Kはかつて、エリート街道を突っ走る青年だった。東北地方の、とある進学学校に通い、成績は常に上から10番目以内だった。Kにとって、学年テストで高得点を取ることはさほど難しいこととは感ぜられなかった。自分が簡単に出来る事を泣きそうな顔になりながら必死になってやっている同級生を見ると、胸くそが悪かった。何故こんな簡単なことが出来ないのだろうか。そんな簡単なことに自分の生死がかかっている様に必死になっている彼らの姿を見ると、世の中の全てのことが阿呆らしく見えてくるのだった。こんな簡単なことをやるだけで、世間のトップに立てる。世間とは何と下らないことなのだろうか。Kにとって、全てが面白くなかった。そんなKがT大に合格した事にK自身は驚かなかった一方、周囲は大騒ぎだった。 Kの元に満面の笑みと共に祝福のメッセージを送る親戚が、Kの目には間抜けに見えた。