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2007年5月5日土曜日

泰日差 (isaan05-c987254-200705050035)

おかあつがミクシコミュニティータイ東北イサーン語研究会として著した記事を紹介します。
泰日差 (おかあつ)
2007年05月05日 00:35
近年、タイでのビジネスやタイ旅行等などが盛んになるにつれ、イサーン(というかタイ)の人と付き合う機会というのは、とても増えてきているのではないかと思います。

文化的にも農耕民族同士で非常に付き合いやすく、歴史的な関係も非常に良好ですし、すっかり近代化してしまい農耕民族の気持ちを懐かしんでいる日本人と、これから正に近代化しようとしているタイと、というお互いに無い部分を補完しあうような、とても良い関係であるように思います。 こうして、一緒に仕事をしたりする機会はもとより、より仲良くなって恋人同士になったり、さらには結婚されたりするかたも多いのではないでしょうか。

ところが、実際に深く付き合うようになると、全く理解できない不合理な行動に面食らう事は少なくありません。 一見良好に見えた関係だったのに、実は裏でとんでもない裏切り行為をしていたり、というのは典型的なパターンではないかと思います。

日本人男性がタイ人女性と結婚すると、何故ここまで、財布の紐を握りたがるのか、日本人男性は理解に苦しむ、というのも超よくあるパターンではないかと思います。 日本人女性がタイ人男性と結婚すれば、何でああやって誰にでも優しくするのか、というのも典型パターンです。

もっとも、日本人がイサーン人(タイ人)に対して思う事がたくさんあるのと、同じ数だけ、イサーン人(タイ人)も不可解に思っています。 何で日本人は、何でこうやたらに厳密で厳しいのか。 何で、ちょっとの失敗でもすぐ激怒するのか。 何で人前でやたらと怒鳴り散らすのか。 タイ人の多くは、日本人のこういう行動をまったく理解できません。

僕は、こうやってイサーン語勉強会とかを開いているくせに、イサーン語はほとんど話せないのですが、とはいえ、こうしてイサーンで一年ちょっと生活してきたなかで、そういう疑問に少しずつですが、答えを見つけてきました。



その多くは、気候まつわる習慣に関連しているように感じています。 また、以前もちょっと言及しましたが、タイの家系は女系なのだという事は、抜きには語れないと思います。

日本では旦那が女房に色々指図されているさまを「尻に敷かれる」と表現することがありますが、これは正に「男性が女性をコントロールすべきである」という暗黙の了解があるからこそ「やっこさん、尻にしかれてやがる、情けねぇなぁ」というような発言につながるのではないでしょうか。

日本では「旦那は一家の大黒柱」であり「旦那が家の跡継ぎ」である、ということが暗黙の了解として成立しているからこそ、こういう発言につながるわけです。 しかし、実は、タイではこれが、正反対真逆なのです。 タイでは女性が一家の主だからです。

日本とタイは非常に似ているのですが、似ている中の最も根本的なものが真逆なので厄介なのです。 お互いにどちらも、自分が普通だと思っており、話題にすら上りません。 お互い その違いを知らずに、それを大前提に話を進めているので、話が深まるにつれ徐々おかしくなってきます。

タイでは、基本的には、女性が全ての責任を負っており、両親の面倒も女性が優先してみるのだそうです。 そして、日本人的としては極めて意外なことなのですが、末っ子の娘が相続権を持つのだそうです。 これは、日本の真逆と言えます。 そして、男性は結婚したら女性の家に入り、その家の女性を男性が助けます。 男性も働きますが、あくまでも女性を助けるためであって、基本的には女性が男性を養うという事なのだそうです。

※ 現実的にはかなり個人差/地域差/世代差/家庭差があるようです。 色々な人に聞くと人によって色々な答えが返ってきます。しかしながら、基本は女性が跡取りになるという点は大筋外していないように見えます。

タイ人女性が、やたらと財布の紐に固執するのは、そういう文化の暗黙の了解があるからみたいです。 日本人の様な金銭管理感覚は、タイ人にとっては、何で結婚しているのに一切お金に触らせないのか、まるで他人のようでは無いか、ということであり、人に話せば「だまされてるんじゃないの?」的な印象を与え、タイの社会の中で恥ずかしい事として成立するようです。


