIAU発起人でIT・音楽ジャーナリストの津田大介さんは、「『ダウンロード違法化』の問題点について、議論が尽くされていない」とし、今後は違法化賛成の立場の意見も聞きながら、十分に議論していきたいと話した。
●ファイル交換ソフトによる売り上げのマイナスは「実証されていない」
「そもそもの前提がおかしいのではないか」――上武大学教授の池田信夫さんは言う。「(ダウンロード違法化の方向で議論をまとめようとしている)文化庁は、違法コンテンツのダウンロードが日本経済にとって害がある、という前提だろうが」
「ダウンロード違法化」が主な“ターゲット”にしているのは、(1)違法着うたサイト、(2)P2Pファイル交換ソフトの2つだ。権利者団体などはこれらによって多大な経済的不利益を被っていると主張している。
池田さんは特に(2)について反論する。「ファイル交換ソフトのよる経済的な影響についての実証研究はいくつもあるが、マイナス影響があると結論づけた研究は、私が知っている限り、ない」
米国の権威ある雑誌に、ハーバードビジネススクール教授のFelix Oberholzer-Geeらが今年発表した論文では「ファイル交換ソフトによる売り上げに対する打撃と、ファイル交換で広まることによる宣伝効果はほぼ同じで、異なる場合もプラスマイナス数%の範囲にとどまる」という結果が出たという。
●「消費者の便益」が無視されている
加えて池田さんは「消費者にとっての便益がこれまでの議論からすっぽり抜け落ちている」とも指摘する。例えば、昨日見逃したテレビ番組のファイルを今日ダウンロードして見たり、どこにも売っていない過去の映像を、ファイル交換ソフトから見つけ出したり――といったことは、消費者にとってはメリットでありつつ、それによってコンテンツホルダーの売り上げが下がるわけではない。
つまり、ファイル交換ソフトによる売り上げのマイナスと、それによる宣伝効果がほぼ変わらないとするなら、消費者にとっての利益の分だけ社会全体にとってはプラスになる、ということになる。「ファイル共有は、社会全体から見ればプラスになっている蓋然(がいぜん)性が高い」(池田さん)
●著作権法が日本のネットの成長を阻害した
池田さんは「著作権法は日本のネット企業の成長を阻害してきた」と主張。ダウンロード違法化も、経済成長を阻害する政策だと批判する。「著作権法を厳密に運用しているせいで、日本には検索サーバも置けない。新しいサービスを立ち上げるのも困難だ。その一方で、Googleの時価総額20兆円。新しい価値で成長力を上げている」(池田さん)
「あえて議論をふっかけるための意見を述べると」――映画専門大学院大学助教の中川譲さんは、「1960年代の邦画は、当初無数にあった映画会社が政府の方針などで3つに統合され、体力を付けたためではないか。政府(の立法)による産業の保護にメリットもあるのではないか」と問題提起する。
池田さんは「だがその後の日本映画界はボロボロ。寡占体質で新しい人が入って来なくなったせいだ」と指摘。「新聞も1400紙あったのが現在の形に統合されて寡占体質になり、質が下がった。政府が産業を保護してうまくいくという例はほとんどない」と反論した。
●「著作権法が情報統制法になる」と小倉弁護士
弁護士の小倉秀夫さんは、「違法ダウンロードを取り締まろうとすると、一般ユーザーのプライバシーが害される」と指摘する。
文化庁のまとめた資料には「現行法のまま違法アップロードを取り締まるだけでは不十分」などとある。だが「権利者は、違法にアップロードした人(アップローダー)に対してほとんど権利行使していない」と小倉弁護士は言う。
「米国やドイツでは、権利者が違法アップローダーに対して数千・数万件単位で訴訟を起こしている。日本では報道で知る限り、1、2件しかない。Winnyの場合も、違法アップロードで逮捕された人は2人しかいない」(小倉弁護士)
加えて、正規のコンテンツが十分に提供されていないため、違法アップローダーに「正規コンテンツにないものをアップロードすべき正当性」を与えてしまっていること、公衆送信権という権利自体が、一般ユーザーをかやの外に置いて設定されたことなどを指摘。違法アップローダーに「後ろめたさ」がないと話す。
さらに「ダウンロード時のIPアドレスを確認する方法が技術的に存在しないため、違法ダウンローダーを取り締まるためには、違法ダウンロードしていそうなユーザーの家に行ってPC内のデータや操作ログを全部コピーする証拠保全手続きが必要になり、プライバシーが著しく害される」と指摘する。「権利者がそこまでする気がないと言うなら、そもそもダウンロードを違法化する意味はない」(小倉さん)
また、文化庁の提出した資料には「違法ダウンロードの立証責任は権利者にあるため、一般ユーザーが法的に不安定な立場に置かれることはない」などと書かれているが、「権利行使されるとユーザーとってつらい結果になる、という前提に文化庁も立っているということ。そういう前提で立法し、権利を創設しようとしう考え方自体が間違っている」と小倉さんは指摘する。
●「適法サイトマーク」の無意味さ
適法サイトと違法サイトは見分けるのは難しいという指摘に対して、権利者側は「適法マークを普及させ、一目で見分けられるようにする」としている。だが「マーク付きのサイト以外は違法性を疑ってかかるべし」となれば、“権利者お墨付き”サイト以外へのアクセスが減り、結果としてネットの利用が減ったり、マークのない海外のサイトを見ることの法的リスクが高まるということにもなる。
「現行の著作権法は、業者保護のための競業規制法だが、法改正後は、一般市民が知っていい情報と悪い情報を、権利者団体などにコントロールされる情報統制法に変わってしまう」(小倉さん)
池田さんも個人情報保護法を例に、違法化による萎縮効果の危険性を指摘する。
