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2016年9月13日火曜日

クリス・コールマン ─── 教会音楽の名ドラマー (oka01-kqstwvgnfmemskwe)

以下は「クリス・コールマン」という黒人教会のゴスペルドラマー(通称ゴスペルチョッパー)のドラム・クリニックのビデオだ。このビデオは非常に長いのだがとてもよいアドバイスが多く含んだとても良質なクリニックだ。今回は発言の内容を一部だけ書き起こしてみた。

クリス・コールマンとの出会い

僕は最近クリス・コールマンというドラマーの演奏をYouTubeで偶然見つけて以来虜になってしまい繰り返し聞いている。クリス・コールマンは素晴らしいドラマーだ。非常に若く2016年現在35歳。僕が好きな音楽ジャズでドラマーとして活動しているわけではないらしいがスイングも叩く。複雑なポリリズムの使い方やその迫力の凄まじさ・音の繊細さは名ドラマージャック・ディジョネットを彷彿させるところがある。

クリス・コールマンは決して著名なドラマーという訳ではないらしい。彼の名はウィキペディアにも載っていない。彼の名義でアルバムが出ている訳でもないようだ。彼は商業音楽としてはあまり知られた人ではない。彼はゴスペルミュージシャンだからだ。ゴスペルミュージシャンは各地の教会の礼拝を巡業するミュージシャンで、テレビやラジオでは全く有名でないけども、キリスト教が一般的な世界中の人から知られてる。

キリスト教があまり一般的でない日本ではほとんど知られていないが、現代のゴスペルは日本のいわゆる『ゴスペル音楽』の認識とは全く違う世界に変貌している。日本ではあまり知られていないクリス・コールマンだが、数度来日も果たしているようだ。

日本では彼の演奏を聞くチャンスはほとんどないようだ。だがYouTube上に彼があちこちで演奏した時の映像がアップロードされている。海外での一般的な評価も非常に高く彼の実力は広く認められている様で、彼が演奏したビデオはしばしば10万以上の表示数を記録している。



クリス・コールマンの人となり

2020年5月21日追記
クリス・コールマンについての正確なことは全くわからない。今改めて調べて見てもクリス・コールマンの公式な記事はほとんど見つからない。クリス・コールマンには公式サイトもない。ウィキペディアもない。ツイッターもブログもない。彼についての情報はほとんど全て無関係な観客がスマホで撮影したビデオをyoutubeにアップロードしたもののみだ。

彼がビデオで語っている内容などから総合して考えると、彼は恐らく1986年生まれだ。子供の頃から教会音楽を演奏していたらしい。インタビューによると彼は独学でドラムを学んだという。彼はツインペダルを使わずに目にも止まらない速度でバスドラムを扱うことで有名だが、それも彼は元々耳コピでドラムを覚えたのでロータム音とバスドラ音が聞き分けられずに間違えて覚えたのが始まりだった、と語っている。 彼は2003年世界的ゴスペルミュージシャンイスラエル・ホートンのサポートミュージシャンとして採用され、CD/DVD “Live From Another Level” を録音した。近年ではチャカ・カーンとツアーをするなど教会音楽外の世界でも活動している。参照(Hudson Music)


MIでのクリス・コールマンのクリニック

彼の話は含蓄が非常に深い。彼はしばしば世界各地でクリニックを開催しており、そのビデオがネット上で見られるようになっている。彼のかんで含めるような語り口はとても情感的にとても解りやすく、もし英語が苦手で彼が何を言ってるか理解できなくてもその姿を見てみればそこに何か学ぶことがある。実際にビデオを見てみて彼がどういう気持ちを込めてそれを言わんとしているのか実際に見たほうがよい。

クリス・コールマンのクリニックはどれも素晴らしいがこの MI で開催したクリニックは特に素晴らしい。その模様は次のビデオで見ることができる。


このビデオで彼は非常に良いことを沢山語っている。僕の気持ちからいうと出来ればこのビデオの1時間30分の内容を全て書き起こして日本語に訳したいほどなのだがそれはとても難しいことだ。このビデオでクリス・コールマンが語っていたことの中で僕が特に重要だと感じたところを抜粋して書いて書き起こしてみた。

クリス・コールマンの言葉

問題を『見る』ために数える


クリス・コールマン『数えることは大切』(その1)

引用 ─── Q:いつも不思議なんですが、どうやったら緊張しないでいられるのでしょうか。僕は演奏するとたまにすごく緊張して、元のリラックスした状態に戻るのが凄く難しいのです。曲の途中で難しい箇所が来たりする時なんか特になんですが…。これを解決するのに何かいい方法があったりしますか?

A:数を数えることですね!(会場笑う)いや冗談ではなく本当にそうなんですよ! 練習中に声を出して数えることです。よく「カウントして下さい!」とアドバイスすると、最初の小節くらい「ワーン・ツー」と数えて辞めちゃう人が多いのですが、そうじゃなくて練習中最低でも3時間は声をだして数え続けることが大切なんです。意味がわかりますか? 

