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2018年3月18日日曜日

裏拍が先か表拍が先か=2341リズムの構造 ─── 縦乗りを克服しようシリーズその3 (oka01-tiicptzkhfropdcn)

今日いつものようにセブンイレブンで買い物していたら、BGMでものすごい縦乗りのヒューマン・ネーチャー(80年代のマイケル・ジャクソンの曲)が流れていました。あまりに縦乗りがすごかったので、家に帰って譜面に起こしてみました。 こんな感じでした。

前半4小節がオリジナルの横乗りバージョン、後半4小節が縦乗りバージョンになっています。

ヒューマンネーチャーは元々のメロディーの中に横乗りのリズムが織り込まれています。つまり縦乗りに変えて演奏することはとても難しい筈です。果たしてこの横乗りのリズムをどう間違えたらこの様な激しい縦乗りのリズムとして勘違いすることができるというのでしょうか ─── 以下でどう間違えたことからこんな縦乗りになってしまったのかを、少し考えてみました。

横乗りを目指す縦乗りの人々が持つ認知の壁

音楽を演奏するにあたって縦乗りであること自体は何も問題ではありません。 もし自分が持っているリズム感覚が縦乗りならば縦乗りのよさを生かした音楽を作ればよいからです。しかしもしここで敢えて横乗りリズムに基づいた音楽を作りたいと考えたとするととても大きな問題が起こります。

何故ならば、まず第一に日本人が先天的に横乗りのリズムを備えていることは絶対にないからです。もちろん誰でも練習することで横乗りリズム感覚を身につけることはできます。しかし横乗りのリズム感覚を持った人が縦乗りの人と一緒に音楽を演奏すると、しばしば演奏上でとても大きな問題が起こります。つまり練習して横乗りが上達すればするほど大きな問題が起こるというとても解決が難しい問題と直面することになります。

横乗りのリズムの人は、伴奏で縦乗りのリズムを演奏されるととても演奏しづらく、ほとんどの場合で演奏を続けること自体が不可能になって演奏が止まってしまうことも稀ではありません。もちろん逆もまた然りです。縦乗りの人は伴奏で横乗りのリズムを演奏されるとリズムが転んでしまいほとんどの場合で演奏を続けること自体が不可能になって演奏が止まってしまいます。

遊びのセッションであれば演奏が止まってしまっても笑って済まされることも多いかもしれません。しかし大きなセッションや大きなライブハウスでリズムが転んでしまうと、例えそこにどんなに自分の力だけでは解決できない技術的な難しさがあったとしても、それを知らない聴衆から容赦のない批判を浴びせられてしまうものです。

大勢の前で演奏が止まってしまうような恥ずかしい失態をしてしまえば、シーンの人々から『技量が足りない未熟者』という烙印を押されてしまい、演奏を破綻させる迷惑者という汚名を着せられてしまいますし、敬遠されてしまうでしょうし、演奏活動から外されてしまい、営業演奏の仕事を回してもらえなくなっていまいます ─── つまり、干されてしまいます。 

つまり横乗りリズムを練習すればするほど、日本社会で音楽活動する上で看過し難い難しい問題が起こるようになります。そして横乗りリズムが上達すればするほど、横乗りリズムは共演者の感情的なもつれを引き起こし、恒常的にその感情問題が人間関係トラブルに発展する様になります。

『ならば横乗りの人どうしで集まってバンドを作ればいいではないか。』 … そう思われる方も多いかも知れません ─── しかしその方法は永遠に実現不可能なのです。何故ならば日本のミュージシャンは全員 ─── そうです … 一流と呼ばれるようなプロミュージシャンも例外なく全員です ───  この強いリズム認識の偏り=縦乗りを持っているからです。

現代日本では横乗りリズムを身につけた日本人が少数派なことは元より、その存在に気付いてそれを練習しようとしている人もほぼ皆無と言ってよい程にとても少数派です。日本社会で生活する上で横乗りのリズム感覚を持っている人が2人以上集まることは事実上ほぼ不可能なのです。

つまり日本で横乗りリズムの音楽で演奏活動しようとすると頑張って練習して横乗りリズムを身につけることだけではなく、それ以上に縦乗りの人たちとどの様に折り合いをつけていくのかを考えなければいけないという状況になってしまいす ─── 日本人は、横乗りを目指した途端に最初からとても難しい社会問題と直面することになります。