「個人情報は、企業が扱うほぼすべての情報に含まれているもの。保護法によって企業は、USBメモリの全面使用禁止や、シンクライアント端末の利用など、社内で厳重な“情報規制”を行った。(ダウンロード違法化が決まれば)コンプライアンスということで、(違法コンテンツのアップロードされたサイトにアクセスして『違法ダウンロード』する可能性を避けるため)企業内ではインターネットへのアクセス一切禁止、ということにもなりかねない」(池田さん)
慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構講師の斉藤賢爾さんも、技術者の立場から、適法サイトマークの実効性に疑問符を投げかける。
「違法サイト運営者は、適法サイトマークをコピーして自分のサイトに置くこともできるだろう。それを防ぐために電子署名で認証する――といったことになれば『コストがかかるからできない』という権利者も現れるだろう。より自由な権利者と、不自由な権利者の間で格差が生まれる」(斉藤さん)
●「ストリーミング」「ダウンロード」の区別に意味はあるか
ダウンロードを違法にする際の条件として、文化庁のまとめなどでは「ダウンロードのみで、ストリーミング視聴は含まない」とされているが、斉藤さんはこの区別も無意味だと指摘する。
「ダウンロードとストリーミングの違いは、情報の「複製先」の違いでしかなく、いくらでも組み替えられる。例えば、ダウンロード違法の法改正がなされた場合、すべてのダウンロードをストリーミングとして扱うソフトを作ることもできるだろう。だがそれが広まれば法律の解釈が『ストリーミングもダメ』というふうに変わることもあり得る」(斉藤さん)
津田さんもこの区別の実効性に疑問を呈する。「小委員会で日本映画製作者連盟の華頂尚隆委員は『YouTubeをなんとかしたい』と漏らしていた。ストリーミングを除外したダウンロード違法化では、彼らにとっては足りない。また、今回は刑事罰もないが、権利者側は刑事罰も付けてほしいと思っているかもしれない」
立法時の「ストリーミングは除外する」という文化庁の意志が、実際の法運用の段階で無視される可能性はあるだろうか。池田さんは「法律は、条文そのものはあいまいに書かれていて、政令・省令などで役所が都合がいいように解釈を変える」と指摘。小倉さんは、著作権法に貸与権が設定された当時、立法時の文化庁の意志が実務に覆された例を引く。
「レコード会社には貸与権を1年間禁止する権利を与えたが、立法時の議論では『実際には行使しないだろう』という話になっていた。確かにその議論に参加した日本レコード協会などは行使しなかったが、洋楽では1年の禁止権がまるまる行使され、レコード協会に所属しないインディーズでも行使された」(小倉さん)
●「録音・録画物に限る」ことも技術的には不可能
斉藤さんは「録音・録画物に限る」という制限も、技術的に見ると無意味だと話す。「音なのか画像なのかはデジタルデータの解釈の違いでしかない。例えば、音をデジタルデータ化して画像として再生し、耳の聞こえない人に音楽の雰囲気を楽しんでもらう場合は、録音物と言えるのか」
斉藤さんは前提として「情報は複製される(伝わる)ことによって初めて価値を生む。複製のされかたに制限をかけることは、価値の生まれ方に制限をかけること。デジタル化は複製を効率化し、価値を生まれやすくすること」と定義づけた上で、「ちょっと近視眼的すぎませんか?」と問題提起する。
「私たちは、300年先の世界も考えてものごとを決めているでしょうか。私が子どもだったころの記録は白黒写真で残っているが、今の子どもたちの記録はブログやYouTubeで残っている。そういう人たちが活躍できる道を作るべき」
●「DRMが普及し、補償金が不要になる未来」はありえるのか
文化庁は小委員会で、「コンテンツの複製回数や条件を、DRMによって完全にコントロールできれば、補償金は不要になる」という前提に立ち、「20XX年にDRMが普及すれば補償金は不要になり、私的録音録画について定めた著作権法30条も不要になる」という可能性を提示した。
この案についても疑問が噴出した。斉藤さんは「すべてのDRMは解除可能だ」と話し、「そもそも、人間が回避したいと感じる技術は使われない」と、DRMという技術そのもののあり方について疑問を投げかける。
津田さんも「現実問題として、DRMは破られる。例えば、台湾のペーパーカンパニーのようなところがDRMの規格作りに参加し、その後倒産してDRMの暗号解除法が漏れる、というケースもあると聞く。ハッキングやリバースエンジニアリングで破られることもある。Windows Media AudioのDRMも『強力で破られない』とされていたが、いとも簡単に破られた」と話す。
小倉弁護士は「著作権は死後50年続く。亡くなった権利者からどうやってDRMを発行してもらうのか。また(私的録音録画の範囲について定めた)30条1項までなくすという文化庁の考え方だと、『法が家庭に入る』ということになる。つまり裁判所が家庭に介入し、PCの使い方の開示を求めたり、ひいてはノートの書き込みを見せろと言って、子どもが描いたドラえもんの絵も著作権侵害だ、ということになる」と指摘する。
「DRMと契約でみんなが納得できる世界が来るれば、そのときに初めて移行すればいいが、『それはないな』と思う」(津田さん)
なぜこういった方針が唐突に出てきたのか。津田さんは「『補償金について抜本的に見直すように』という知的財産戦略本部の意向を反映しようと中山主査(中山信弘・東京大学教授)が苦労した結果」と分析する。
「現状では権利者・ユーザー側とも言いたいことを言うだけで妥結点が見えなかった。20XX年というSF的未来であっても、補償金がなくなるという方向で妥結するしか、『抜本的な見直し』の方法が見えなかったのだろう」(津田さん)
●文化庁が暴走している?