何の為にやるのかというと鍛える為にやるんです。その問題に集中する能力を鍛えるんです・・・つまりもし彼女が「1234」と数えて、君がそのテンポで「1234」と数えたとすると、それは音楽の中でひとつの『大きな幸せ家族』みたいなものに変化するのです。ところがもし君になにか不幸があって息が止まろうとしている時、彼女が(大きく目を見開き顔をまじまじと見ながら)「1234」と元のテンポのまま何も変わらずに数えていたらどうでしょうか。

とにかく数えることですよ! 数えることが一番音楽にとって大切なことなのです。ブラシで演奏するときでも(スティックで)爆音で激しいビートを演奏するときも、数えることが一番たいせつなんです。 常に声を出して!数えることです! 無言のドラマーがいい演奏をした試しはないんですよ!  

誓っていうけどドラマーの問題の80%は数えていないことだよ。

───引用終わり

音楽を『見る』ために数える

クリス・コールマン『数えることは大切』(その2)
実際に実演で数えてみせるクリス・コールマン

引用 ─── Q:(前回の質問者と同じ人が)キックドラムを演奏するときにビーターが一度に三回連続で当たっているのですか?

A:いやーーー… (あまりテクニックにばかり集中するのは良くないと思うんです!)そこにこそバランスが必要だと思うんです(テクニックは重要だけど)もし僕がテクニックにばかり集中していたらどうでしょうか。あまりテクニックばかりに集中すると、音楽が見えなくなってしまいます。 もし音楽が(といいながらリズミカルにドラムを叩く)こういう風な演奏を求めていたとしても、僕がもし数えていなかったら(といいながらフットペダルを注視しながらリズムのないドラムを叩いてみせる)こうなってしまうではないですか。これでは誰も聞く人いないですよ!

数えているからこういう演奏が(といいながら数えながらドラムを叩いてみせる。会場拍手!)できるんですよ! 数えているから何を演奏するべきか見てくるのです。音楽はどうやって感じるかを教えてくれるけども、そのふたつをひとつにまとめて ─── つまり… 音楽に対する理解があって、数えている数字上の理解があって、そのふたつをひとつにまとめる技術を磨かなければいけないのです。

それは音楽に対する理解の上に成り立っているんです!

なぜならひとつのテクニックだけでは音楽は作れないからです。(といいながらバスドラムを連打して)「ねえみんな!ちょっと待ってください! いや僕は今日、ペダル持ってきてないんですが、ちょっと見てください!ちゃんとテクニックは正しく実行しているんですよ!おかしいなぁいい音楽にならない…。」とこういう人がいたら多分、ステージから降ろされてしまいますから。 ─── 引用終わり

心の目を開くために数える

クリス・コールマン『数えることは大切』(その3)
数えれば数えるほど素晴らしい演奏ができるようになるんだよ

引用 ─── Q:もし誰かが『ドラマーにとってこれだけは外せない練習方法をひとつだけ選んでくれ』と尋ねたらなんて答えますか?

A:『数える!』(会場「またか」と笑う)もうとにかく数えることの大切さをどうやって伝えたらいいのかわからないです。 実は僕は前、数えなかったんです。何年もの間こんな感じで(といいながら数えないでドラムを叩いてみせる、会場笑う。)数えることで心の目を開き、問題に焦点が合うようになるのです。そして自分が何を演奏しているのか聞こえるように見えるようになって、そしてそれが理解できるようになる… 数えれば数えるほど素晴らしい演奏ができるようになるのです。

だから「ひとつだけ選べ」と言われたら、もうとにかくドラムなんか放っておいて「数えること」ですよ。

だって(ものすごい勢いでキックドラムを連打する)「僕、こんなテクニカルなことができるんですよ」「で君、1拍目はどこ?」と聞かれて「えっ?! いや知らないです。」とかいうようでは仕方がないもの。「君! それは確かに素晴らしいテクニックの訓練だけど! でそれを曲のどこに入れるの?!」 「えっ?! いやよくわからないです。」

わかるでしょ? とにかく『数えること』! ─── 引用終わり


「カウントする重要性はいくら強調してもしすぎることはない」 ─── クリス・コールマンはこのクリニック中で3度もカウントする重要性を述べている。数える事の大切さについては次のページでより詳しく説明した。 

縦乗りを克服しようシリーズその9・数えれば数えるほどに巧くなる!ジャズ

スピードを落そう

ゆっくり時間をかけよう

(1:23:50〜) ある日はうまくいく。ある日はうまくいかない ─── ある日は成功したテクニックも、ある日は体調が悪くてうまくできない。そんな時は、お菓子を食べたり、映画を見に行ったりして、休もう。力強く何かにチャレンジしていると、何かのひょうしに間違った状態を引き起こしてしまうこともある。 そういうときは、スローダウンしよう。

「常にスピードよりも正確さを。」

さぁ、みなさんも、ご一緒に。

「常にスピードよりも正確さを。」

・・・ みなさん、更にもう一度ご一緒に。

「常にスピードよりも正確さを。」

フェラーリがどんなに速くても、ブレーキがなかったらどうする?