日本人男性がタイ人女性と結婚したら、その女性には、実は、別にタイ人の恋人が居て、日本人が仕送りしたお金で恋人を養っていたという話はしょっちゅう聞きます。 日本人の家庭観では、当然、まったく許されない行為に思えます。 ... ですが、タイのこういう風習の話を聞くと、あながち、ありえない話でも無いように思われます。(そう感じるのは管理人だけかもしれませんが。) タイでは、日本と逆で女性が男性を養うものだからです。


僕は「だからタイ人ってバカなんだ」とか「だからタイ人って適当だ」と切り捨ててしまうのは、ちょっとあまり好みでないのです 。 個人的には、風習・習慣には、常に、それなりのその気候風土にあった合理性がある、と考えるようにしています。




そういえば、前、インドから来た人が「日本人は何故断る時『とてもいいですね。またにします。』って言うのか。」と苦笑していたのを思い出します。 何でそんな曖昧な言い方をするのか。これじゃ断っているのか断っていないのかわからない、というのです。僕は「それは、全然曖昧じゃないよ。日本人ならそれがはっきり断っている言葉だという事を知っているよ」と言ってあげたのですが、相当驚いていました。

タイにもこれと同じ様なことがあります。 タイの言い方はもっと更に遠まわしです。 遠まわしでも明らかに何かの意図が込められていることがあります。



僕は人ごみで曲がり角を曲がる時、後ろの人とぶつからないように必ず後ろを見てから曲がるのですが、タイでこれをやると、必ずと言っていいほど後ろの人と目が合います。 日本ではまず目が合うことはありません。

どうも、タイの人は歩く時、相手を見て相手がどう出るか見届けてから動くようです。 だから、こちらが、後ろを確認すると、向こうもこちらの動きを見ているために目が合うようです。 日本人、中国人は、韓国人には、こういう習慣がないようで、こういうことをしてもほとんど目が合うことはありません。 (日本人にはかつてこういう習慣があったようですが...今はどうでしょうか。)

タイ人は、歩き方に限らず、例えば、高圧な物言いをする人がいると、タイの人は、無理に張り合わずに、まずその人の出方を見ています。 その人の流れにあった話し方をして、その人の話は全部うんうんとうなずきながら聞きます。 これは、外人がタイ人に話をしているときなど、話をしている人にとっては、合意を得られたかの様な錯覚を起こすのですが、これは完全に間違いで、実は全く合意は得られていないのです。 こういう話をしているときに話した約束が守られる事は100%ありません。

これは、タイ人がいい加減だということではなくて、「ハイサバイチャイコーン」=「取り敢えず気持ちをすっきりさせるのが先」という大原則があるからです。 つまり、むかついていたら、後先考えずにワーッと言ってスッキリしてしまって構わないということです。 聞く人は優しく聞いてくれて、話したことを後から蒸し返したりする事は、100%ありません。

これは、ある意味、精神衛生上、とても良い習慣だと思います。 ですが、タイの人は、意見を聞こうとしない人には全く何も言ってくれない、ということでもあり、これが日本人的に仕事をするときに大きな問題になることが多いように思います。 何か問題があるとき、面と向かって言ってもほとんど取り合ってくれないからです。

これは、西洋人にとってかなり辛く厳しい習慣であるようですが、実は日本人はこういうのが得意なのではないかと思います。 つまり、タイ人とスムーズに作業をしたいならば、昔の日本のように、あちこちに根回しをすればいいからです。



日本人は日本人の事を「NOといわない日本人」とか自虐的に語られる事も多いですが、タイ人と比べると、ずっと物事を荒立てる事に前向きではないかと僕は思います。 「ちゃぶ台返し」という言葉がありますが、問題があんまりにもひどいときは、怒り猛りちゃぶ台をひっくり返してでも、それを相手に伝える、それが愛なんだ的な風習が日本にはないでしょうか。 「とうちゃん、オレ、間違ってた!」「わかってくれればいいんだ(T-T)」的な風習です。

これは、日本人的にはピンと来ないものがあるのですが、タイ人と比べるとその意味が浮き彫りになってきます。 ちゃぶ台返しは、タイ人の目には「全く無意味な恥ずべき行動」「人としてあるまじき行為」として写るようです。