「文化庁が、総務省や経済産業省などの意向を無視して暴走している」と池田さんは言う。「レコード輸入権問題の際も、IPマルチキャストの扱いでも、文化庁は経済産業省など他省庁と意見が対立し、それを押し切って法改正した。現在は、総務省が放送、経済産業省が通信、というこれまでの垣根を取り払って、放送通信政策を一体化して進めていこうとしているのに、文化庁だけはその2つを切り離したまま進めようとしている文化庁にこれ以上狂った政策を進めさせていいのか」(池田さん)
ちなみに文化庁の力の源泉は「外圧」だという。「IBMが自社プログラムの特許権が切れる際に強力なロビー活動をし、プログラム著作権を認めさせたのが始まりではないか」(池田さん)
●パブリックコメントのテンプレートの是非
小委員会の中間整理に対するパブリックコメントは7500件と異例に多く集まり、うち8割の約6000通がダウンロード違法化に対する反対意見。うち7割、約4200通がMIAUなどがネットで公表したテンプレートをもとにしたものだった。
テンプレートを公表したことについて津田さんは「賛否両論は予想していたが、賛成派にもテンプレートは多かったはず。それには言及しない(文化庁著作権課の)川瀬(真)さんは、ちょっと不公平では。レコード輸入権の時も、権利者側はテンプレートで動員をかけてきた」とこぼす。
「テンプレートではない、自分の意見を寄せてくれた人も1200通もあった。MIAUの活動が、著作権問題に目を向けさせるきっかけになったのでは」(津田さん)
●「違法コピーを禁止して何が悪い」に反論するために
「ダウンロード違法化」は、ネットに詳しくない人にとっては問題点が見えにくい。「確かに、違法コピーのダウンロードを違法化するのは当然、といわれると分かりやすく、そこで思考停止してしまう。問題点が分からない、という人も多い。ダウンロード違法化の立場からも、キャッチフレーズのようなものを作って、分かりやすい発信をしていく必要があるだろう」(AV機器評論家・コラムニストの小寺信良さん)
またMIAUは「悪質な違法ダウンロードを助長する団体」と見られてしまうこともある。津田さんは「しょうがないと思う」と苦笑。小寺さんは「不買運動などで“殴り合い”をする時代ではない。例えばiTunes PlusのDRMフリー配信を利用したり、ニコニコ動画のMADがきっかけでPerfumeのCDが3000枚売れたっといったように、(著作権を保護しないことによる権利者へのメリットが分かる)事例を紹介していく必要も、方法論としてあるだろう」と話す。
今後は、MIAUの各メンバーが知り合いの国会議員などに話をするなどロビー活動を行い、国会での法改正阻止に向けて動いていく。「レコード輸入権の時は閣議決定があってから民主党が反対を始めたので結局、無理だったが、今回はまだ時間がある」(池田さん)
小倉さんはロビー活動の計画についてブログで公表しているが「年内は難しく、年明けに接触できそう」という状況という。「国会議員にアクセスある人はぜひ、訴えていってほしい」(小倉さん)
ただ、現在の国会は著作権法とはまるで関係ない問題で紛糾しており「予算案以外の法案は提出するな、と各省庁に言われているとも聞く」(津田さん)といい、そもそも法案の提出自体が行われない可能性もあるという。
●次は「ダビング10」でシンポジウム
MIAUは今後も、シンポジウムなどを積極的に開いていく計画。来年早々には中間法人を設立し、「実行力のある団体にしたい」(津田さん)
来年1月16日には、地上デジタル放送の「ダビング10」に関するシンポジウムも、都内で開く計画だ。
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