エンジンが強力であればあるほど、ブレーキも強力でなければいけない。

スピードが速ければ速いほど、コントロールが重要になる。

スピードが速くてもコントロールがなければ、音楽にならない。

それと同じ。

何かうまくいかなかったら、スローダウンしよう。

他人の夢を大切にしよう

ゆっくり時間をかけよう

(1:33:30〜) 他人の人生や夢に対して、出来る限りポシティブな言動を心がけよう。 もし他人の人生や夢に対してネガティブな言動を取れば、それは3倍になって自分に返ってくる  ─── とにかく、気をつけろよ。

人をどう扱うかに注意したほうがいい。人生は、最終的には人との関わりあいだから。

ボキャブラリー

クリス・コールマンは日本語の情報がほとんどない。そればかりか英語で調べてもほとんど情報がない。クリス・コールマンについての情報はビデオ中でクリス・コールマンが語っている内容から察する以外にない。クリス・コールマンはウィットに富んだ語り口が特徴でなかなか早口だ。日本人にはとても理解が難しいものがある。以下で彼の喋る英語を理解する手助けになる情報を紹介したい。

縦乗りを克服しよう

何故英語が聞き取れないのか。何故英語は早口に聞こえるのか。特に黒人の方々の喋りが聞き取れないのは何故か。これについて日本人は200年以上悩んでいる。未だかつて誰もその原因を突き止めた人はいない。何故日本人は英語が聞き取れないのか ─── それは日本語と英語のリズムが違うからだ。その理由を僕は 何故、日本人は縦乗りなのか で説明した。

縦乗りを理解することは演奏上のリズムを向上させるだけでなく、語学力を向上させる効果も持っていますので、是非この機会に縦乗りを克服しようシリーズを学んで見ては如何でしょうか。

以下でその他のボキャブラリを紹介する。

 (1:16:00〜)『トメイト・トマトー』

"tomato" トマトはイギリスでは『トマト』と発音するがアメリカでは『トメイラ・トメイタ』と発音する。ここから転じて『トメイラ・トメイタ』を同じものだが表面的な呼び名が違うだけという例えの表現として使われる様になった。 出展はジョージ・ガーシュインの Let's Call the Whole Thing Off 。 

参照 What does “To-may-to, to-mah-to” mean? - Stack Exchenge



ここでは「五十歩百歩」と同じ様な意味で使われている。

余談だが僕はバンコクの楽器屋さんでウクレレギターを弾いていたら知らない欧州の人に「これはユークレイリーか?」と聞かれた。咄嗟のことで何を言われてるのかわからず「わからない」と答えた。そのあとユークレイリーウクレレのことだと気付くまでに30分くらいかかった。 この様に音はしばしばアイに入れ替わる。イーに入れ替わる。これも英語の訛りの一種だ。

スラーピー

slurpee=海外セブンイレブンの名物商品。

セブンイレブンは日本発祥のコンビニエンスストアで、世界中にある。だが、何故か海外では有名なのに、本家である日本だけで発売されていない名物商品がいくつかある。スラーピーがそれ。クリス・コールマンのこのトークないで、何故かよくネタとして出てくる。

サワーパッチ



英米で有名なグミキャンディー。相当酸っぱいらしい。

コリタイデス

Colitis 複数形 colitides = 大腸炎 ・・・ このトークのなかで、クリス・コールマンがかつてかかって大変だったと言及している病気。 クローン病という難病と似ている病気で、クローン病が小腸で起こることに対して、コリタイデスは大腸で起こるという。

ワイアナ・トゥーイアナ・スリーイアナ

日本語で拍数を16分音符つきで数える時「いっとー・にーとー・さんとー・しーとー」と数えるが、英語では、「ワン・イー・アンド・アー」「トゥー・イー・アンド・アー」と数えるのが一般的らしい。文字上では 1 e & a 2 e & a 3 e & a 4 e & a とアルファベットで書き表すのが一般的。

タプレット

tuplets 連符
triplets 三連符
quintuplet 五連符


関連記事:



変更履歴:
タイトルを『怪物ドラマー=クリス・コールマン』から『クリス・コールマン ─── 教会音楽の名ドラマー 』へ変更した。(Mon, 05 Mar 2018 16:53:40 +0900)
書き起こしへのリンクを追加した。ヘッダレベルを修正した。(Thu, 21 May 2020 01:55:31 +0900)

著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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