横乗りを目指す日本人として次に考えられる善後策は、共演者にどんな強烈な縦乗りリズムを演奏する人がいても惑わされず、何が起こっても自分の横乗りリズムが崩れない様にバランスを取って維持するというやや特殊な技能を身につけることかも知れません。それと同時に、激しく混乱してバランスを崩してしまう縦乗りリズムの人たちを演奏しながら見えない様に誘導して支えるという非常に難しい能力も必要になるでしょう。

つまり横乗りリズムを志す人が縦乗りに惑わされないためには、まず縦乗りをよく知る必要があるのではないでしょうか  ───  そういう結論をここでは出してみました。  

では縦乗りリズムの特徴を以下で見ていくことにしましょう。

横乗りリズムとは裏拍をたくさん弾くことではない

橋幸夫「子連れ狼」

このビデオは橋幸夫の名曲「子連れ狼」です ─── 味わいのある語りと哀愁の漂う歌詞がとても魅力的な名曲です。

日本に古くからある伝統的なリズムに1960年代以降の近代的な作曲手法を混ぜたモダンな構成になっていることが、哀しみの中にどことなく洗練された響きが伴っていることに気付きます ─── この曲はよく聴くとそれまでの演歌にはない16分音符が多用されていることにも気付きます。それが聴く人に新鮮さを感じさせている ─── 私はそう分析しました。

この音楽は色々なリズム要素が混合していますが、飽くまでもそれらは演歌の伝統に基づいて組み立てられ、飽くまでもハイカラな演歌としての理想を目指していることがわかります。

それが演歌と結論付けられる根拠ははっきりしています。

それは、メロディーのリズムを組み立てるときの裏拍と表拍の順番の並べ方にあります。

表拍と裏拍とは

縦乗りと横乗りの違いの説明に入る前に、まずそもそも表拍と裏拍とは何かを見てみたいと思います。表拍/裏拍の定義は人によって違います。この本では以下の様に取り決めさせて頂きました。

まず次のように4分音符が1小節に4つあったとします。

位置 1拍目 2拍目 3拍目 4拍目
4分音符

このとき、音符を2個ずつのグループに分けて先に現れる方を表拍、後に現れる方を裏拍と考えます。

位置 1拍目 2拍目 3拍目 4拍目
4分音符
表裏

以下同じようにして表拍と裏拍を2分音符、8分音符、16分音符でも決めさせて頂きました。次は2分音符です。

位置 1拍目 2拍目
2分音符
表裏

次は8分音符です。

位置
8分音符
表裏

次は16分音符です。

位置 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
16分音符
表裏

 

横乗りリズムの裏拍は表拍の前にくる

前章では最初に現れるほうが表拍でそしてその後に現れる拍が裏拍と御説明致しました。 しかし実はこの説明は正しくない説明だったことをお詫びせねばなりません。何故なら横乗りリズムの世界では最初に現れる方が裏拍でその後に現れる拍が表拍だと考えているからです。

横乗りのリズムの裏拍は表拍よりも前にあります ─── 否、裏拍が先で表拍がむしろその後なのです。このことが横乗りを理解する上で一番大切なところです。そしてここが正にコロンブスの卵のように目の前にあるとても簡単なことなのに、しかし誰も気付かなかったことでもあるのではないでしょうか。

先程、裏拍と表拍の説明を致しました。

位置 1拍目 2拍目 3拍目 4拍目
4分音符
表裏

同じことを横乗りの世界では次の様に考えます。

位置 4拍目 1拍目 2拍目 3拍目
4分音符
表裏

裏拍が先で表拍はその後にある ─── なるほど…理屈はわかりました。 しかし問題は、日本人が裏拍が先になることを感覚的に認知することができないことです。  ─── たったこれだけの簡単なことが感覚的に認知できないなどということがあるはずがないではないか! ─── 貴方はそう仰るかも知れません。

お約束します  ─── 貴方は決してこれに気付く事はありません  ─── もちろん私もです。何故認識出来ないのか、そしてどうやったら認識できる様になるのかを以下で順を追ってお話していきたいと思います。