日本人として、気をつけるべき点の一つではないでしょうか。



とかく日本人は「タイ人はいい加減で」と決め付けたきり、それ以上何も考えない事が多い様な気がします。

例えば、タイ人にはタイ人のものの頼み方という物があるようです。 実際「何故約束を守らないんだ!」と怒る人にタイ人は冷たいけど「ね~~ぇそんな冷たいコトいわないで、頼むよ~、つれないなぁ~ ... も~この間助けてあげたじゃ~ん」 という人には簡単にメロメロになったりします。 往々にして、日本人っぽいデジタルなモノの頼み方は、ウラメに出ることが多い様な気がします。



不定期になってしまうと思うのですが、そんな、泰日差について、気が付いたことがあれば、また書いていきたいなと思います。
コメント一覧
[1]   おかあつ   2007年05月05日 00:37
ちょっと書き換えました。(2007/5/5 00:35)
[2]   gop   2007年05月06日 15:45
確かにタイなど東南アジアは母系家族ですね。
だから男どもは甘やかされ、働かない(笑。

タイ在住実務者は、その辺の感覚を理解して
いないと辛いでしょうねぇ…事務所も工場も。

勉強になりました。さすが勉強会!
[4]   Pattako   2007年05月06日 16:26
うちのボスは中華系タイ人。
っていうか生粋の中華系なんで起こるときは
怒鳴り声を上げ、ガタガタ大きな音を立てます。

しかしあいにくうちの部署は外国人従業員多し。
負けじと大きな音を立てたり、げらげら笑ったり、まさに
修羅場のような現場。

いつもタイ人の秘書が涙目で隠れてみています…
[5]   おかあつ   2007年05月07日 20:49
gopさん、はじめまして! (^-^)

>だから男どもは甘やかされ、働かない(笑。
... そなんですよね(^-^;


でも、そうやって男が自由な分、日本の男性より女性に優しくする気持ちのゆとりがあるような気がします。 責任感が強いけど優しくない日本の男性とどちらがいいかと聞かれると、微妙なところです。
(^-^;

ぱたこ様
>怒鳴り声を上げ、ガタガタ大きな音を立てます。
(^-^;;

>いつもタイ人の秘書が涙目で隠れてみています…
(^-^;;;

中華系っていつもそうなんですよね。 いつもギャーギャーうるさくて、客だろうが誰だろうが食って掛かる勢いの中華系タイ人、僕も大嫌いでした。 僕はタイに来て短い数ヶ月の間に中華系と何度も言い合いになりました。


でも、彼ら、ギャーギャーうるさいけど、とにかく、最後まで責任を果たすところは、絶対、エライ。 イサーン系は、そういうことは「ハイサバイチャイコーン※」なので、ほったらかしです。

※『取り敢えず気持ちをスッキリさせるのが先』という意味の『マイペンライ』に次ぐ有名な言葉

それも、「まぁまたやればいっか」の世界だったら気持ちを優先してオッケーなんですが、取り返しがつかないことで「まいっか」で済まされると、結構外人として辛いものがあります。

(ところで、僕は、タイの原発計画、マジで大反対です。 ... あ!ヤベ!漏れちゃった! ... 『ハイサバイチャイコーン』じゃ、すまないです。)

そういうのもとてもいいのですが、仕事では、中華系の人は、精神がズタズタボロボロになっても、どんなに人に嫌われても、最後までやりきる責任感があるので、エラいと僕は最近思います。
[6]   gop   2007年05月08日 13:34
>>日本の男性より女性に優しくする気持ち
なるほど、確かに。そりゃ微妙ですなぁ。

私もタイパブ・タイスナ・タイカラ等では
非常にジェントルな心構えで婦女子たちに
接するよう日夜努めていますが、どうやら
彼女たちの透視力は素晴らしく優れていて
こちらの懐中能力が慢性的に疲労しきって
いるのを即座に察知し、隣の席の見知らぬ
オヤジに笑顔を向けられてしまう毎日です。

ハイサバイチャイコーンじゃねぇじゃんか!
「優しさ」と「財力」の二者一択は答えを
聞くまでもありません。バンコク共通です。
 
出展 2007年05月05日 00:35 『泰日差』

著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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