縦乗りリズムの裏拍は表拍の後にくる

何故横乗りを認識できないのか

日本人が日本語で歌う古くからある民謡/音頭/演歌では手拍子がとても大きな役割を果たします。その手拍子のことを手もみ/手すりなどと呼びます。

三隅治雄著・原日本・沖縄の民俗と芸能史 「こねり・なより」
手拍子の打ち方~リズム感を良くする練習

このように日本人が古来からもっているリズムは2拍に1回…つまり1拍と3拍で手を叩き、その手拍子を基準にしてその基準に対して後に合いの手を入れる(しばしばそこで同時に手を擦ったり、こねたり、8の時を描いたりする)ことでリズムを分割して音楽の脈動を作り出してくという習慣があります ─── これが縦乗りのリズムの基礎になります。横乗りのリズムはこれと全く違う考え方でリズムを構築します。

横乗りリズムでも同じ様に2拍に1回だけ手を叩きます ─── しかし縦乗りと大きく違うところは縦乗りが1拍3拍で手を叩くところが、横乗りでは4拍2拍で手を叩きこの手拍子を基準にしてその基準に対して後に合いの手を入れるところです。この違いがそれ以降の音符の組み立てに大きな影響を与え、音楽全体が全く違う世界に変わってしまいます。

縦乗りリズムの正体は日本語の発音です。正しく日本語の発音を行う為には正しい縦乗りのリズムを身につけている必要があります。日本語には発音の頭にアクセントを置いて合わせるという世界的に見てもとても珍しい特徴があります。

縦乗りは日本語の世界だけで考えればひとつの完結した理論体系です。しかしこれを外国語の文脈から見ると全く違った要素が現れます。つまり日本語を話す日本人は必ず縦乗りというリズム認識の偏りを持っています ─── つまり縦乗りの日本人は外国の方々の誰もが認識している時間分割の概念(リズム)が認識できません。

つまり日本人には認識できない世界があります ─── 逆に言えば外国の人は日本人の認識が理解できません。 どちらが優れていると比較できるものではありませんが、この2つの間には乗り越える事が難しい大きな壁があります。

問題はこの壁をどの様にしたら乗り越えられるかです ─── 縦乗りの人が横乗りを演奏する為にはどうすればいいのでしょうか。

横乗りには縦乗りにはない複雑さがあります。 横乗りの複雑さに気付き、横乗りの複雑さをよく理解することが必要になります。その横乗りの縦乗りにはない複雑さとは次のようなものです。

縦乗りリズムでは必ず頭にアクセントを置きその先頭のアクセント基準に他の拍との距離を認識する ─── そういう習慣があります。しかし横乗りリズムではアクセントが置かれる場所は先頭だけではありません。横乗りリズムがアクセントを置く場所には規則が存在します。この規則を図式化すると、あたかも複数階層の織りなす数学的規則が作り出す模様の様に見えます。この様に横乗りでは縦乗りでは起こりえない複雑な問題が起こります。

次の章で、横乗りの複雑さについてもうすこし詳しく見てみたいと思います。

横乗りの裏拍には複数の階層がある

何故横乗りは理解が難しいのか

前章では横乗りでは4分音符の裏拍がその表拍よりも先に演奏されるということを見てきました。この横乗りの裏拍が先に演奏される習慣は4分音符以外の拍でも行われます。例えば2分音符で見てみます。

位置 2拍目 1拍目
2分音符
表裏

この様に2分音符も裏拍が先に演奏され、表拍がその後ろに演奏されます。同じことは8分音符16分音符でも起こります。次で2分音符4分音符8分音符16分音符の裏拍が先になった様子を見てみます。

横乗り ─── 裏拍が前になる場合の音符の一覧表

位置 2拍目 1拍目
2分音符
表裏

位置 4拍目 1拍目 2拍目 3拍目
4分音符
表裏

位置 8拍目 1拍目 2拍目 3拍目 4拍目 5拍目 6拍目 7拍目
8分音符
表裏

位置 16 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
16分音符
表裏

縦乗り ─── 裏拍が後ろになる場合の音符の一覧表

 縦乗りの表裏順番と比較してみましょう。

位置 1拍目 2拍目
2分音符
表裏

位置 1拍目 2拍目 3拍目 4拍目
4分音符
表裏

位置
8分音符
表裏

位置 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
16分音符
表裏

 

2種類の音符の裏拍が同時に前に来るリズム/尻合わせと頭合わせへの序章

前章で、4分音符で4拍目2拍目が1拍3拍目よりも先に現れる事、そして2分音符の2拍目が1拍目よりも先に現れることの2つを見ました。 ─── この2つはしばしば同時に起こります。これはどういうことでしょうか。

4分音符の裏拍は次のように前に現れます。

位置 4拍目 1拍目 2拍目 3拍目
4分音符
表裏

そして2分音符の裏拍も先に現れます。

位置 2拍目 1拍目
2分音符
表裏

この2分音符の裏拍が前につくことと、4分音符の裏拍が前につくこと ─── この2つが同時に起こるとどういうことは、どういうことでしょうか。順を追って見ていきましょう。

まずこの裏拍4拍2拍が先に来る4分音符の上で2分音符はどの位置にあるでしょうか。

4分音符 4拍目 1拍目 2拍目 3拍目
4分音符
表裏
2分音符 1拍目 2拍目
2分音符
表裏

この様に4分音符で見た時に裏拍が表拍よりも前についていると考えると、2分音符で見るとそれは4分音符1個前にずれた2分音符の様になります。

そして、その2分音符は表拍が先で裏拍が先に現れる順番になっていることがわかります。

この2分音符の順番は縦乗り(表拍が先)と同じ法則です。つまり恐らくですが、横乗りで演奏する時はこの順番で演奏することは出来ません。そこで試しに2分音符も横乗りに変えてみたいと思います。

4分音符 2拍目 3拍目 4拍目 1拍目
4分音符
表裏
2分音符 2拍目 1拍目
2分音符
表裏

4分音符の順番がほぼ一周入れ替わった状態になりました。これが横乗りリズムの世界の4分音符の順番です。私はこのリズムの事を2341リズムと呼んでいます。

これまで1から始まっていたリズムが、1で終わるリズムになった事がわかります。つまり裏拍が前に付くというルール変更が生じた影響でこれまで1から始まって4で終わると認識していた4分音符の順番が2から始まって1で終わるという順番で認識するように変化したことがわかります。 

この1で終わるリズムのことを「尻合わせリズム」と私は呼んでいます。これに対して1で始まるリズムのことを「頭合わせリズム」と私は呼んでいます。

この様にすると2分音符4分音符だけでなく、全音符/2全音符を含む考えうる全ての音符でこの現象が起こります。次で8分音符を加えてみましょう。

2分音符 2拍目 1拍目
2分音符
表裏
4分音符 2拍目 3拍目 4拍目 1拍目
4分音符
表裏
8分音符 2拍目 3拍目 4拍目 5拍目 6拍目 7拍目 8拍目 1拍目
8分音符
表裏

12345678 という順番で現れていた 8分音符も 23456781 と1で終わる様に変わったことがわかります。

この様に拍の順番が常に尻合わせで構成されるリズムが横乗りリズムです。

ややこしいですが、なんとか理解して頂けましたでしょうか…。もしかすると理解すること自体はそんなに難しくなかったかも知れません。この縦乗りと横乗りの間に横たわる本当の問題は、私達日本人の様に日本語を母国語として子供の頃から日本語のリズムに慣れ親しんできた人々にとって、この横乗りのリズムを感覚的に認識する事がとても難しいという点にあります。

横乗りになれなかった縦乗り

横乗り音楽なら横乗りリズムで演奏すれば良いですし、また縦乗りの音楽なら縦乗りのリズムで演奏すれば良いでしょう。しかしこれが混ざってしまうと、とても気持ち悪いものです。

それはひょっとしたら横乗りの音楽を演奏する縦乗りの人には感じられないものかも知れません。しかし縦乗りで演奏する横乗りの音楽は、確実に横乗りの人々の眉をしかめさせてしまいます。

これは逆もまた然りです。日本語が話せない横乗りの方が縦乗りの純日本音楽を横乗りで演奏するととても強い違和感があります。そういう間違った縦乗り音楽は、恐らくですがアジアの発展途上国に行くと沢山見つかります。ちょっとした差異がネイティブスピーカーにはとても強い違和感となって耳に残るものだからです。 ─── 私達縦乗りの日本人が安易な覚悟で横乗り音楽を演奏したとき、私達も同じ違和感を横乗りの方々に与えていたりしないでしょうか。

縦乗り訛りについて

横乗りで演奏する為には全ての種類の音符で裏拍が前に来ている必要があります。全ての種類の音符とは全音符/2分音符/4分音符/8分音符/16分音符・・・その他の全ての種類の音符です。この音符の種類のことを以降で「音符の階層」と呼ぶことがあります。

問題は縦乗りの人が裏拍を先行したリズムを演奏しようとした時、この全ての音符の階層で裏拍が前に出ている状態を維持することがとても難しいことです。全ての階層の裏拍が先に来ている認識を維持しつづけることができず、無意識の内に表拍が先に認識に戻ってしまいます。 これが縦乗り訛りです。 

「横乗りにならねばならない」と意識して8分音符の裏拍を強調しているのに、どことなく縦乗り感が強くなってしまい、どうやっても抜け出せなくなってしまったとしたら、それはもしかしたら縦乗り訛りになっているのかも知れません。

8分音符で手を叩いていても気がつくと1拍目3拍目で強く手を打ってしまう … どんな近代的なポップスやフュージョン・ジャズ・R&Bを聞いても気が付かないうちに1拍子3拍子で手を叩いてしまう… そしてどことなく収まりの悪い表拍に違和感を感じていても、それが何故なのか解らず考えあぐねている…という様な状態になってしまうことがあります。

何故横乗りになれないのか

前述のヒューマン・ネーチャーは何故縦乗りになってしまったのでしょうか。この音楽に、メロディーが背景として持っているリズムパターンを追加してリズム変化をわかりやすくしてみました。


前半が横乗りで後半が縦乗りになってします。横乗りでは1拍目の表拍を打った直後から全て16分音符の裏拍を演奏しています。そして4分音符の裏拍が表拍よりも前にあることから、16分音符の裏拍が結果的に次の拍のコードを先取りする形となっています。これが横乗りの前進感/スピード感/新鮮な驚きなどと表現される様な感覚を生み出す原動力になっています。

もし4分音符4拍目で1拍目の音を先取りして弾く ─── 音が先取りされることで聴者の予想よりも実際の音は早く出現し、それが音楽にスピード感を与える原動力となります。 しかしここで4分音符の裏拍が気付かぬ間に後ろに来てしまうと全体で1拍遅れた様に響き、音楽はそのスピード感を失ってしまいます。

同じことは8分音符/16分音符にも言えます。演奏中(編曲中)の気付かぬ内に裏拍が先に来る感覚が失われてしまい、 気が付かない内に横乗りが縦乗りに戻ってしまう ─── つまり縦乗り訛りになってしまう原因となります。

後半を見てみましょう。16分音符について裏拍が先に来る感覚を意識してい演奏していることがわかりますが、4分布と8分音符について裏拍が後に来ていることがわかりませんでしょうか。

横乗りになる練習

次のビデオは、横乗りで裏拍が先に来ることを把握しやすくことを目的として単純な縦乗りでよくあるメロディーを、そのままずらすことで横乗りに変換したものです。この手法の事を私は縦横変換と呼んでいます。

このビデオでは【4分音符裏拍=後/8分音符裏拍=後】【4分音符裏拍=後/8分音符裏拍=先】 【4分音符裏拍=先/8分音符裏拍=先】の順番で演奏しています。



オフビートカウントへの誘い

ジャズを演奏するにあたって、横乗りの人同士で横乗りを維持することはとても簡単なことです。しかしバンド内に縦乗りの人が複数いる時に独りで横乗りのリズムを維持することは、自分自身が独りで横乗りになることよりもずっと難しいことです。

4分音符裏拍が先行する横乗りリズムと4分音符裏拍が後行する縦乗りリズムを同時に弾くと、結果として4拍目で2つの異なるコードが同時に鳴ることになり、ここで気持ち悪い不協和音が鳴ってしまいます。

横乗りの人はここで注意する必要があります。ここで不協和音が聴こえると(日本語がネイティブの)人はしばしばその不快感から無意識の内にリズムを縦乗りに切り替えてしまうからです。すると結果としてバンドのアンサンブルが気が付かないうちに縦乗りに戻ってしまうでしょう。

しかしここで横乗りのまま演奏し続けると、その不自然な不協和音が演奏者に与える強い違和感がもとで演奏を間違えてしまい、リズムが転んでしまったり、フレーズが止まってしまったりしてしまうでしょう。

非常に精神的に辛いことですが、ここで縦乗りに合わせてしまうとむしろ余計に不自然になってしまいます。今、演奏しようとしている音楽は横乗り音楽のジャズです。ここで不協和音が聞こえてもひるまずに、更に前に進む必要があります。 

私はこの音楽を演奏する上で裏拍が先/表拍が先という感覚の違いをよりはっきりと意識する為のメソッドとしてオフビートカウント・リズムトレーニングというメソッドを開発致しました。

私が懇意にしているミュージシャンの方々に実際にオフビートカウント実践して頂いたところ、驚くほどに力強くグルーヴする様になった彼らを見て私自身も驚きました ─── オフビートカウントはとても大きな効果をもたらすことが徐々に明らかになって参りました。

このオフビートカウントは当書籍=縦乗りを克服しようシリーズで詳細に御紹介させて頂いております。もし宜しければ皆様もこのオフビートカウント・リズムトレーニングをに興味を持って実践して下さるようなことがありましたら私としましてもこれ以上ない喜びです。

 

関連記事:65536

更新履歴:

スマホ対策の為、静的に関連記事を追加した。 (Fri, 02 Nov 2018 16:44:53 +0900)

タイトルを『縦乗りをよく知る・縦乗りと裏縦乗り』から『日本語のリズムからの脱却・裏縦乗りとは何か』に変更した (Tue, 08 Jan 2019 03:54:32 +0900)

縦乗りを克服しようシリーズのタイトル全面見直しを行った。(Tue, 08 Jan 2019 06:20:28 +0900)

表題を『日本語のリズムからの脱却・裏縦乗りとは何か』から『裏拍だけ演奏しても縦乗りになってしまうのは何故か』に変更した。(Thu, 12 May 2022 21:33:34 +0900)

大幅に加筆訂正を行いました(1)。加筆は未完です。(Thu,12 May 2022 22:48:52 +0900)

大幅に加筆訂正を行いました(2)。加筆は未完です。(Thu, 12 May 2022 23:40:55 +0900)

大幅に加筆訂正を行いました(3)。加筆は未完です。(Sat, 14 May 2022 19:40:01 +0900)

大幅に加筆訂正を行いました(4)。加筆は未完です。(Sat, 14 May 2022 20:50:41 +0900)

大幅に加筆訂正を行いました(5)。加筆は未完です。(Sat, 14 May 2022 23:38:26 +0900)

大幅に加筆訂正を行いました(6)。加筆は未完です。(Sun, 15 May 2022 02:35:19 +0900)

加筆訂正を終了します。[つづく]表記を削除しました。 (Sun, 15 May 2022 04:41:55 +0900)

表題を『裏拍を強調しても縦乗りになってしまうのは何故か』から『裏拍が先か表拍が先か』に変更しました。(Sun, 15 May 2022 04:47:32 +0900)

最終章『オフビートカウントへの誘い』を追加しました。(Sun, 15 May 2022 05:00:16 +0900)

タイトルを『裏拍が先か表拍が先か』から『裏拍が先か表拍が先か=2341リズムの構造』に変更しました。 (Sat, 04 Nov 2023 18:16:31 +0900)

著者オカアツシについて


小学生の頃からプログラミングが趣味。都内でジャズギタリストからプログラマに転身。プログラマをやめて、ラオス国境周辺で語学武者修行。12年に渡る辺境での放浪生活から生還し、都内でジャズギタリストとしてリベンジ中 ─── そういう僕が気付いた『言語と音楽』の不思議な関係についてご紹介します。

特技は、即興演奏・作曲家・エッセイスト・言語研究者・コンピュータープログラマ・話せる言語・ラオ語・タイ語(東北イサーン方言)・中国語・英語/使えるシステム/PostgreSQL 15 / React.js / Node.js 等々




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